胡蝶しのぶはキスが好きだ。触れるだけのものも、舌を絡めるものも、どちらも好きだ。ただの唇同士の接触でなぜあんなにも胸がときめいて、高鳴って、腹の奥が疼くのかが胡蝶しのぶは分からずじまいであった。
胡蝶しのぶはよくキスをねだる。行為中はもちろん、そういう雰囲気になった時や彼を揶揄う時、行ってきますのキスにおかえりな さいのキスも。突き出された唇に彼の唇を重ねる。ちゅっと軽いリップ音がなりそれを数回繰り返す。彼__義勇もキスは好きだ。それは相手がしのぶだからであって、彼女とであれば何時間でもキスをしたい。なので彼女の方から「キスがしたい」と言われれば厭わずに彼は唇を重ねる。____なんら問題は無い。
♡♡♡♡
そう、あれはたしか……まだ蒸すような夏の暑さが残っていたときの頃。
義勇が突としてしのぶに言った。
「俺はしばらく、お前とはキスをしない」
少し眉間に皺を寄せてしのぶの方を真っ直ぐ見つめる彼。素人目でも怒っているのだと分かるような表情にしのぶは困惑……はせず、いつもの言葉足らずだと理解した。
「また言葉が足りていませんよ。理由を仰ってください」
義勇はムスッとした顔で言葉を発する。
「……口内炎ができたからだ……」
「あらあら」
義勇が舌を見せる。確かにポツンと赤く腫れているものがあった。
そんな大きい訳でもなく、ドジっ子の彼のことだからきっと舌を噛んだに違いない。と予想し薬箱から口内炎用の錠剤を取り出した。
「その程度なら1週間くらいで 治りますよ」
水と薬を手渡す。彼は薬を見て苦い顔をした。
大の大人のくせして玉の薬が飲めないとは。しのぶはため息を吐く。
「ほーら、さっさと飲んでください」
治るものも治りませんよ、と付け加えると彼は渋々といった様子で薬を飲み始めた。
たったの数日間、キスが出来ないだけでなんだと言うのか。ただの唇の皮膚接触ごとき。
この時の胡蝶しのぶは、キスができないことを軽く捉えていた。己がこの後、苦しめられるとも知らずに。
と不穏なことを言いつつもキスが禁止されてから2日が経った。義勇は口内炎が内頬に当たるのか時々痛そうな顔をしていた。薬を飲んでいてもそんな早く治るわけではないのだ。
しのぶに関してはキスが日課になっていたことに驚かされていた。昨日、行ってきますやおかえりなさいのキスを無意識のうちにねだっていたらしく義勇の大きな手で顔を覆われたのだった。キスしなければならないというルールを決めたわけではないのにいつもそうしていたから自然と目を瞑りキスを受け入れる体勢をとってしまう。やはり慣れというのは恐ろしい。
キス禁止から3日が経った。すこし唇に寂しさを感じてきた頃合い。今日は大学があったので義勇に車で送ってもらった。いつものように「ん」と目を瞑りキスを待つしのぶに義勇はため息をつく。それにハッと顔を真っ赤にしたしのぶが慌てて謝罪をしてそそくさと車を降りていった。彼女が行ってからも義勇はしばらく動けなかった。まだ3日。口内炎はまだ腫れている。つやつやとした、柔らかな唇。触れればひとたび幸せな気分になるそれは義勇にとっての癒しの1つであった。触れたい。キスしたい。かぶりつきたい。そんな欲求を生まれてはすぐにかき消す。彼女がキス顔を晒すたび、義勇はムクムクと欲望が湧き上がるのを感じていた。
キスを禁止しただけで、性行為自体はしても大丈夫だが……絶対キスをしてしまう自信がある。確信をもって言えよう。口内炎なんかできなければと思うも元はと言えば己が舌を噛んでしまったからで……。彼はもうひとつ、息を吐いた。
