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少し悩みすぎてしまった紫の話。
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mnpsの彼らがスタッフとして活動している軸の描写がございます。軸はWT軸です
初投稿の為なにか不手際が御座いましたらお知らせ頂ければ幸いです
「好意とはなんだろうか」これは俺のある種の課題であり、永遠に解決することのない問いだった。
好意とは、人類が等しく受けるべき感情であり、時にそれが嫌悪へと転じ、疎ましく思うこともあるという。では、なぜそのことを自覚してもなお、嫌悪に変えてしまうことがあるのか。不思議でならなかった。
サラサラと紫のしっぽのついたペンで紙へと書き出してみるが、答えは出ない。当たり前だ。自分が理解し得ないのだから。自分を超越した思考は時に理解を拒む。天才が理解されないのと理屈は同じだろう、とそう思った。
ある日、俺は思い切って問いかけてみた。
「好意とはなんだ」と。
全く同じ質問を七人にしては、答えを待ち、考え込んだ。ある者は「自分や自分の映像が好かれることは嬉しいことだ」と言い、ある者は「合理的な感情だ」と答えた。さらに別の者は「考えたことがない」と少し悩んで笑っていた。
つまり、考える必要のないことなのだろうか。人への好意や、誰かからの寵愛を受けているという事実は、人にとってあまりに当たり前で、さも美しいことなのだろうか。
けれど——その好意を受ける理由が、わからない。答えが出ない。
七人全員と話せているのだから、嫌われているわけではないのだろう。では、なぜ俺は“嫌われていない”と思い込んでいるのか。
言葉より行動、という言葉があるように、感情には必ず動作が伴う。では、インターネットではどうだろう。顔も体も出していない著者は、どうやって寵愛を受け、どうやって好意を返しているのだろうか。それは文であり、行動ではない。では、それはただの利害の一致なのだろうか。
ペン先が走る。
手が真っ黒になるほど、ガリガリと書いていく。
インクが染みて、指先から掌へと黒が広がっていく。思考も手のように黒く濁っていく気がした。紙の端がインクで波打ち、言葉の輪郭が滲んでいく。
どれほど時間が経ったのか、わからない。
外の光が傾き、窓の外に沈む夕日が部屋を薄橙に染めていた。
手が痛い。けれど止まらなかった。止めてしまえば、この問いが途切れてしまう気がしたのだ。
その時だった。ぽん、と肩を叩かれる。
振り向くと、黒い袖と揺れる髪が視界に入った。
柔らかく、それでいて確かな声が落ちる。
「お前は神様じゃないんだから、全てを理解しようとしなくていいんだよ」
その言葉は、俺の思想全てを否定するようでいて、不思議なほど優しかった。
理解しようとしていた全ての線がふっとほどけていく。
ペンを握る手の力が抜け、黒く染まった指先が微かに震えた。
俺は何故か、酷く安心した。
まるで長い間潜っていた水面から、ようやく顔を出したように。
呼吸が戻ってきた。音も、光も、温度も。
それらが一度に押し寄せてきて、俺はただ、目を閉じた。