テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
269
朝、里美と気まずい思いをして、お昼休みが不安だったけれど、三崎君が加わったことで楽しく過ごせた。三崎君とも仕事の仲間として、これからもこういう機会が増えるだろう。
楽しいお昼休みで気分を持ち直し、午後の業務があわただしく過ぎて行く。病院から本日受付分の患者さんの診察終了の電話を貰い、やっと、一日の業務が終わった。
「お疲れさまでした」と声を掛けて、事務員さん達を先に返し、会社に業務報告を送り、指紋認証で退勤をする。
「里美、お疲れ様。帰ろう」
すると里美は何が言いたげに、私をジッと見つめて来る。
「先輩、家に帰るんですよね。大丈夫なんですか」
「えっ?」
「旦那さんの浮気の事をどうするんですか? あやふやな事をしていたら、この先、困る事になるんですよ」
「里美、心配してくれてありがとう。言っていることは、分かるんだ。けれど、好きで結婚して、生涯を誓って、いきなり嫌いになんてなれない。まだ、どうしたらいいのか分からないの」
「そうやって、ズルズルと現状維持でいいんですね」
現状維持なんて、望んでいないと、首を横に振る。
里美の真剣な視線が私を捕えていた。
でも、” 嫌いになったら別れてお終い “ の、ただの恋人同士とは違う。婚姻届けを出した夫婦だから、そう簡単に割り切れないのは、仕方のない事だと思う。
「少しずつ話し合っていくよ。ごめんね」
里美は、私の煮え切らない態度にフゥーッと呆れたように息を吐き出した。
「きっと、また、浮気しますよ。浮気性の男なんて、性質の悪い病と同じなんだから治りませんよ。何度でも浮気するんですからね」
「ごめんね。心配してくれるのわかるよ。私、直ぐに答えが出せるほど器用じゃないんだ……よく考える。ごめん」
里美には迷惑をかけてばかりで、気持ちに応える事も出来ず、宙ぶらりんな状態。申し訳ないと思いが募るばかりで、視線を逸らして俯いた。
そんな私の事を里美はそっと抱きしめて来た。女の子特有の甘く柔らかい香りが私を包み込む。
「先輩、なにかあったら、いつでもウチに来てください。先輩を泣かす男なんてサッサと捨てちゃっていいんですよ」
「うん、ありがとう。ごめんね」
「今日は、帰りましょう。私も言い過ぎました」
私から腕を離した里美は切なそうに微笑んでいた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!