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K-Takasaka
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K-Takasaka
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洞窟の奥から響いていたエンジン音は、次第に大きくなっていった。
壁の向こうから、何台ものカートが近づいてくる。だが、見えるのはヘッドライトだけだった。運転席には誰もいない。
「数を確認する」
アオノがキーボードを操作する。
「十二台。全車両、無人。速度は時速八十キロから百二十キロ。こちらへ接近中」
「そんな冷静に報告してる場合じゃないだろ!」
マサカゲが叫び、カートを反転させた。
「出口へ戻るぞ。全員、隊列を組め!」
「カキちゃん、今度は勝手に洞窟へ入らないでね!」
「分かってるって!」
「その返事をした直後に何かする人の返事なのよ、それ!」
六台のカートが一斉に走り出す。
洞窟の壁には、相変わらず色とりどりの鉱石が埋まっていた。カキは何度も振り返り、名残惜しそうにそれを見ている。
「青い結晶がある! あれは絶対に価値があるぞ!」
「今は命のほうが価値あるでしょ!」
「命と鉱石なら、鉱石の種類による!」
「比較するな!」
そのとき、前方に光る箱が現れた。
箱は空中に浮かび、中央に大きな疑問符が描かれている。
「またアイテムボックスだ」
アオノが言った。
「取れば、追跡車両を妨害できる可能性がある」
「じゃあ、俺が取る!」
カキがアクセルを踏み込んだ。
「待て。アイテムの性質は不明だ」
「取ってから考える!」
「それを待てと言っている!」
カキのカートが箱に衝突する。
箱が回転し、カキの手元に赤い物体が現れた。
「おおっ! これは何だ!」
「赤い。丸い。中心部に白い模様がある」
アオノが観察する。
カキはそれを高く掲げた。
「鉱石だ!」
「違うでしょ!」
メバルが叫ぶ。
赤い物体は突然、カキの手から飛び出した。宙を回転しながら、後方の無人カートへ向かって飛んでいく。
直撃。
無人カートが大きく跳ね、洞窟の壁へ突っ込んだ。だが、車体は煙を出しながらもすぐに復帰し、何事もなかったように走り始める。
「効いてない!」
カキが驚く。
「いや、効いてはいる。吹き飛んだあと、元の位置へ戻った」
アオノが答えた。
「それ、効いてるって言わないんじゃない?」
メバルがギターを抱え直した。
後続の無人カートが一斉にアイテムボックスを取り、次々と攻撃を放ってくる。
緑色の甲羅、巨大なバナナ、よく分からない爆発する箱。
「マサカゲ、左だ!」
K-Tが短く叫んだ。
マサカゲがハンドルを切る。直後、緑色の甲羅がカートの横を通り抜け、洞窟の壁に当たって跳ね返った。
「右にも来る!」
K-Tはカートを横向きに滑らせ、防弾盾を構えた。
甲羅が盾にぶつかる。
鈍い音が響いた。
防弾盾は二つに折れ、カートの後部へ突き刺さった。
「Kさん、防弾盾が壊れた!」
メバルが叫ぶ。
「問題ない」
「問題あるよ! 盾が板になってる!」
K-Tは折れた盾を外し、次に黒いガラケーを取り出した。アンテナを伸ばすと、警棒へ変形する。
無人カートが前方から迫ってくる。
K-Tは警棒を振り、カートの前輪を狙った。
警棒は途中で縮んだ。
カチッ、と小さな音を立て、ただのアンテナに戻る。
「……」
「Kさん?」
「問題ない」
「それも問題あるって!」
カート同士が衝突しそうになった瞬間、K-Tは身体をひねって無人カートを避けた。相手の車体は壁にぶつかり、勢いよく回転する。
そのまま、K-Tのカートに乗っていたミステーのピラミッド飾りへ突っ込んだ。
ピラミッド飾りが光る。
洞窟全体が震えた。
「ピラミッドが起動した」
ミステーが真剣な顔で言った。
「何が起動したの?」
「ピラミッドの中にいた、小さなピラミッド」
