しろニキ
オメガバース
しろせんせー→α
ニキ→β
ビッチング(Ω転換)
ニキくんがしろせんせーの家に居候していた時期
ニキ視点
相方にセフレを呼ぶから家を空けてくれないか、と言われぶらぶらと歩いて時間潰しをしていた。
ぼんやりと歩いていれば目の前にコンビニを見つけ、帰って相方と酒を飲むのも良いかもしれないと思いコンビニに入る。俺が好きな酒と相方が飲めそうな酒を数缶手に取り、カゴに入れていく。おつまみを買おうか迷っていれば聞き慣れた声が俺の名前を呼んだ。
「ニキ?」
「え?ボビー?」
俺が家を空けてからほんの数時間程度。そんなに早く終わるだろうか、と頭の片隅で考える。そんな考えはお見通しだと言わんばかりに相方は話を紡ぐ。
「セフレ帰ってもうたわ笑」
苦笑しながらサラッと俺に簡潔に話す彼にあっけらかんとする。
ついでにおつまみへと手を伸ばしカゴに入れてくる。思わず声が漏れた。俺は必死に悩んだというのに…
「酒飲むんやろ?ええやん」
怪訝な顔をしていれば、小声でブサ…笑なんて当たり前のように俺をディスってくる相方。僕が不細工なんて有り得ないから、とナルシスト気味に返せば失笑された。
その後も他愛もない話をしていればお互いに買いたい物が決まり、会計に行く。
会計を済ませれば、二人してコンビニを出て家に向かう。
二人で帰り道を歩いていれば、聞いてもいないセフレの話をされた。どうやらセフレとは言えど関係を切りたいと申し出たら逆上して家凸しに来たらしい。そら俺がいたら意味がわからないよな…成程とひとりでに納得した。
とはいえ、ボビーがセフレを切るなんて珍しいと思う。
好きな人でも出来たのかな?俺はボビーの恋愛事情をよく弄るから、最近はあんまり話してこなくなったのでよく分からない。
少しばかり意識を相方から逸らせば、段々と相方の家が見えてきた。久しぶりに歩き回ったからもうクタクタ…。早くふかふかのソファに座りたいものだ。
「ただいまーっ!」
「お前な…笑」
相方の家に着き、颯爽と我が物顔で入れば呆れたような、少し迷惑に感じているような顔をしている。だけど本当に嫌だと思っていない事くらい俺には分かる。その事実に少しニヤニヤしながらリビングに行き、フローリングされた冷たい床に座り、鼻歌を歌いながら酒を置いていく。
ひと言で言うなれば、気分上々。宅飲みほど良いもんはない。
最後の一缶をビニール袋から取り出したその瞬間グラりと視界が揺れ、手には力が入らず缶を落とした。
「ッニキ!!」
缶を落とした音に反応したのか、何なのか。そんなのはもうわからないが相方が俺の名前を呼んだ気がした。
身体は熱を帯び、汗が湧き出る。呼吸は荒々しくなり、何故だか性的欲求が刺激されている。目の前の彼もまた冷や汗をかき、何かを言っているが、ぼんやりとした頭は何も言葉を受け取らない。彼が何か手に持っていて、それを差し出してきているが、俺は身体に力が入らず手を伸ばそうとするのが限界だ。
「…すまんな」
彼は手に持っていたそれを水と共に口の中に含み俺の肩をがっしりと掴んだ。
触れられて身体は更に熱くなる。自分が自分でなくなりそうなそんな感覚。正直、恐ろしい。
「んぐッ、ッぁ…ん、ぅ」
彼が手にしていたそれは恐らく薬か何かだったのだろう。水と共に一つの塊が流れ込んでくる。
熱を帯びた身体は口移しと呼ばれるこの行為も肩を掴まれた感覚でさえも全て快楽に変換し、口からははしたなく水が垂れた。いつまで経っても離されない口付けは息苦しく、呼吸を求めようと喉を動かせば先程から口内にいた薬は喉を通った。
その動きを確認した後やっと彼は口から離れた。俺は肩で息をして、呼吸を整えようとする。だが、そんな事は叶わず呼吸は荒くなる一方だった。
彼が先程飲ませてくれた薬が早く効くことを願って、強く目を閉じて徐々に深い眠りの底に吸い込まれていった。
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しろせんせー視点
力の抜けた相棒がバタリと音を立てて意識を失った。このままでは体を痛めてしまうと思った俺は寝室にでも運ぼうと手を伸ばした…が、未だ拙い呼吸のままな相棒からはΩのフェロモンが撒き散らされており、このままだと俺の方が理性を飛ばしてしまいそうだと判断した。
ひとまず飲ませた薬が効くまでは少し待機しておこうと思い、リビングを抜け出した。
「…やっとやんな?」
片鱗に気づいていない訳では無かった。すれ違う度に濃くなっていく俺好みの匂い。俺が触れる時だけ反応するようになっていく身体。それもこれも全て俺が仕組んだのだが…。
