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抽出チームでコーヒーを飲む。それはどうなのか、とミホ先輩に言われたがそれはそれでいいのだ。だってこれはボクの趣味だから、誰も文句は言えないはずだ。というか、言わせないから。


「……あっ、おはよう、宇宙」

「あ、ども…」


今日の宇宙は元気がないみたいだけど、いったいどうしたのだろうか。まぁ、ボクにはあんまり関係のないことだからどうでもいいのだけれど。…宇宙ってなんでこんなに体調の悪そうな顔を作るのが上手いんだろう。

明らかに張り付けたような顔をしている。今までに何回仮病を使ったのだろうか、面白い、気になるなぁ。


「…なんすか、その顔」

「いやぁ?なんでもないよ~」

「はぁ、そうですか?」


そう言って、彼女はO-02-62の作業に行ってしまった。いや、あのEGOで行くのか…?と思うところもあるけど、管理人の指示だからボクは何も言えない。

相変わらず、抽出チームは暗い。一人になるとどうしても、おかしくなってしまった兄さんの事を思い出すね。おかしくなったって言うか、幼児退行したって言うか。

正直同室で寝るのにも、疲れてきたところだった。今は、部屋で兄さんと戯れるよりこの部屋でユミと宇宙と一緒にコーヒーをすすっているのが好きだ。昔はあんなに兄さんが好きだったのに、なんでかなあ。

最近手を上げそうになったし、あの時の父さんもこんな気持ちだったのかな、どうなのかな。まぁもうどうでもいいや、前の父さんの話なんて、今更考えることじゃない。

…もしかして、今のボクって、何にも興味がないのかな。どうだろう、コーヒーの味はいつもと変わらず、曖昧だ。そういえば、ミカはコーヒーは苦くて苦手だと言っていた。普通は、普通の子的にはコーヒーの味は、曖昧じゃないのか?

ユミが恐る恐るという感じで、抽出チームに入って来た。最近宇宙と口論になっていたからね。

なんだかムカついてきた、こんなことで悩んでる職員なんてボクしかいないみたいで、独りぼっちみたいで、昔のボクみたいで、どうしても気分が悪い。


「あー…ユミ、火」

「はい?あぁ…はい」


ライターを持っている理由は?こいつ、煙草も吸わないのに…誰か燃やすつもりか?なんてね。


「っはー……ユミ、コーヒーは必要?」

「さっき炭酸水買ってきました、必要ありません」

「そう…」


机にトン、と音を立ててコップが置かれた。その中に炭酸水を突っ込んでいるが、それに意味はあるのだろうか。そもそも、ユミは炭酸水をよく飲んでいるが、好きなのだろうか。正気なのか…?

煙草を吸っていたら宇宙が作業から帰ってきた。なんとなく、気まずそうだ。間にボクを挟まないなら好きにすると良いけど、あんまり長く続くようなら管理人に言おうかな、なんて考えてみる。

いや、あいつに話しかけたくないな…。


「スペース、昨晩はすみませんね」


ユミが宇宙に謝る。本名を晒されて嫌そうな顔をしているが、謝るなら確かにあだ名じゃない方が良いだろうね。コップの中の炭酸はさっきと変わらず。宇宙は嫌そうな顔のまま自分の分の椅子を部屋の隅から引きずってくる。これもいつも通り。

ユミが目を閉じているのも、いつも通り。宇宙の目が遠くを見ているのも、いつも通り。


「いやぁ、気にしてねぇよ……さ、みんな集まったことだし~、いつも通りちょっとしたお茶会を開こう」

「果たして本当に˝お茶会˝かなぁ?」

「うっさ、黙ってろフン」


彼女の態度も、いつも通り。変わらない、ボクたちだけ、入社してからずっと変わらない。

どうしてだろう。みんな変わってしまった。ボクたちも狂えたら、どれだけ良かったことか。


「先輩に対する態度ですか…それ…彼も一応チーフなんですけどね」

「うるさいのが悪い、さっさと死ね、いや死ぬな」

「お前マジわかんね…」


今日は何回目かな……きっと、これで█回目。

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