「それは見た目で分からないよ!」
ミステーのカートから光の線が伸び、洞窟の壁に巨大な地図が表示された。
地図には、現在地から三本の道が描かれている。
左は「安全ルート」。
中央は「たぶん近道」。
右は「絶対に選ばないでください」。
カキが右へ向きを変えた。
「カキちゃん!」
「こういうのは、絶対に選ぶなって書いてあるほうが面白いんだ!」
「ゲームの中でも現実でも、そういう発想をするな!」
マサカゲがカキのカートへ手を伸ばすが、届かない。
「全員、左へ進め! カキは中央へ誘導する!」
「俺を誘導するな! 右には何かある!」
「あるのは危険だ!」
「危険の中に鉱石があるかもしれない!」
カキは右の道へ突っ込んだ。
ミステーも続く。
「危険という看板は、危険が存在することを教えてくれている。親切だ」
「親切だからって入るな!」
メバルも二人を追い、マサカゲとアオノ、K-Tが続いた。
右の道は急に狭くなり、上下へ激しく揺れ始めた。壁から巨大な岩が転がってくる。前方には、またアイテムボックスが浮かんでいた。
「全員、箱を取れ!」
マサカゲが指示を出した。
六人がほぼ同時にアイテムボックスへ突っ込む。
メバルの手元には、三本のバナナ。
カキには、また赤い物体。
マサカゲには、何も表示されない。
アオノには、見たことのない歯車。
ミステーには、白い雲。
そしてK-Tには、黒い拳銃が現れた。
K-Tは拳銃を構え、前方の岩へ向けて発砲する。
カチッ。
弾は出なかった。
K-Tはもう一度引き金を引く。
カチッ。
「Kさん、銃も壊れてる!」
「問題ない」
「だから問題あるってば!」
アオノが歯車を確認した。
「このアイテムは、周辺の機械を一時停止させる装置だと思われる」
「使えるのか?」
マサカゲが尋ねる。
「使用方法が不明」
「押せばいいんじゃないか?」
カキが言った。
「押すな。カキは押すな」
マサカゲが止めるより早く、カキが歯車を押し込んだ。
洞窟内のすべてが停止した。
無人カートも、岩も、アイテムボックスも、六人のカートさえも。
ただし、音楽だけは止まらなかった。
しかも、異常に大きな音量で流れ始める。
ミステーが立ち上がった。
「音楽が止まっていない。これは、世界がまだ走っているということだ」
「何言ってるの、ミステーちゃん!」
停止していたはずの黒いカートが、ゆっくりと動き出した。
その車体には、先ほどまでなかった白い文字が浮かんでいる。
『アイテム使用禁止区域へ移行します』
そして、六人の手元にあったアイテムが一斉に消えた。
メバルのバナナも、カキの赤い物体も、K-Tの動作不良の拳銃も消える。
洞窟の出口に、巨大な門が開いた。
門の向こうには、青空と広大なコースが広がっている。
だが、そこには六人を待ち構えるように、無数のカートが並んでいた。
先頭に立つ黒いカートの上で、赤いランプが点滅する。
『次のコースでは、アイテムの使用を禁止します』
メバルがゆっくりとギターを握り直した。
「……それ、私たちにはかなり不利じゃない?」
K-Tが前へ出る。
「問題ない」
その直後、K-Tのカートのエンジンが止まった。
「Kさん、走れないよ!」
カキが叫ぶ。
K-Tは無言でアクセルを踏み続けた。
カートは――――――動かなかった。
コメント
1件
読み終えました!第2話、めっちゃ楽しかったです🤍 今回もカオスな展開が止まらなくて、笑いながら読んじゃいました。「絶対に選ばないでください」って書いてある道に突っ込むカキちゃん、好きすぎる😂 そしてK-Tさんの「問題ない」が毎回フラグになってるの、絶対狙ってますよね…? 最後のエンジンが止まったのに「問題ない」って言い張るところ、もうツッコミ待ちの構えすぎててキュンとしました🥀 無人カート軍団との戦いも、アイテムのバラバラ感も、ブラックジョークみたいな世界観がたまらないです。次はどうやってピンチを乗り切るのか、ドキドキしながら待ってます🌙