コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
しろせんせー(💙)×まちこりーた(💚)
お付き合い済しろまち。
※全年齢
お題『人狼』
──────────────────
とある老人の回顧録【💙💚】
──────────────────
※人狼パロ
※死ネタ、シリアス(メリバ?)注意
解説しないと分からない部分もあると思うので、雑談部屋の方に裏話兼解説を投稿させていただきます。ぜひ、そちらも合わせてお楽しみください。
──────────────────
此処は、大陸の内陸部のとある小国。
この国には、昔から“人狼”が出没するという伝説があった。人には有り得ぬ程の鋭い眼光、大きな獣の耳や尻尾、そして人の身をも切り裂く強靭な爪や牙。この国の人々はそんな人狼を恐れ、憎み、細々と暮らしていた。
人狼伝説は、ただの伝説ではない。
数ヶ月前にも、人狼の襲撃を受けた村の住人の半数ほどが亡くなったという報告があり、様々な文献に人狼出没の情報が記されている。
人狼は人口の少ない小さな村や町を狙って住民になりすまし、夜になると人間を襲う。
住民たちは互いに疑い合い、毎日会議をして怪しい者を一人処刑する。
そうして人狼を処刑できなかった村は、次々と住民が殺されていき、最終的には村自体が滅んでしまうのだ。
数十年前に滅びし田舎村、フォルストルデ。
此処も、人狼の襲撃により滅んだ村の一つである。人口の少ない村ながらもその土地の多くを畑として持ち、フォルストルデで採れる野菜は王都でも評判であった。
この村が滅びる少し前に村を追放された老人の書いた手記は、悲恋の物語として今も語り継がれている───。
◆ ◆ ◆
フォルストルデは良い村である。
森の中の溢れる自然、綺麗な湧水、土地いっぱいに広がる雄大な棚田。人口こそ多くはないものの、空気の澄んだ長閑な村であった。
だからこそ、フォルストルデが滅びたと聞いたとき、私は耳を疑った。
フォルストルデの民の冥福を祈るという意味も込めて、ここには私の見た美しくも儚い悲恋の話を綴っておこうと思う。
私が村を追放される前。
この村の占い師は、先代の老爺に教えを受けた若い娘であった。狼のような襟足の、肩くらいまで伸ばしたグラスグリーンの美しい髪。左目の下の泣きぼくろ。そして何より、聞き心地の良い澄んだ声。その人柄の良さも相まって、村の民から愛され、親しまれていた。
そんな彼女は、村の鍛冶屋の息子と恋仲にあった。彼女自身よりも年下ではあったが、長身で頭の切れる美形の男。二人は心から信頼し合い、愛し合っていた。
先程も書いたが、何分この村の人口は多くない。
しかし、その分村の者達の仲は深い。特に、村の若い者達は、本当に仲が良かった。
占い師の娘と鍛冶屋の息子、村長の息子である美形の男に少し背の低い成人したばかりの狩人の男、村の食堂の若店主、そして村一番の美人娘。
六人で街へ遊びに行っていることも少なくなく、互いに本心を晒け出せる本当に良い友達であったのだろう。
そんな平和も、気づけば終わりを迎えて。
ある日を境に、村から一日に一人ずつ人が消えるようになった。
──否、消えていたのではない。何者かに、殺されたのだ。
誰も彼も皆、背中には大きな爪で引き裂かれたような痕を残して。
村の若者達は集まり、会議をする。
「……どう考えても、こりゃあ人狼の仕業だろうな」
一番に口を開いたのは、村の管理者として会議に参加していた村長であった。続けて、村長の息子が口を開く。
💛「それは…そうやけど。うちの村に途中から越してきたやつなんて、おらんくない?」
──そう、問題はそこである。
この村に途中からやってきた者などほぼいない。いたとしても、小さな頃にやって来てこの村で育った者ばかりだ。長い修行旅の末フォルストルデに定住した鍛冶屋も、その一人だった。
💙「せやんな。やから、人狼はこの村に昔っから住んどることになる。……俺らん中にいても、おかしくはない」
切れる頭を回して、深刻そうに話す鍛冶屋の息子。
占い師は、少し悩んだようにしながらも、覚悟を決めて顔を上げた。
💚「…そう、だよね。私も、早く人狼突き止められるように頑張るから」
🩷️「俺も! 絶対、一発で仕留めるから」
狩人の男が頼もしい声で告げる。
結局この日の会議では、誰も処刑することなく終わった。
───このときは、誰も違和感を持っていなかったのだ。
まだ狩人と占い師が残っているという、通常なら有り得ぬ信じ難い事実に。
次の日の朝。
殺されていたのは、村唯一の診療所の老医者であった。
若者達は再び集まり、会議を開く。
狩人は言った。
🩷️「ごめん、昨日は狙われるのやっぱ村長とかニキニキだと思って、村長の家行ってたから……」
❤️「…大丈夫、りぃちょくんのせいじゃないよ。まちこさん、昨日は誰か占えた?」
食堂の若店主が、落ち込んだ狩人を慰めながら占い師に話を振る。狩人といえど、まだ成人したばかりなのだ。まだまだ幼い少年だな、と悟る。
