テラーノベル
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今思えば、アイツの考えてることなんてわかった気になっていただけで、読めはしなかったよな。
チャンスはひとりその事に気づく。
つまり、自分の妄想理想をアイツに当てはめていただけで、本当のitrappedではなかったのだ。
もう、気づいている。アイツは俺に興味なんかないし、嫌っているのだろう。そして、ダラダラと未練をここまで女々しく持ってきているのが、俺らしくなくて気持ちが悪い。
本当に初めてだ。こんな感情。
ここまで向き合えたのはきっと初めてだろう。
ここに来て、やっと。アイツに切り捨てられて。真正面から戦って、殺されて。初めてアイツが俺のことを本当に嫌いだということに気づいてしまった。出来れば気づきたくなんてなかった。
目の前のitrappedは、楽しそうに俺の肉片を切り刻む。もはや感覚はないのでいいのだが、楽しいのだろうか。
――そんなに嫌いなのか?
――楽しいのか?
――――本当に、俺が大っ嫌いなんだな。
ああ、ここまで人に執着する理由。
それは、きっと俺が――――――――――――
暗転。
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目をゆっくりと開くと、見慣れたような、見慣れないような天井が目に入る。ギャンブル場。俺の思い出の場。
全てが懐かしく感じる。懐かしいものなのだろうな。
……なんでここに居るんだろう?と疑問を抱いて自身の手のひらを見る。
感覚もきちんとあるし、動かせている。モーマンタイさ!
少し前に戻れたのなら、itrappedに会いに行って今からでも挽回しよう。
俺はitrappedを、まだ愛しているから。
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やっぱり、気づいているのと気づいていないのじゃ全然違うな。
そんな事をチャンスは考える。嘘だとわかっていると、itrappedの言動に少しぼかしが入っていることがわかるのだ。
そして、自身も頭をフル稼働させてわかっていることを気づかせないようにする。ああ、itrappedはこんな感じで俺に嘘をついていたんだな。
……何のためだろう。金だっけ。
「ロン。」
itrappedがいかも簡単でしたよ?みたいな顔でそんなことを言う。
俺は悟ったのだ。持ち前の運で勝ち続けていたのもアイツの俺への悪い感情のひとつなんじゃないか、と。
ていうかそうだろ、めっちゃ嬉しそうにしてるし。
……可愛いなあ。
「うわ、2連続かよ!!?さすがに今回はいけると思ったんだけどな。」
「役を作るのに時間をかけすぎじゃないかい。ほら、上がっちゃった。」
「コイツ〜〜〜〜!!」
俺が悔しそうにしながら賭け金を渡す。
itrappedは意地悪そうに笑いながらそれを受け取って、懐にしまった。
本当に、可愛い。
――俺の作った幸せで喜んでいて。
…?俺は今何を思ったのだろう。俺は心の底から、itrappedの純粋な幸せで満足できるのだ。
そうだろ?だってさあ、違ったらまだ好きなことに説明つかないし。
……――もしかして、純粋な”好き”とは違う?俺は、今思えば、
…………もしかして、俺は、ずっと。
支配したかったのだろうか。
「……チャンス?」
ボーッとしている時、itrappedから声がかかる。そりゃそうだろう、目の前の金づるが急に少し上を向いて微動だにしなくなったのだから。
まあ、今日は1歩進めただろ。
これからはitrappedを手に入れる片手間に、囲う準備でもしとこうか。
「ああ、すまん。ボーッとしてたみたいだな!…もう帰るか?」
「うん。暗くなってきた頃だし、まだ泊まるには早い。微妙だからね、帰るよ。」
「オイオイ、泊まることになんの疑問も持ってないじゃないか。」
「はは、ダメかな?」
「ダメじゃないぞ!」
食い気味に答えると、少しおかしそうにアイツが笑う。
「ならよかったよ。」
席から立ち上がると、部屋からそのまま出ていく。
それから、暫くして扉が閉まる音がして。
早く、手に入れたいな。そんな欲望を胸に抱きながら、ゲームセットの片付けをした。
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