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その日、いつもより少しだけ早めに仕事を終えた私は、家でゆっくりとお風呂に入った後、深夜の音楽番組を見ていた。
仕事の情報源にもなるので、音楽番組のチェックは欠かしたことはなかった。
──と、『では、今日の新バンドの紹介は、キラのみなさんです!』テレビから聞こえた音声に、ふと目が吸い寄せられた。
KILLAって、あの時の……と、瞬時に記憶が蘇る。
どんな風にあの不機嫌そうだった彼は歌うんだろうと、好奇な気持ちが湧く。
──画面に映るバンドは、全員が軍服のような衣装を身にまとっていて、赤い髪や青色の髪などの派手さも目立つ中で、ヴォーカルの彼はプラチナシルバーの髪色で、どこかおとなしめにも見えて、他のメンバーとは一線を画しているようにも窺えるようだった。
画面の中の彼を、興味本位で見つめた。
こないだの取材では、サングラスの奥に隠されていて見ることのできなかった、その瞳は、濡れたように黒く、妖艶な輝きを宿していて、見る人を魅了する力を感じた。
「その目力なら、充分な被写体になるのに……。もしもうちょっとインタビューにも答えてくれたら、いい記事が書けたかもしれないのにな……」
取材では手間をかけさせられたけれど、なんだか改めてもったいないようにも感じられた。
取材をした当時は、もう会いたくないとも思っていたけれど、チャンスがあったらまた取材をしてみたい──。
その彼には、画面を通してもそう思わせるだけの魅力が、私にもひしひしと伝わってきていた。
やがてイントロが過ぎ、ヴォーカルが歌い出す声が流れ出した。
声は、伸びがある上にどことなく色気すら感じさせるような風があって、甘く妖しい響きがあった。
「……いいかも」単純に、そう思った。
彼には、初対面では嫌な思いをさせられはしたけれど、バンドとしての実力は高いと感じられた。
事務所が推すのもわかるかも……。
私は、”KILLA“というそのバンドに自然と惹きつけられて、いつの間にかじっと見入っていた──。