いつぞやの恋慕は独占欲という形を帯び、そうしていつしか抑えきれない衝動に忠順になった。これもまた、俺だけが望んだ最高の展開だ。
そろそろ薬は効いただろうか。今は彼をΩにさせた喜びよりも優先すべき事がある。喜ぶのは彼を寝室に運んでからだ。と自分に言いつけて、リビングの戸を開く。
開けた途端に広がるのは、酷く充満した甘ったるい誘惑の香り。
彼の方へと足を進める。だが、長時間当てられ続けたらきっと理性を飛ばしてしまう。甘い匂いに自身の欲を掻き立たされながら、せっせと彼を寝室まで運んだ。
「ふぅ…」
ベッドで静かな鼻息を立てて眠る彼を見る。
正直、Ωのヒートに強く当てられたのは今までにない経験で気を抜けばαとしての本能が彼の項を噛んでしまいそうだった。Ωのセフレが家に忘れていった抑制剤をその場しのぎで彼に飲ませたものの効果はイマイチで、甘い甘いフェロモンが微弱に溢れ出し、本能を刺激する匂いが先程よりも確実に薄まってはいるが、完全に消えた訳では無い。彼が起きたら病院に連れて行こうと思う。
こんな事を言えばΩやβを下に見ているだなんて言われてしまいそうだが、βであった彼はαである俺のフェロモンになんて気づきやしない。しかも彼は今現在、俺の家に泊まりに来ている。それに、勝手に期間も延長して我が物顔で居候している事が何よりも都合が良かった。先程も言ったように彼は俺のフェロモンになんぞ気付かない。だからこそ、毎日のように会う彼にフェロモンを長く、段々と多く当て続ければビッチングが起こり得ると考えた。
何とも汚い計画だが、気まぐれな彼を俺の所に留めるには最適だと思った。
「ん……ぼびー…?」
ぱちくりと目を開け閉めし、ぼんやりとした瞳で俺を見てくる。寝起きで頭が回らないのにプラスして発情期に入っていれば話すことはままならないのやもしれない。目を細め、瞳孔は開きながらも蕩けた消炭色の瞳が俺を捉える。
「今から病院行かな」
めんどくさい、と返答されたがこちらからしたら何にせよ病院に行って貰わないと困るのだ。
「んー…ボビーがつれてって……」
未だ眠たげな彼は目を擦りながら、俺が全てしてくれることを条件に病院に行く許可をしてくれた。ただ抑制剤を飲んだとはいえ、発情期である以上得体の知れない人ばかりの病院に行くのは最悪の場合発情期が再び…なんて事も有り得なくは無いため、どうするのが正しいのか悩む。
兎にも角にも、病院には行かせないと埒が明かないので最低限支度を済ませ、彼を病院に連れていく。
病院に着いて検査が終わり、俺の想像していた最悪の事態にはならず一安心する。やはり彼はΩになっており、診断結果を聞いて驚いていた。発情期に起こして未だ自覚が無かった彼の疎さには呆れるが、驚くのは至極真っ当な反応だ。
その後、薬局に行き抑制剤を貰い大分気が緩んだのか、会計までの間俺の肩に頭を預けてきた。随分と可愛らしい様子だ。こんな些細な事で喜びを感じる俺もまた浅はかだと思う。なんて考えていれば彼の名前が呼ばれ会計を済ませる。
病院を出れば外は暗くなっており、案外長い時間かかったのだと知る。好きな人と過ごしていれば病院ですら早く時間が過ぎていってしまうものなのか、と改めて実感した。
「ボビーありがとね…」
普段感謝を言葉にしない彼からの発言に酷く驚く。目を見開いて固まっていれば、そんな驚かないでよと言わんばかりの怪訝な顔をされた。
数秒間何も考えず立ち止まっていたが、ハッと我に返って彼に追いつくべく一歩を踏み出す。そこからは他愛もない話をして家まで帰った。俺らは久々の病院という事もあり異様な疲れが溜まった。それは彼もなのか、二人してさっさと支度して寝た。
午前7時。どうも目が覚めてしまいリビングまで行けばニキがソファに座っていた。まだ午前中だと言うのに早起きだなんて珍しい。
「ボビー俺、一旦家に帰ろうと思う」
「…そやな。それが安牌だと思うわ」
そんな事を考えていれば、ソファに座る彼は家に帰るという提案をしてきた。正直、帰らす気なんてさらさらなかったが、あくまで俺はまだ彼の”相棒”である以上否定する義理はどこにも無いため彼の提案に乗った。どうやら運良く新幹線が取れたらしく、明日にはもう出ていくらしい、他のやつに取られてしまわないかという心のざわめきを抑えながら、彼の荷造りを和気藹々とした雰囲気で一日中手伝った。
✺
「ニキもう寝やんと」
「もうそんな時間?」
気がつけば夜になっていて、明日の新幹線に乗ることも考えたら早めに彼を寝かせるべきだと判断し、彼に伝える。
彼の方を見て伝えれば、なんだか体調が良くなさそうな彼と目が合った。大丈夫かと聞けば呂律の回らない状態で大丈夫だと返されたが、とても大丈夫そうには見えない。恐らく発情期関連なのだろうが、今俺が刺激をして更に悪化されても困るのであまり考えないようにした。
