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段に座ると、対岸にはさっきまで歩いていたヨーロッパ大陸がそびえている。ガラタ橋の架かる金角湾を挟んで、右にジェノバ人の塔や近代ビル群が見える。左にスルタンの宮殿、アヤソフィア、ブルーモスクの丸屋根、ミナレットが天を指す。城壁はそれら全てを取り囲んでいた。
大陸が終わった先は、マルマラ海が口をあけている。脇に目を向けると、旅人のサバイバルセットが太陽の光を反射してまぶしい。
「そういや、あのコンビニにある大学生が働いてたんだ。そいつ、他の時間に入ったほうがどれだけ楽かって、よく愚痴ってた。じゃあどうして夜中なんかに入るのかって聞くと、時給が高いからって。奴は確かに、昼よりいくらか高い時給を手にしていた。けれど、しまいに体壊して辞めてった。『店が夜にオープンしてんのが悪いんだ』って言い残して」
旅人はサバイバルセットを揺らした。
「僕はオープンしてて助かったけどね」
「そのあとどうなったか。大学生は病院に行った。診察結果は栄養失調だった。食費も削ってたらしい」と青年は言った。
旅人はコーヒー粉の層で重心が低いカップの扱いに苦慮している。右手、左手に持ち替えている。