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──私の見たあの深夜番組以降、いろいろなメディアでも、KILLAを見かけるようになった。
ヴォーカルのあの彼を含めた美形揃いのそのバンドは、動画などで取り上げられることも増えて、
人気にどうやら火がついてきたらしく、新人だった彼らは徐々にメジャーなバンドになりつつあった。
「叶! おまえ、あのバンドにもう一度リベンジしてみるか?」
そんな折り、高岡編集長からそう話を振られて、
「はい! もちろんです!」
と、私は二つ返事で引き受けた。
二度目の取材は、撮影スタジオを貸し切ってのもので、バンドメンバー全員が揃い、
マネージャーを含め前回とは明らかに違う大勢の人数が集まっていて、彼らが短期間でいかに有名になったかがわかった。
私にも編集長自らが同行し、売れ筋をひた走り始めた彼らと上手く関わりを持って、今後へのつなぎを取り付けていこうともしていた。
写真撮影の合間に、取材をする。
「今日は、よろしくお願いします」
「よろしく~」三者が三様に応える中、
ヴォーカルの彼だけがちょっと遅れて、
「ああ……」
とだけ、低く声を発した。
その対応に、(売れても、相変わらずなんだな……)と、思わずにはいられなかった……。
彼らは撮影もあって、それぞれがキャラ立ての衣装を着て、顔には薄っすらとメイクをほどこしていた。
「初めに、メンバーのご紹介からお願いできますか?」そう促すと、
「じゃあ、俺から!」
と、手を軽く挙げたのは、針のようにツンツンと尖った赤く短い髪に、ダークレッドのロングコートを羽織った男性だった。
「俺は、ギターのシュウ。よろしくお願いします! それからこいつは……、」
シュウが続けて他のメンバーを紹介しようとすると、
「待って。自分でするから」
淡いブルーの長めの髪に、パンツスタイルに巻きスカートを身に着けた男性が、声を上げた。
「僕は、ベースのジン。ビジュアル系を担当してます。よろしくお願いしますね」
言うと、カラフルなマニキュアで飾られた指で、優美に髪を耳にかけてにっこりと笑って見せた。
「じゃあ、次は僕で!」
薄ピンクのふわふわとしたショートヘアに、丈の長いチェック柄のシャツの男性が手を挙げ、
「僕は、ドラムのヒロ。よろしくお願いしまっす!」
そう言うと、軽く微笑いを浮かべた。
「ほら、最後はおまえだって、カイ」
と、ヒロが彼へ視線を向けた。
「俺は、もう紹介済みだろ……」
黒のライダースジャケットの彼が、他のメンバーとは違う明らかに寄せ付けない態度で、顔をふいと横に向けた──。
「すいません。こいつ、愛想なしなんで」
フォローをしてくれるシュウに、苦笑して見せる。
「彼は、いつもこういう感じなんですか?」
以前のこともあり、やはり気になって、思わず尋ねた。
「だいたい、いつもこうですね。おかげで、俺たちの尻ぬぐいが大変…な?」
同意を求めるシュウに、他の2人のメンバーが頷く。
他のメンバーは案外気さくで親しみやすいのに、カイだけが、インタビューが進んでも、一向に慣れ合ってはくれなかった──。