少し飛んで6日目。しのぶは彼の舌の状態を確認していた。医師免許は無いが医師とさほど変わらぬ頭を持っているので義勇は素直に彼女に診せる。
「うんうん。順調に治ってますね。あと2、3日ってとこでしょうか」
腫れが引き、赤みだけがすこし残っている。義勇は珍しく微笑んだ。
「そうか」
ほんわかとした、嬉しそうな声音にしのぶも心が弾む。あと少しの辛抱だ。
触れたくてたまらない。義勇もしのぶもすました顔をしてはいるが内心そう思っているのを察していた。瞳の奥に映っている身を焦がす情欲。義勇は抑えきれずしのぶのそこへと口付けた。
「んっ」
触れるだけなら、構わないだろう。治ってきている。さほど痛くもない。
しかし一度触れてしまえばもっともっとと欲張りになる。一度唇を離し彼女の驚き見開いた菫色と交差する。舌を入れたい、乱したい、しゃぶりつきたい。義勇の欲がどんどん溢れ出て息が荒くなっていく。
義勇の大きな手がしのぶの華奢な肩を掴んだ。止まるに止まれなかった、押さえ込んでいた欲を引き出してしまった。
再度顔を近づけると、しのぶの小さな手が義勇の口を覆った。ふに、と手のひらにかさついた唇があたる。
「めっ」
小さな子供を諭すような、柔らかな叱責。彼女も一度触れられたことで熱を帯び始めていたが理性を必死に働かせる。相手はまだ完全に治っていないのだ、悪化させるようなことをしのぶが許せるはずもない。
「む……」
彼も大人しくなり掴んでいた肩を離す。せめてもの抵抗で、口を覆う手のひらにキスをした。
義勇もしのぶも、3日後がとても遠く感じた。
数日後。
無事、義勇の口内炎は完治し舌も自由自在に動かせるようになった。朝一番に洗面台の鏡で確認し見事に赤みも引いていたのでしのぶに報告せねばと彼女が寝ている寝室に戻る。
「しのぶ、しのぶ」
朝の5時。朝に強い義勇とは違いしのぶは朝に激弱だった。彼女がいつも起きる時間は約2時間後の朝7時。到底今はまだ夢の中で義勇の問いかけにも寝息で反応している。
今日は大学もある。早い時間に起こすのはやめておこうと決断し、どうせ明日はどちらも休みなので今まで蓄積されていたキスは夜でもいいかと判断して彼は朝食を作ることにした。
夜のことを思うと義勇は気が気ではなかった。早く彼女を押し倒してその唇を奪いたい。全身くまなく舌で愛でたい。その度に彼女からは嬌声がこぼれて……。
「義勇さん、まだ朝ですよ」
完全に妄想の中にいた彼にしのぶが声をかける。よもや妄想が声に出ていたかと彼女を見ると、やや下の方に目線を向けていたのでそちらを見ると。
ズボンを押し上げ、テントを張っていた。声に出ずとも股間はそれ以上に物語っていたのだ。何を想像していたのか理解しているのか彼女の顔は赤い。
信号も赤から青になり、車を発進させる。
「……すまん。しのぶとやっとできると思ったら、止まらなくて」
「わ、私も、嬉しいですよ」
大学が見えてくる。このまま通り過ぎてホテルに直行したいが、そうはいかない。
登校中の人たちを通り過ぎ、駐車スペースに車を停めた。1番奥の端、周りに人はいない。
しのぶが義勇の袖を控えめに掴む。顔は伏せており義勇からはその表情は見えない、が真っ赤な耳は隠せていなかった。
今も、がっつきたいのを我慢しているのを、彼女は理解しているのだろうか。片手でハンドルを握っていなければシートを倒してその上に覆いかぶさっていたことだろう。
そんな可愛いことをしないでほしい。
「歯止めが効かなくなる 」
