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零番街

33 - いつかお前が、心から笑える日の為に

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2025年03月08日

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ないこ「この街の管理権、俺に頂戴?笑」

管理権。つまりは‘‘この街を寄越せ’’と言う事だ。

いくらコイツがお人好しの馬鹿でも、本気で俺の事を弟だと思っていたとしてもこれだけは叶えられないだろう。

…まあ、どうせからかってるんだろうけど。

桃李「そんな事で、良いのか?」

…ぇ、、へ??

一瞬固まり、言われた事を理解するまでに時間がかかった。なんならわかんないままで良かったかもしれない。

ないこ「っ゛?はァ!?!?」

言ってる事の意味を理解できた所でそいつの思考はわからない。用は今俺の脳内に浮かぶ言葉は、

「何言ってんだコイツ??」だ。

ないこ「俺が今何言ったかわかってる!?管理権だよ??」

桃李「ああ、勿論だ。」

ないこ「やばい頭痛くなって来た。…大丈夫??管理権の意味解る??」

桃李「わかってるわ!!…お前この街が欲しいのか??俺にはちょっとわっかんねぇが、お前がそうしたいって思ったんなら否定はしねぇよ??」

ないこ「え、、俺ら初対面だよね?桃川ってそんなセキュリティガバガバなの…??」

桃李「いやぁ、上の連中はどーにも頭が硬ェ。つまんねぇ人生送ってるぜきっと。」

桃李の言っている事は滅茶苦茶だが、その行動力と声のトーンで、真剣である事は伝わってきた。ただ上の連中は頭痛に悩まされているんだろうきっと。同情するよ…まあ置いといて

桃李が真剣なのであれば、少しばかり悪い事をしただろうか。

桃李「別に管理権くらい、欲しいならやるよ??」

…どうしよう…。

少しの沈黙が流れ、痺れを切らした桃李がため息を吐いた。

桃李「…はぁ~。お前、吐くならもっとマシな嘘吐けよな。」

怒らせた…??どうしよう、。

初めて親切にしてくれた大人に対して、混乱していたのだろう。今まで塞ぎ混んできた感情が一気に押し寄せてきて、何がしたいのか、何を言うべきなのかわからなくなる。

ないこ「うっ、嘘じゃ無いっ!!!」

必死に伝えた言葉は、どうにも子供らしい内容で、自分自身にほとほと呆れる。

桃李「じゃあ、仮にお前に管理権が渡ったとして、何がしたい?」

ないこ「それはっ!!…それ、は、。」

…俺は、何がしたいんだろう…。


ないこ「、、なにも、、ない…。」

少年の顔には、計り知れない憂いが写った。

桃李「…。」



視点桃李

初めてこの街に来て、コイツを見かけた時、気味の悪いガキだと思った。女たらしで、ガキの癖にヘラヘラしてて、妙に大人ぶる。ただの強がりだと思っていたが、時折一人思い詰めた様な顔をしていた。薄々感づいていたが、話してみてそれは確信に変わった。

コイツは弱い。弱いから、強い振りをして自分を守っているんだ。生い立ちも親も、友も、自分さえも無い子供。そんな子供が人間らしく生きていく術が何処にあるだろうか。

自我を押し殺し、分厚い仮面を被り、強い自分で居続ける。

そんなの、いくら心があっても足りない。

そんな事をするくらいなら、そんな事しか出来ない様な環境なら、それはコイツの居場所じゃ無い。

…そんなのは、悲しいじゃ無いか。





混乱、させちまったか。見た感じ、まだ18にも満たない子供だ。大人げない事をしたな。

桃李はないこの柔らかい桃色の髪を撫で、謝罪の言葉を紡いだ。

桃李「…すまん。まだ難しいよな。急がなくて良い。ゆっくり、ゆっくりで良いから、もっと、人間らしく、当たり前の日常を手に入れて、幸せになろう。…なって欲しいんだ。」

どこか怯えているようだったから、桃李は安心させる為にもできる限り優しく接する。



ないこ「…どうせ、居なくなる。」


桃李「ならねぇよ。ずっと一緒だ。」


ないこ「っ…嘘だ。大人なんてみんなクズだ。」


桃李「はは笑、そう思われちゃ敵わねーな。」


ないこ「何も、…何もできない癖にっ…!!」


桃李「出来るか出来ないかは確かに解んねぇな。ただ、少しでもお前の助けになるためなら、何だって手伝ってやる。」


ないこ「ッ!!!だったら、、なんでっ、、なんでッ…!!!」


困った様な顔を浮かべ、動揺を隠しきれてない。が、それでも取り繕おうと必死だ。

桃李の大きな手が、ないこの両頬を包み込み、目を合わせた。

桃李「俺がちゃんと聴いてやる!!明日だって!!その次だって!!ずっとずっと聴いてやる!!!だから!!!っ!!だからッ!!」

「‘’‘’言いたい事あんなら、!ちゃんと言えッ!!!‘’‘’」

瞬間、少年の頬に、一筋の涙が流れる。




ないこ「…っ、ひとりに、しないでっ!!」


…それがお前か。ないこ。


ないこ「へんな目で見ないで!!怖いかおしないでっ!!…かわいそうって決めつけないで、!!、うそをつくのはやめて…!!」

泣き崩れた少年を抱き締めながら、隠された本音に、至極丁寧に相槌を打ち、その内容一つ一つを受け入れる。

ないこ「…誰かおれに、、ぉれに…生きてて良いんだって、!!産まれて来て良かったって、思゛わせてよ゛!!!」

…お安い御用だ。

自分の中で答えは出た。やるべき事は一つだけだ。

黙って頷き、ゆっくりと口を開いた。

桃李「…解った。」

静かにないこから離れ、その決意を伝える。

桃李「お前の望みは解った。この街がどれだけクソかも伝わった。」

だから……


桃李「俺がお前の、居場所に成ってやる…!!!」



いつかお前が、心から笑える日の為に。

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