バレンタイン当日
俺は早速向こうからやってくる月を見つけた。
声をかけようとしたその時。
「あ、璃音くん!」
大量の女子に囲まれてしまった。チョコを貰い終わった頃にはもう月の姿は無かった。
そしてなんやかんやしているうちに部活の時間になってしまった。
「あ、璃音!月ちゃんにチョコ渡せた?」
「…は〜」
「え、まじ!?なんで?」
「さっきから囲まれっぱなしなんだよ。」
「うわ〜。このモテ男が!今なら行けるんじゃないの?」
「もちろんそのつもり。」
月が練習している部屋へ向かおうとすると、
「璃音先輩!」
「璃音君!」
嫌な予感…。
予感は的中。結局月に会えずに部活が終了してしまった。
バレンタインにチョコを貰いすぎて先生に紙袋まで貰う羽目になったのにも関わらずこんなにもとぼとぼ歩いている男子がいるだろうか。
「あ、いた!おい璃音!」
「なに」
俺はムッとしながら光琉の呼び掛けに応えた。
「何やってんだよ!さっさと走れ!」
「は!?ちょ、え!?」
突然光琉に背中を押された。
「ほらあれ!」
光琉が指さしたその先には、月と宇野が歩いていた。
「光琉、お前は親友だ!今度ステバ奢る!ありがとう!」
「約束な」
俺は月のもとへ走った。
Runa side
「璃音がこんなにかわいいウサギを買ったと思うとなんか笑えてくるね。」
「笑わないでよ。光琉とめっちゃ真剣に選んだ。」
「さらに面白い」
「なんでだよ」
あはは。と2人で笑う。
「ところで月さん?」
「何ですか璃音さん」
「さっきのチョコは本命?義理?」
ギクッ。さっきまでふざけ合っていた璃音は、私を真剣に見つめている。
「そ、そういう璃音こそ。」
私も見つめ返す。
「しょうがないなー。じゃあ月に問題!」
テーレンと璃音がクイズ番組風に言う。
「光琉とそのうさぎを買いに行った時、3色のうさぎがいました。それぞれの色によって意味が違います。」
まったく問題の意図が読めない。
「黄色があなたの幸せを願います」
「ん?」
「青があなたの夢が叶いますように」
「ほう?」
「さて、月にあげたピンクはどういう意味でしょう。」
璃音はずっとニコニコしている。
しばらく考えてみて、1つの答えが浮かんだがすぐにかき消した。
バレンタインは女子の告白の舞台だ。
そんなわけ…ね。
「こ、降参。わかんない。」
「正解は」
璃音が私の前に片膝を立ててひざまずく。
「あなたが好きです」
「…え?」
「音水月さん、あなたが好きです。俺と付き合ってください」
「うそ…」
「嘘じゃないよ。俺はずっと前から月が好きだった。一条に告白してるの見てる時とかもう地獄だったんだからね。」
「ごめん」
璃音に告白されるなんて夢みたいだ。本当は私が今日伝えるはずだったのに。
「で、返事は?」
璃音がゆっくり手を差し出す。
「…震えてる」
「うるさい。こう見えても緊張してるんだよ」
私はゆっくりと差し出された手を取った。
「よろしくお願いします」
璃音の顔がぱあっと明るくなったかと思うと、私の体が宙に浮いた。
「え!?ちょっと璃音!?」
「やったー!」
私はそのままぐるぐる回された。
「うわー!あはは!」
なんだかおかしくなってきてしまった。
しばらくすると、璃音は下ろしてくれた。
「じゃあ明日からはただの友達じゃなくて彼氏としてよろしくお願いします」
「うん、こちらこそよろしくお願いします」
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