もうすでに股間は痛いぐらいだった。下着を取り除いてまろび出したい。そして彼女の中へねじ込みたい。ここが外だということも忘れてひたすらに彼女を求めたかった。酷く喉が渇いている。溢れてくる唾を飲み込んでも乾きは一向に潤せない。
「今はっ、口紅が剥がれちゃうのでダメですけど、夜はたくさんちゅうしてくれますか……?」
潤んだ眼がこちらを見る。期待の眼差し、綺麗なアメジスト。
「……唇が腫れるくらいに、な」
深い青の奥にある、炎のようなギラつきをしのぶは見つける。その言葉は比喩でもなくて。出来なかった分を取り返すように、彼は本心でそう告げている。動悸がはやくなる。己も期待しているのだとわかってしまう。
早く夜になれと、お互いに願った。
♡♡♡♡
「義勇さん、お風呂あがりました……」
「……うん。ベッドで待ってて」
ついに夜。待ちに待った夜だ。
どうせするのが分かっているのだから、脱ぐのも時間が惜しくて下着姿で寝室へ向かった。髪を乾かすのも最低限に、ベッドの上で彼を待つ。興奮で息が上がる。待ち遠しい、口が寂しい。しのぶはそんな気持ちを紛らわすようにごろんっと後ろに倒れる。しかしそんな簡単なことでは紛れるはずもなく。これから義勇とすることを想像しては込み上げる羞恥と期待でグルングルンと左右にのたうち回った。
この数日間で、己がどれだけキスが好きかを思い知らされたような気がした。いや、ひとつ訂正しよう。彼とのキスだから好きなのだ。
誰でも良い訳ではない。愛しい人だからこんなにも気持ちが良いのだ。
彼とのキスを思い出す度お腹の奥がきゅんっと疼く。体が火照って、そういう気分になる。
綺麗だけれど無愛想な表情とは違って、彼のキスは言葉よりも雄弁だった。とろけるほどあつくて、貪るように激しくて、でも優しくて、夢中になって、求めて、絡めて。
他の人のキスなんて知らないし、知ることもないけど彼のキスは上手いと思う。しのぶはいつだって彼のキスに腰を抜かしてしまう。今だってこうして早く早くと焦がれてしまうくらいには彼のキスが好きなのだ。
深く息を吸う。うるさく高鳴る心臓を落ち着かせたかった。
階段を駆け上がってくる音がする。彼が来た。
「……しのぶっ」
あんなに足音をたてていたのにドアを開ける音は静かだった。彼女はベッドの上で起き上がる。彼も下着一枚の姿だった、分かりやすく勃起している様子に興奮しているのは己だけではないと彼女は安堵する。
ゆっくりドアを閉める。カチャンと音がなって彼はベッドの方に近付いていく。しのぶは立ち上がろうとして大きな手がそれを制した。華奢な肩を軽く押しただけで彼女は倒れる。その上に重なりすぐさま唇を合わせた。埋められなかった時間を取り返すようなせっかちな動きだった。舌同士を絡めて吸って混ぜ合わせて。息継ぎする時間もなくしのぶは翻弄される。
苦しいのに、気持ちイイ。
酸素を求め口を離してもすぐにくっつけられ息継ぎが出来ない。
おまけに彼の舌が口内にまで潜り込んでくる。唾液を飲まされ飲まれて、上顎を撫でられ歯列をなぞって。舌の裏側まで舐められては内頬までも愛撫される。待ち望んでいたものを一気に与えられしのぶはピクピクと腰が跳ねる。それを数回繰り返し舌と唇を吸われて、一度顔が離れた。しのぶの息は絶え絶え。はっ、はっ、と浅い息しか出来ていない。彼女をこんなにしておいてそれでも義勇はまだ足りないという顔をする。長らくキスできなかった影響は思ったよりも大きかったらしい。