明日のためにも彼は風呂にせっせと向かい、俺は一応荷物確認をした。一通り問題が無いと確認が終わり、彼の風呂上がりを待つ。
「ニキおいで、髪乾かしたる」
「…おー、さんきゅ」
ドライヤー、櫛、ヘアオイル、最後くらい彼を俺の匂いで包ませたいという欲からした行動。案外否定はされないもので安堵した。
今座っている椅子の俺の足の間に彼を座らせて、彼の癖のある髪を梳かせば毛先が少し外ハネになって面白い。少し毛先を弄ってからヘアオイルを髪に馴染ませ、ドライヤーをし始める。静かな空間にドライヤーの音だけが支配する。8割くらい乾いた辺りで冷風に切り替え、手ぐしで髪を整える。風呂を上がった時よりも絡まりにくく、艶のある髪になり、ケアしていた俺自身が一番気分が良かった。
「終わったで」
「……」
返事がこず心配になって彼の顔を覗けば、どうやら彼は寝てしまったらしく、すやすやと規則正しい寝息を立てている。
床に座らせておいてこのままほっぽったら怒られるだろうなと思い、彼を姫抱きして寝室まで運んだ。軽いとまではいかないが運べないほどの重さではなく案外余裕だった。
彼を運んだ際にふんわりと香る俺のシャンプー、ボディソープ、ヘアオイルの匂いに堪らなく興奮した。この興奮を抑えながら風呂場に向かい、風呂を上がって髪を乾かしてから寝床に着いた。
✺
午前9時。社会人であれば遅刻と言われてしまうであろう時間に目が覚め、起き上がった。新幹線の予約は確か11時とかだっただろうか、今起きておけば彼を見送れそうで安心した。
そうとなれば、まず髪のセットでもしようと思い洗面所に向かった。洗面所の鏡を見れば思った以上に髪が崩れていなくて、胸を撫で下ろす。幸い、櫛で梳かせばどうにでもなりそうだった。
櫛で梳かして髪を整えたら自身の歯ブラシを手に取り、歯磨きをする。そのうち小腹が空くので何を食べようかと手を動かしながら考える。確かパンがあったなと気づきトーストでも良いかと思った。次にする事が決まったのでうがいをして歯磨きを終える。
洗面所の電気を消して台所に向かった。とりあえず自分の分だけで良いかと思い、オーブントースターにパンを二枚入れてタイマーを回す。
「おはようさん」
「……はよ」
パンの焼き上がりを待っていたら大きな欠伸をしながらニキがリビングにやって来た。朝の挨拶をすれば、眠そうな顔をしながらも彼から返答がきた。そんなことをしていればパンが焼き上がった。人知れず洗面所に向かった彼もきっと食べるだろうと思い、もう二枚新しくオーブントースターにパンを入れ、タイマーを回した。
「どれがええ?」
「ボビーのお好みでいいよ」
後から焼いたパンも焼き上がり、パンに何をのせようか迷っていたら丁度よく彼が戻ってきたから、何が良いかと聞いたら俺のお好みと返されてしまった。少し溜息をつきながら冷蔵庫を開ければ最初にマーガリンが目に止まった。めんどくさいから今日はこれにしようと決め、手に取った。四枚全てにマーガリンを塗りたくり、彼の居る机の上に皿を置く。
「いただきます」
二人で手を合わせていただきますをして、黙食をする。お互いの咀嚼音だけが部屋に響く。何だかんだ静かな彼と居るのも心地良い。
「ご馳走様でした」
言葉を交さない食事は目の前にあったパンに釘付けになって、それを味わう時間になっていた。実際、丁度良い焦げ具合で表面はサクサクな美味しいパンだった、と食レポをしてみる。また今度作ろうという気力が湧いた。時刻を見れば何だかんだ10時近くになっており、新幹線に間に合うように彼を急かす。
結局最後は時間ギリギリに家を出て二人して走りながら新幹線に向かった。
「また撮影で」
「またな」
彼とはまたね、とあっさりとした別れをした。徐々に遠くなっていく彼の背中を見えなくなるまでずっと見続けていた。少しの間だったものの何だかんだアイツが居なくなると寂しくなるかもな、なんて思いながら帰路に着いた。
✺
家に帰ってから洗濯機の中の服を干そうと蓋を開ければ、彼の服が入っていた。恐らく癖でそのまま入れてしまったのだろう。今度アポ無しで泊まりに来た時用に取っておくかと思い、乾燥機の中に入れた。
そのあと、ぼんやりと彼の事を考えていた。やっと彼をΩに仕立てあげたのだから、はよ俺のもんにしなあかんなという気持ちでいっぱいだった。少しどころか非常に大変な道のりだろうけれど、彼を絶対に堕としてやると俺は意気込む。もぬけの殻になった彼の部屋を眺めながら、どうしてやろうかと時間を忘れて頭を回した。そのうち俺と番うように上手く行動するだろ、とこれからの俺にほっぽり投げた。






