テラーノベル
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冷たい地面の感触で、リンクは目を覚ました。
空は白く、雲の流れすら分からない。見上げた視界の端に、無機質な校舎がそびえていた。整いすぎた外壁、均一な窓。ハイラルのどの建築様式にも当てはまらない。
リンクはすぐに身を起こし、周囲を確認する。
幸い、所持品はすべてある。
マスターソード。
ハイリアの盾。
古代兵装・弓、獣神の弓。
シーカーストーン。
ゾナウギアは携帯鍋のみ。
「……」
記憶を辿る。
ハテノ村。女神像。貼り付いていた紙。
ゼルダがそれを見せた瞬間、光が溢れ――。
その時、腰のシーカーストーンが淡く点灯した。
《リンク! 反応がありました》
ゼルダの声ではなく、文字として表示される。
どうやら会話はチャット形式でのみ可能らしい。
《無事です。見知らぬ場所にいます》
『建物が見える。学校のようだ』
少し間を置いて、返信が届く。
《こちらで調べた限り、あなたは“別世界”に引き込まれています》
さらに説明が続く。
《原因は、あの紙にある可能性が高いです。 その世界に手がかりが存在するはず。慎重に行動してください》
リンクは立ち上がり、武装を外套の奥へと隠す。
この世界が敵対的かどうかは分からない。だが、少なくとも「剣と盾を持ったまま歩く」べき場所ではなさそうだった。
校門をくぐると、校舎の中から鐘の音が響く。
違和感はない。
空気は静かで、人の気配もある。
――だからこそ、リンクはまだ気づかない。
この学園では、すでに何人もの生徒が「いなかったこと」になっていることを。
アビー、ラナ、クレアを含めた生徒が、最初から存在しなかったかのように扱われていることを。
教師たちは、突然現れたリンクを転入生として自然に受け入れた。
「成績も問題ありません。優秀ですね」
その言葉とともに、リンクは教室へ案内される。
彼はまだ知らない。
この世界が、静かに壊れていることを。
そして――
ここに来た理由が、確かに“存在している”ことを。
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