彼女の口端を犬のようにべろべろ舐めて、ちゅっちゅっと頬や顎、首筋などにキスの雨を降らせる。少し傷んだゴワゴワの髪の毛も相まって、彼はまるで大型犬。鎖骨や谷間にぢゅっと痕を付ける彼を見ていると笑みがこぼれる。
彼の澄んだ青と目が合った。高温度の青い炎をその瞳に灯しながらこちらを凝視されたしのぶはびくっと身体を強ばらせる。
「……随分、余裕があるみたいだな……?」
彼の目はまるで蛇のように鋭い、睨まれたしのぶは蛙か。そう錯覚してしまうほどの圧がありしのぶは抵抗どころか息が止まる。
彼の手がしのぶの肩をすべり二の腕に触れ、たどり着くは小さな手のひら。そっと指を絡ませる。反対側の手も同じように恋人繋ぎされ固く握られた。ゴツゴツと骨ばった手をしのぶも繋ぎ返す。
「__余裕なんて、ない……ずっと、待ってたんだもの」
夜目の効いたまなこで潤んだ深い色のすみれを見ている。切なげに揺れては、もっとと強請っているよう。
たまらなくかわいらしかった。彼はがっつくように唇を合わせる。舌を奥深くまでねじ込んでうねうねとお互いに絡ませた。舌の表面どうしをくっつけて、舌先で嬲って、扱いて、舐め合って。
深い深いクセになる大人のキスを堪能する。頭がボーッとし始める、段々とキスのことしか考えられなくなってくる、しのぶはだらしなく口を開けながらただ義勇の舌を受け入れている。
彼はこの顔が好きだ。このキスしか考えられないという顔が。普段の様子からは考えられないほど淫らで、キスだけで溶かされてしまう彼女の表情が稲妻のように背筋を駆け巡る。
「はっ……んぅっ、ぁあっ」
開いた口の隙間から漏れ出る息はあたたかく、甘く、官能的だ。
焦らされ焦がれて耐え忍んだ故の幸福感に2人は溺れていく。
口は離さずそのままに、繋いでいた手を緩め、彼の手は彼女の身体をまさぐりだす。
まだ乾いていない湿った肌は彼の手にぴたっと吸い付いた。
ああ、とうとう愛される。キスでさえトロトロに溶かされてしまっているのに、これ以上は理性も何もかもが壊れてしまう気がする。
しかし高ぶる期待は止められず彼女の腕は素直に彼の後頭部へと伸ばされた。
キスが深まる。抱きしめられて軽く歯が当たった。かちりと音が鳴った場所を舐められ、たまらず声を出す。
彼の手が背中にまわり、纏っていたブラを外す。それをやさしく取り除かれると脇腹を伝って横乳に触れまるで掬うかのように持ち上げられた。感度の高まった身体は簡単に反応し次の刺激を求めていた。
彼が口を離した。とろりと銀の糸を垂らしている。胸を愛撫しようと考えているにちがいない。その突起は刺激が欲しいとピンと張っているのだから。
「やぁっ、まだちゅうしてくださぃ……」
濡れている彼の髪を、遠慮がちに掴んでいる。彼の唾液か、はたまた己自身のか、唇は色目かしくてらてらと輝いており彼女の瞳は細められキスを強請る。
散々口内をいじくり回して余すことなくいただいたのに。 次はこの桃色の乳首もちゃんといじってやらないと可哀想だ、という考えは完全に作者側の意見である。義勇もまだ足りていないという顔をして彼女を見つめている。
お互いにキスが好きだ。相手は目の前の人物限定だが。強請られれば何時間でもキスをする。なんら問題はない。
月明かりに照らされ煌めく唇、髪、身体。いくら求めても満足感は得られず、物足りなさだけが蓄積されていく。一生をかけても満たされない。欲張りなのだろうか、傲慢なのだろうか。 求めても求めても、満たされない欲。義勇はしのぶを枯渇していた。
「ほんとに、いいのか」
彼は問い直す。昼間の誘い文句に乗っかっただけの言葉を覚えているわけがないと、思っていた。
