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#ご本人様には関係ありません
柔太郎の思いを知ったあの日から数日ー
驚くほどに今までと何も変わらない日々が過ぎていった。
メンバー全員での仕事のときも、もちろんYJげーみんぐ。のときも、柔太郎は今までと同じように俺にだけ口が悪いし、目も合わないし。
ん?
なんで俺だけがこんなに悶々としてんの?
いや、まぁ、別にアピールしてほしいとかってわけじゃないのよ?
たださ、「俺のこと好きになってもらえるようにするから」とかなんとか言ってたくせにさ、何もしてこないからさ、俺だけが少し身構えちゃってるのがちょっと腑に落ちないだけっていうか。うん。
まぁ、そんなとこです。
いや、
どういうことだよ。
今日はメンバーとT〇S系列の冠番組の撮影。
企画としては「アオノオト超限界突破バージョン」
なんなんだよ。この企画。
なかなか成功せず、ミルミルくんが「マシュマロ大好きって意識~!」って言うから、
仁『マシュマロだいすき~!』
何の気なしにそう言った。
そしたら、
柔「いいよ~。かわいいよぉ」
って。
…何言っちゃってんのこいつ。
仁『…マシュマロ大好き♡吉田仁人です♡』
どうにか平然を装いつつ、その場を乗り切る。
…カメラの画角外でニヤニヤこっち見てるそこのお前、あとで問い詰めるからな。
無事に撮影も終わり、勇斗・太智・舜太は個人の仕事があるからと足早にマネージャーとともに控室から去って行き…
部屋に残ってんのは俺と、さっきの撮影中に俺のことを「かわいい」とか言ってニヤニヤしていたこいつ。
その無駄にいい顔を鼻の下伸ばしながらこっちを盗み見るんじゃないよ。
仁『…じゅう』
柔「なぁに、仁ちゃん」
仁『「なぁに?」じゃないわ。お前さぁ、普段俺に「かわいい」とか滅多に言わんのに、今日のあれ何?いつもは俺がぶりっ子したら「うわぁ…」ってガチで引いてるような感じだったじゃん」
俺がそう言うと、鼻の下をもとの位置に戻して、いつもの男前な顔をしながら俺に近づいてきて、
耳元で、
柔「…それはさ、好きだからに決まってるでしょ?」
……
っ⁉
まてまてまてまて。
「柔太郎くんのASMRの動画がほしい」とファンからの要望があるくらい、落ち着いているイケ甘ボイスで耳元に囁かないでもらっていいですかね⁉
俺がキャパオーバーになっているの見た柔太郎は、心底楽しそうに笑っていた。
柔「俺の気持ち知ってて、そんなこと聞いてくるから改めて好きって言ってほしいのかなぁって思ったんだけど、違った?笑」
ええ。違いますね。
そんなあざとい考えを俺ができると思ってるんですか。
仁『あのさぁ、俺、この前言ったよね?耐性がないからアピールはほどほどにしてほしいって。今日のアレとか急にこられるとびっくりするし…』
柔「ん~」
仁『…なに』
柔「俺からしたらあんなのはアピールにもなんないっつーーか、ただほんとのこと言っただけっつーか。
あと…」
先程と同じように俺の耳に顔を近づけようとする柔太郎から逃れようとしたのに、
こいつが俺の腰を掴んで自分のほうに引き寄せてしまったから逃げることができなかった。
柔「急じゃなかったらいいの…?じゃあ…今から口説くけどいい?」
俺の腰を掴んでいる手を少しだけ下のほうに移動しながら、俺の目を見てくる柔太郎。
その表情があまりに煽情的で、顔に、体に熱が集まっているのがわかる。
仁『じゅうっ、やだっ、はなして…』
これ以上密着されていると心臓がもたない。
そう思って女子よりもない握力と腕力でどうにか柔太郎を引きはがそうとする。
が。
こいつ!俺よりも細いくせして力ありすぎるだろっ!
全然びくともしないんですけど!
やだ!はなして!
これ以上は本当に無理!心臓もたん!
…
ちょっとまって。本当にはなしてくんない。
仁『は~な~し~て~!』
さっきまでのちょっと大人な雰囲気はどこへやら。
どうにか離れようとする俺と、なぜか全く離してくれない柔太郎との攻防がしばらく続き。
仁『ねぇ!はなしてよぉっ!』
あまりに必死な俺が面白かったのか、ヒーヒー笑いながら「あ~お腹痛い」と言いつつ俺の腰から手を離す。
仁『なんなんお前!はぁっ、あぁ、つかれた…』
肩で息をしている俺を相変わらず笑いながら見ているこいつ。
柔「だってめっちゃ必死だったから。かわいいなぁ~と思ってさ」
仁『だからっ!かわいいとかやめてよ…』
今まではほぼ勇斗にしか言われてこなかった「かわいい」という言葉。
たまに太智や舜太も言ってきてたけど。まぁ、あいつらのはからかい半分だったけどさ。
柔太郎からの「かわいい」は、勇斗の「ただ愛でているだけの゛かわいい”」とも太智や舜太の「からかい半分の゛かわいい”」とも違って、「好きだから゛かわいい”」なんだと思うと、どうにもむず痒くて。
勇斗からの「かわいい」よりは苦しくない。
そんな感じ。
勇斗からの「かわいい」は、勇斗への思いが募っていくたびに、嬉しくて苦しいものだったから。
柔「…仁ちゃん」
勇斗のことを思い出して無言になってしまっていたらしい俺の意識を引き戻したのは、少しだけ悲しそうに俺の名前を呼んだ柔太郎の声だった。
仁『…なに、じゅうたろう』
柔「俺さ、仁ちゃんが勇ちゃんのこと好きなのも全然いいと思ってる。これは本心。そんで、別に勇ちゃんのことを考えないでほしいとかも思ってない、これも本心」
仁『…うん』
柔「でも…仁ちゃんが俺といるときに勇ちゃんのことを思い出して、悲しそうな顔をするのは嫌。これも俺の本心。困らせるつもりはほんとにないんだけどさ、…俺は仁ちゃんには馬鹿みたいなことで楽しそうに笑っててほしい。…仁ちゃんが元気ないのは心配だし、いやだ」
俺を見る柔太郎は泣きそうに見えて、気付いたら自分よりわずかに上にある柔太郎の頭を撫でていた。
柔「…仁ちゃん、」
仁『あっ…ごめっ、いやだった?』
柔「んーん…優しいね、仁ちゃん。ありがと」
そう言いながら相変わらず泣きそうな表情で俺のことを見る柔太郎。
目の前のこいつは俺のことをこんだけ思ってくれているのに、
なんで俺はこんなときでも勇斗のことが頭をよぎるんだろう。
切なくて苦しい俺たちの恋心の行方は、今は誰も知る由もなかった。
コメント
4件
部活中もずっとこれを楽しみに待っていました。素晴らしかったです🥹💖👍🏻👍🏻

