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「いや最初は、女性ならではのセンチメンタリズムと思ってうんざりしたのですが、実際にこうやって拝見させていただくと、なかなか風情のあるものですな。こちらの宗派では昔からこういう事をやっていらっしゃるのですか?」
正源は少し苦笑しながら答えた。
「いえ、実は人形供養というのは、元来は神道の考え方なのですよ」
「はあ? そうなのですか?」
「仏教では、生きとし生けるものには、すべて魂があるとは考えます。人間だけでなく、鳥獣や虫や魚などにも、生き物であれば魂はあると。生き物ではない人形に魂が宿るというのは、本来は神道の考え方ですね」
「それは知りませんでした。神道にそんな教義があるとは」
「教義と言うよりは、伝承でしょうね。付喪神というのをご存知ですか?」
「ツクモガミですか? いえ、存じません」
「ツクモは漢字で九十九と書く場合もあります。長い年月人間に使われた道具が魂を宿すという言い伝えが古来から日本にはありましてね。一般には九十九年経つと魂が宿るなどと言われていました」
男はあっけにとられたような顔で、いったん口元に持っていきかけた麦茶のコップを机に戻した。
「ほほう! 何やら高尚なお話のようですね」
「はは。実はそうでもありません。ほら、お化け屋敷によくあった、提灯のお化けや、唐傘のお化けはご存じでしょう?」
「ああ、それは知ってます」
「あれは、もともとは付喪神なのですよ。九十九年経った提灯や唐傘が魂を宿して、生き物のようになった、という訳です。いつの間にか妖怪の類になってしまいましたがね」
「そうだったんですか?」
「命のない物や道具にも魂が宿るのなら、人間に似せて作られた人形には、なおさら魂が宿りやすいと、昔の人は考えたのでしょうね。ですから壊れた人形をまず神社が供養し始めたわけです」
「それが人形供養の起源ですか?」
「そのようです。それとは別に針供養というのがありますよね」
「聞いた事はありますが、見た事はありませんな」
「最近は少なくなりましたからね。人間の役に立ってくれた道具に感謝の念を示すための、最初は神道の神社の風習でしょう。それを仏教寺院の方でも広く行うようになったのです。もっとも最近は家庭で縫い針を使う事自体少なくなりましたからね。いつまで残っていることか?」
男は感心した様子で、麦茶を飲み干し、お布施の入った封筒を正源に手渡して、場を辞した。
コメント
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第14話読みました!人形供養の話、めっちゃ興味深かったです。付喪神の話とか提灯お化けの由来とか、そういう知識が会話の中に自然に混ざってて「へえ!」ってなりました。正源さんが淡々と説明してるのに、相手の男の人が「ほほう!」ってカルチャーショック受けてる感じが微笑ましかったです。こういうほっこりする知識対話、好きですわ〜。