「はれるまでちゅうしてくれるって、言ったじゃないですかぁっ」
おねがい、と舌足らずに言われてしまってはダメだった。
愛したい欲が次から次へとこぼれでる。
義勇はゆっくり、顔を近づけた。彼女の胸を指で刺激しながら唇を合わせる。ちゅっ、ちゅう、ちゅうと彼女の方から唇に吸い付いてくる。 時折甘い声を出しながら。
胸の頂きを弾いて、潰して、引っ張ってやるとピクピクと反応し背中を反ってこちらに胸を突き出してくる。こんなに簡単に快楽を拾ってしまうえっちな身体。チクイキするほど敏感な身体。そんなからだに仕立てたのは彼自身であり、彼は誇らしげであった。
しばらく胸をいじっていれば、汗で前髪が額に張り付いてしまった彼女のやわらかい手がふいに彼の手を掴んだ。力は弱弱しくかろうじて握っているのが分かる程度だった。
キスをしながら、彼女は何をしたいのだろうとなすがままに見守っていると、彼の手を引き導いた先は彼女のソコ。女陰である。下着は既にベトベトで役目を放棄しており、指で撫でるだけで細い橋をつくる。意味ありげに彼女が腰をくねらす。
「ん……はぁっ、ふぁ……!」
手のひらでそこを優しく撫でるだけで声をもらす。奥からさらに愛液が溢れ出しているのがわかる。陰核、もといクリトリスはぷっくりとその硬さを主張しており皮が剥けているのが下着越しでも伝わった。人差し指の先端で引っ掻くように触れると彼女の腰がビクビクと反応する。
それに比例して後頭部に回っていた腕も抱きしめる力が強くなっている。
蜜が出ているところを塞ぐように指で押す。下着に付着した液が滲み、シーツにシミをつくった。
すると彼女が唇を離し、脚が、彼の腿に絡みつく。ガクガクと震え全身を痙攣させた。
彼女の荒い呼吸が耳元で響く。目を閉じ、しのぶは脳天まで痺れるような悦に浸る。
余韻で脱力している彼女は気付かない、彼の手が下着に指をひっかけておりそれが既にベッドの上に放り投げられていることを。
ヌチュ__水分を含んだ音に、彼女の目が見開かれる。濡れたソコに義勇の大きく骨ばった手が覆う。ぴっちり閉じていた陰唇がぱくぱくと開閉を繰り返し彼のを待ちわびていた。
「ふぅ……ん……ッ」
「……欲しいか?」
ゆるい痺れがしのぶに与えられる。足先を丸め悦を受け流そうとしてもじくじくと彼女の身体の奥で積もって焦らされていくばかり。先程の甘イキでは満足できずにいた。
上下にこするだけだった手を止め、彼女の蜜で十分なほど濡らした2本の指で入口をなぞる。
彼女の息を飲む音が響く。ふるふると水膜を張った瞳が揺れた。
ヌプッ……中指と薬指が差し込まれていく。あたたかく優しく包み込まれる。
お腹側の壁を押すようにしながら進んでいく、ヌルヌル滑り侵入を妨げるものは何も無かった。
「アッ……ひぃ、あぁ……っ」
根元まで挿れ、一度留まる。キュウキュウと締まるナカを広げるように2本の指をバラバラに動かす。しのぶの声が上ずり、より一層高い音が出る。そんな愛らしい声を両手で口を塞ぎ抑えてしまった。ナカからお腹側の壁をトントンと刺激すれば、ひんッ、と可愛らしく啼くもののやはり少しくぐもってしまう。その手を退かしてやりたいがあいにく片方の手は胸を愛撫するのに使ってしまっていた。
為す術なし__ではない。
彼はしのぶの額に唇を落とす。その次に手の甲へ。そしてすみれ色の瞳をじっと見つめる。声が聞きたいから、と言ってもきっと手は退けてくれない。ならばキスがしたいから、ならどうだろう?