💚「えっと、ひとまず昨日占ったのはじゅうはち。この村に来るのが一番遅かったのははっちーだから、占ってみたんだけど…はっちーは、シロだよ」
💜「そうなんよねー、早めに疑い晴れて良かった。さっすがまちこ!」
占い師の娘と村一番の美人娘。二人は、切っても切れぬほどの親友だ。互いに信頼し合っているのが伝わってくる。
占い師としても、彼女が追放されるのは避けたい道であったのは目に見えたことだった。
「…あ、でも僕、昨日の夜に○○さんが歩いてるところを見たような…」
とある農夫の証言により、その日私は追放されることが決まった。
だが、私は生まれも育ちもこの村だ。そんな場所が滅ぶ姿は見たくなかった。
そこで、ひっそりと様子を見ておくことにしたのだ。 その様子も、ここに書き綴っておくとしよう。
❤️「○○さんが本当に無実なのか、人狼なのかは分からないけど…でも、まちこさんとりぃちょくんが殺されなかったのはデカいね。少なくとももう一人は、占ったり守ったりできるわけだから」
私の追放が決まったあと、誰もが当然のように聞いていた。──ただ一人、占い師の娘を除いて。
気づいたのだ。
長い時間この村にいるなら、人狼は占い師と狩人が誰かということを確実に把握しているはず。それなのにそれらを狙わないという事実の違和感に。
💚(…そん、な、…じゃあ、もう、)
情けを掛けられる程仲が良くて、この村生まれではない者。そんなもの、もう一人に絞られてしまうのだ。
💚(せん、せー、なんで……)
愛する恋人が人ではなかったと知り、どうして平然としていられるというのだろう。
皆がいなくなった会議室で、占い師は静かに涙を流した。
それから、三刻ほど経った頃だろうか。
もうとっぷりと日が暮れて、夜空に満月の浮かぶ深夜のことだった。
占い師はこっそりと家を抜け出し、鍛冶屋へと足を進める。
その手には、占い用の用具の入った籠、そして──狼をも殺すという、毒の小瓶が握られていた。
💙「…来ると思っとったよ、───まちこ」
鍛冶屋で占い師が目にしたのは、獣の耳や尻尾の生えた恋人の姿。いつもの赤い瞳は、普段よりもさらに吊り上がっていて。
💚「……やっぱり、そうだったんだね。せんせー」
占い師は潤んだ目で、恋人──もとい、人ならざる者に一歩近づく。そんな彼女を、人狼は拒絶した。
💙「…駄目や、近寄んな。抑え、きれんくなる…!」
ハァハァと荒い息を吐きながら、本能を押さえ込もうと顔を逸らす人狼。しかし、その忠告をものともせず、占い師はそのまま足を進めた。
💚「…大丈夫だよ。私も、せんせーになら──何されても、平気だから」
💙「やめろ、お前が死ぬぞ…っ。早く、逃げ…ッ」
占い師は人狼の頬に手を添え、ふんわりと微笑んで言った。
💚「…いいの。せんせーと一緒なら、殺されても…いいの」
💙「っ…!」
気づけばどちらも、目に涙を貯めていて。どちらからともなく、満月の明かりに優しく照らされた二人の影が重なる。
これより先を覗くのは野暮というものだ。私は知らぬふりをして、村を囲む森に出た。
次の日の朝、私を見つけた村の若者が私を呼びに来た。
追放された私を呼びに来たという事実に対する少しばかりの疑問と占い師達の安否を不安に思いながらも、若者に連れられるまま例の鍛冶屋へと赴く。
💛「──ははっ、そんなのって、アリかよ…」
一歩家に踏み入れると、絶望に満ちた村長の息子の乾いた笑い声が聞こえてきて。一体、占い師と人狼であった鍛冶屋に何が起きたのか。その一言で、私は全てを悟ってしまった。
🩷️「…やだっ、えっ、なんで、まちこり、せんせー、」
❤️「りぃちょ、くん……でも、これは、二人が決めた道だから…」
まだ信じられないとでも言うように、若き狩人は動転していた。
普段ならすぐに慰めに回る若店主も、今日は何処かぎこちない。途切れ途切れのその口調は、慰めというよりも、自分に言い聞かせているように思えた。
💜「…まちこ、っ……」
占い師の親友であった娘は、一人で泣いていた。目は赤く腫れ、ずっと泣いていたことがひと目でわかる。占い師を呼ぶその一言に、どれだけの想いが込められているのだろう。
皆にずっと愛されていた占い師と鍛冶屋。
特に仲の良かった友人達は、声もろくに出せずただ泣くばかりであった。
若者に奥の部屋へと案内され、覚悟はしていたがその光景に息を呑む。
占い師と狼の耳と尻尾を持つ鍛冶屋が、寄り添うようにして息を引き取っていた。
占い師の服は爪で切り裂かれ、身体にはたくさんの噛み跡がついていた。しかし、その身体に爪痕のような傷は何一つなく。眠る人狼の傍には、あの毒の小瓶が転がっているのが見えた。
─人狼は、自分の意思で人を殺めていたわけではないのだろう。
そう、悟った。彼は何処か苦しんでいるような表情で、それでいて愛おしむような表情で眠っていて。占い師は、泣き腫らした目で笑っていて。
昨晩見た、月夜に微笑む彼らの姿を思い出す。
占い師と人狼だった男は二人、何処か幸せそうに血の滲んだ床に横たわっていた。
──────────────────
◆いいね・コメント励みになってます。本当にありがとうございます(*´˘`*)♡
◆リクエスト募集中です!