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キレルは考えていた。今なら逃げられるのではと。というより逃げた方がいいだろう。愛する者を失った痔士と権力を持った変態、そして唯一の部外者キレル。罪を擦り付けられる展開が待っていそうだからだ。だが言霊はジセキと違って技名を叫べばいいというものでもない。感謝の気持ちを以て丁寧に言わなければ力は借りれないのだ。
「大丈夫か。護衛B」
「はいジナオール様……私の肛門括約筋はこの程度では朽ち果てません……」
護衛Bは息を乱しながらもゆっくりと立ち上がる。それも仕方ない、ディバイン・プロラプスを相殺したのではなく、ジルベルトの身体が先に限界を迎えたからの結果だ。ジルベルトがイボ痔の巫女のように強力な力を宿していたら死んでいたのはジナオール側の方だ。
「……妖艶なる痔の」
首に刃が突き付けられる。
「逃げる気か貴様。ジルベルトが命を賭して守りたかった者が何か、考えろ」
「愛人ですよね」
「死者を冒涜する気かぁッ!」
「してません」
ジルベルトが死んでから彼女の頭のネジがさらに飛んでしまっている。
「ジーナ、剣を下ろせ」
ジナオールが諭すように言った。
「……かしこまりました」
ジーナは大人しく武器を下ろす。
「おいそこのパンツ一丁男」
「はい。悪口が緩和されたようでありがたく存じます」
「貴様を逮捕する」
「は?」
どうやらキレルは監獄送りになるようです。
「ちょちょちょ訳分からんのですよ!? ジルベルトが死んだのって自業自得ですよね!?」
「なんだと貴様」
「黙れジーナ。あぁ確かにそうだ」
「護衛が死んだのはジルベルトのせいですよね」
「あぁそうだ」
ジナオールは現状をちゃんと理解し罪を擦り付ける気は無いように見える。
「なら」
「だが貴様はこの私ジナオールが命の危機に瀕していたというのに、言霊で守ろうとしなかっただろう?」
「いや訳分からん」
聞いた事のないルールだ。誰も知らないだろう。
「馬鹿な奴だ。言霊はジナオール伯が危険な場合には出し惜しみせず使うことと法律で定められているだろう」
「知らねぇよ」
キレルは監獄送りとなった。
「ふざけるなッ!」
牢屋の柵を掴んで絶叫するキレル。中はトイレすらない簡素な空間。お腹を壊したら死ねということだろうか。
「なんで街に来て変人に囲まれたと思ったら捕まるんだよッ!」
キレルは過去を思い返してみても自分は理不尽に飲み込まれた被害者としか思えない。
「おい誰か返事しろ! 責任者出せ!」
「おい黙れキレル。痔に響く」
「すみませんでも俺はこじゃねぇなんでお前いんだよイボンッ!」
知ってる人間がいた。イボンだ。
イボンはフリーのハンターの一人で、イボ痔のキングと称される男だ。強力な言霊を使用できるのに加え、ジセキにも選ばれたまさにイボ痔キング。巨大な体格で単純な圧力も規格外。言霊のみしかもレパートリーの限られたキレルとはレベルが遥かに違う。
「俺はパートナーのジーザスを殺したイボジーザマーンを探していたんだが、地図に書いてあった街へ来たら捕まった」
「俺と似た展開」
「お前もイボジーザマーンを?」
「俺はキレジーザマーン」
「あぁ対を成す存在の方か。そんな二人が一緒にお繩とは笑っちまうな」
「笑えねぇよ。俺が言霊使うよりも先に意識飛ばされたんだから」
捕まってもなお余裕の態度を崩さぬイボンには失笑を禁じ得なかった。だが納得いく部分もある。
「ま、お前が捕まるぐらいの強敵なら納得だな」
「いや? 俺はハニートラップにひっかかっただけ」
「ジーザスに謝れッ!」
キレルはイボンをぶん殴った。