声も聞けて、吐息も間近で感じれて、キスも出来て。一石三鳥だ。
義勇の思惑など知る由もないしのぶは素直に手を退けてしまう。すかさず彼の唇が重なって、舌をめり込ませた。
「ふあぁッ……!はぁっ、んんぅ……っ」
キスをすると同時に2本の指を折り曲げる。お腹側にあるザラザラとした少しくぼんだところ、しのぶの弱いそこを上下に擦る。
指を引いて第二関節手前ぐらいを挿れたあたりにある性感帯。Gスポットと呼ばれる場所。個人差はあれどしのぶはここを責め立てるとすぐに絶頂してしまうほど好きなのだ。
水音が増す、しのぶの脚が引き攣って震え出す、背がしなって胸を突き出す。
しばらくぶりの激しい快楽にしのぶの頭は真っ白になっていく。プシュッ、と義勇の手のひらを何かが濡らす。一気にシーツにシミが広がるもそれは勢いを増していくばかり。
彼女の細い手がナカを刺激する彼の腕に軽く触れる。彼女にとってきっと抵抗なのだろうと察しはつくも力が弱すぎて抵抗になっていなかった。
絡め合っていた舌が動きを止める。途端にビクンッビクンッと跳ねる腰。締まりがキツくなる膣。
イきそうなのだと分かると彼は唇を離した。急に酸素を得たしのぶは開きっぱの口からよがり声が出るのを止められなかった。
「だめ……っ、イクッ、イッちゃぅ!アッ、あんっ……!やぁあああ〜〜〜ッ!」
手のひらに噴射される溢れ出る液を感じながら彼女が絶頂した。出るわけのない精液を搾り取ろうとナカがうねり締まる。淫猥な動きに彼の期待も最高潮に達する。
数度抜き差しし、潮の勢いが鎮まったころを見計らって抜く。
くたぁっと脱力する。爪先までも力が入らない。しのぶは脚を左右に大きく開きながら放心状態になる。快楽で頭がぼぅーっとしている。
「すまん、もう少し前戯したかったが我慢ならない。もう挿入れていいか? 」
切羽詰まったような真剣な顔をしてしのぶを見つめる義勇。返事をするよりも先に彼の亀頭が彼女の蜜壷に触れた。入口をかすめて、割れ目をなぞる。愛液をたっぷり絡ませてから、つぷりと先端を沈める。
そしてゆっくり、飲み込まれていく。ずっと待ち望んでいた快楽に熱い吐息がこぼれる。
シーツを掴んでいた彼女の手が控えめに彼の肩に手を置いた。それに気付いてちらと彼女を見ると口を一文字に結んでこちらを見つめ返してくる。眉を八の字に歪めて眉間にシワが寄っていた。
その期待に応え、彼は顔を近づける。左手は彼女の手を握って、もう片方の手は彼女の膝裏に差し込んで。唇が重なるのと彼の亀頭が子宮口に当たるのは同時だった。
彼の大きいソレが子宮を押し上げる。股を広げられ簡単に最奥を暴かれてしまった。
最初は痛いだけだったポルチオ。だのに今は、甘美な刺激だと身体が歓喜していた。
「んんッ……!ん、ふぅ、んぅっ」
彼の分厚い舌で口内を圧迫される。それを拙い動きと小さな舌で絡めとった。ヨダレがこぼれ頬を通る、それを気にも止めず彼はひたすら口内を蹂躙する。しのぶは目を瞑りひたすらに絶頂感をやり過ごすのに精一杯であった。ゆるやかなピストンだというのに力を抜いてしまったらすぐに果ててしまいそうなほどである。
ザラザラする舌はしのぶの口の中を見境なく舐め回す。まるで一匹の生き物のように思えてならない。
トントンっとリズムよくポルチオを刺激されしのぶの感度は高まっていく。勝手に脚が震えだし身体に力が入る。迫り来る絶頂感にしのぶは身構えた。____が、突如として彼の腰の動きが止まった。ちゅうっと唇を吸いつかれたあとゆっくり顔が離れていく。しのぶは待ち構えていた快楽を与えて貰えず潤んだ瞳で彼を見た。
汗が垂れ彼女の腹の上へと落ちる。獣のように荒い息をしていた。
「んんっ……ぎゆ、さ……」
彼女からしてみれば突然の寸止め。彼のイチモツをきゅんきゅんと締め上げる。それに彼が短い唸り声をあげ、ナカに入っているモノは抜かずに彼女の姿勢だけを変えさせた。
「アッ、ま、これっ」
彼女の腹に腕を差し込み、尻だけを持ち上げる。ゴリッと子宮が彼のソレで潰される。
さらに深い挿入に彼女の声音が変わった。
「はぁっ、ぅッ……、ふぅっ、寝バック、気持ちイイだろう?」
「これぇっ!や、きもひぃッ……!らめぇっ、へんになっちゃうぅっ」
彼女が嫌々と首を横に振る。もはや呂律もまともに回らなくなっている。腰を一振りするだけでGスポット、ポルチオを刺激できより強い快楽を引き出すことができる。
穿つたびに尻肉が揺れ、彼女の肩が跳ね、エロいよがり声が鼓膜を震わす。
視覚も聴覚も触覚も全てが興奮材料になる。
「ひゃああッ!らめ、イクッ……!!イッちゃううぅっ!」
思いきりシーツを掴む。パチュンッと最奥を穿つと共にナカが収縮する。その締まりに彼も思わず吐精しかけたがなんとか耐えた。
彼女は枕に顔を押し付け声を抑える。脳が弾けるような強い快感に身体中が歓喜している。
膣内が痙攣を繰り返し時折ガクッガクッと膝が震える。余韻が長かった、彼の汗が背に落ちる衝撃すら敏感に感じ取れた。
クチュリ……彼の手が腹から下へ移動する。薄く生え揃った恥毛の、またその下……結合部の少し上、赤く充血したぷっくり主張しているところ。
小さくも確かな硬さを持ったそこはちょんと軽く触れるだけでも彼女の理性を奪うのには十分すぎるほどであった。
「ふあぁぁぁッ……!!そこぉっ、さわっちゃだめぇ……ッ!! 」
彼女の腰が大きく跳ね上がる。外からもナカからも刺激され、その悦から逃げようとするが彼の手がそれを阻止する 。
ぱちゅッ!
「ああんッ、アッ、ひぎぃぃっ♡」
クリを責めながら、ナカも責める。あまりの乱暴な突きだが、痛さは微塵も感じない。あるのは次々と襲いかかる暴力的な激しい快楽。
絶頂したばかりのソコに容赦なく打ち付ける。何度も逃げようとして、その度戻されて、内臓を潰す勢いで奥まで刺激され、もう何が何だか分からなくなるほどしのぶの脳は義勇のおち×ち×で埋まってしまった。自分本位の動きなのに、どうしてこんなに気持ちがイイのか分からなかった。プシッ、プシッと尿道から再び潮を吹く。彼女の腿とシーツを汚した。
「射精る……!しのぶ、しのぶッ……!」
「わッ、わらしもッ、まらイグ……!!イグイグッ、イッ、ちゃぁっ……!ああ〜〜〜〜ッ!!!♡」
脳天まで突き抜けるような電撃。ちぎれすり減った理性の中、義勇はナマでシていたことを思い出しすんでのところでイチモツ を引き抜き彼女の背中に欲を吐き出した。
♡♡♡♡
「う……ぅん……」
唸るようなしゃがれた声が出る。薄く開かれた眼は明るくなった部屋を映す。
ヨダレが枕を濡らしている、どうやらうつ伏せで寝ていたらしかった。それに、なんだか、身体がベタついている。
下がってくるまぶたを擦り、しのぶはのそりと起き上がった。
「ふぇっ……」
自身が寝っ転がっていたところには透明なシミがあった。無色なのでおもらしではないとわかる。そして腹や背にかかっている白濁したそれ。これは紛れもなく精液だ。誰のって、隣で気持ちよさそうに寝ている男のものだろう。
そうだ、昨日の夜は彼と性行為をした。キスが出来なかった時間を取り戻そうとするように。思ったより燃え上がってしまって、あまりの悦に、しのぶは途中で気を失ってしまったんだった。寝バックに、正常位にその他もろもろ……。
あられもない声をあげたことを思い出してしのぶは顔を真っ赤に染める。
そう、昨日はいつもより興奮してしまって、声がたくさんでた。義勇さんが優しくしてくれないから。
と心の中で言い訳を述べる。
「ん……しのぶ……?」
「っ!?」
驚きで心臓が止まるかと思った。横にいるはずの人物がいなかったからか義勇は薄目を開け彼女の姿を探している。
しのぶは顔を覆う。べちゃべちゃのシーツが視界に入ってそれどころじゃない。
「……しのぶ」
彼は段々と思考が覚醒してくる。大きな手が彼女の腿の上に置かれた。
びくんっと反応して、指の隙間から彼の顔を見た。じっとこちらを見返してくる彼の眼には確かな熱があった。
それに驚き、しのぶは少し尻込みする。布団からひそかに覗く彼のソレは朝勃ちのせいもありギンギンである。
「しのぶ」
もう一度名を呼ばれ、返事する暇もなくベッドへと押し倒された。両の手は彼の片手で拘束されまじまじと真っ赤な顔をのぞき込まれる。
息が詰まる。鼻頭はくっついていて、まつ毛が触れそうな距離。
顔が近づく、鼻息があたる、しのぶは素直に目を閉じた。
「……あまり、かわいい反応をするな」
シたくなる、と唇は触れ合わず耳元でそう忠告を受けるだけだった。
心拍がはやくなる。キス、されるのかと思った。期待した。
彼の顔が離れていく。拘束も解かれ彼女は自由となった。が、待ってと声をかける。
彼の熱が移ったかのように、彼女の瞳にも情欲が灯されている。
彼の右手を手に取って、自身の頬へと触れさせた。あたたかく、温もりを感じる。
「キス……しない、の?」
カーテンから薄く差し込んだ陽の光に照らされる彼女の身体は、夜とは違う印象を受ける。
シてもいいのか、と彼の喉もかすれてしまっていたが彼女はこくんと頷く。恥ずかしげに目を伏せて、だけど時折期待している眼をこちらに寄越して。上目遣いで見つめられては断ることなど不可能。伏せている顔を上へ向かせ、柔らかさを確かめるがごとく唇を合わせた。そして彼も、彼女の上に覆いかぶさるようにベッドへと倒れる。
〜〜終わり〜〜
お久しぶりです!!私です!
今回はリクエストしてくださったキス責めを書いてみました!!かなり遅くなってしまったこと、大変申し訳ございません!!
キス大好きなしのぶさんが大好きです!!ちゅう〜ってすると簡単にとろけちゃうしのぶさん可愛いですよね〜!
そして最後、多分3回くらいヤッてると思います。
長くなってしまいましたが、次回も気長に待ってくださると嬉しいです〜!次はむいしのを出したいです…!!いつになるか分かりませんが……。
ここまで読んでくださりありがとうございます!また次のお話でお会いしましょう!
それでは!
コメント
7件
初コメ&フォロー失礼します💭 今回のもとっても最高でした🥹💞 「キスしないの?」って聞いてるしのぶちゃんがとても可愛いᐡ ɞ̴̶̷ ̫ ᴗ̤ ᐡ むいしのも楽しみにしてますね🙈
もう最っっ高です!ありがとうございます😭
最高すぎ...!窓から見たi((((((((