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20
#sxxn
3e1
1,093
#いるなつ
3e1
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#異世界
放課後の校舎。
昼間の剣幕のまま、なつはすちと一言も口を利けないまま、昇降口まで来てしまった。
外は、あの日と同じような土砂降りの雨。
「……最悪だ。」
傘を持っていなかったなつは、軒下で立ち往生した。
激しい雨音を聞きながら、脳裏にひとつの考えがよぎる。
(……あいつなら、きっと入れてくれるんだろうな。)
すちの性格を考えれば、自分から声をかけなくても、あいつの方から傘を差し出してくれるはずだ。
そんな甘えた、打算的な思考。
けれど、それは一瞬でどす黒い自己嫌悪に塗りつぶされた。
(……どの面下げて、そんなこと思ってんだよ。)
昼間、あれだけ身勝手な怒りをぶつけておいて、雨が降れば頼ろうなんて。自分の卑怯さが、この雨よりもずっと鬱陶しい。
俯いて、強引にその考えを頭から追い出した、その時。
「……ひまちゃん。」
すぐ隣から、落ち着いた、静かな声がした。
「……っ!?」
心臓が跳ね上がる。
てっきりもう先に帰ったと思っていた相手がそこにいて、なつは肩をびくりと震わせた。
あんなに強引に連れ出したのに、すちは怒る風でもなく、ただ困ったような、切ないような顔で自分を見つめている。
「……昼間のこと、怒ってる?ひまちゃんが嫌なことしちゃったなら、俺……」
「……謝んなよ。」
なつは、叩きつけるような雨を見つめたまま、低く絞り出すように言った。
「悪いのは俺だ。……勝手にイラついて、お前に当たって。……まじで、ダサすぎる」
「そんなことないよ。」
すちが一歩、距離を詰める。
すちの指先が、なつの少し濡れた袖口をそっと掴んだ。
「……俺、ひまちゃんが怒ってくれて、実はちょっと嬉しかったんだよ。俺のこと、特別に思ってくれてるって、思ってもいいのかなって」
「……は?」
なつは驚いて顔を上げた。すちの瞳は、真っ直ぐに俺を捉えている。
(……あぁ、もう、無理だ。)
格好つけてる余裕なんて、もう一ミリも残ってない。
喉の奥に溜まっていた熱い塊が、言葉になって溢れ出した。
「……特別に決まってんだろ。……友達のふりして隣にいんの、もう限界なんだよ」
雨音が激しくなる。
けれど、自分の心臓の音の方がずっとうるさい。
なつは、すちの肩を掴んで、そのまま強く引き寄せた。
「好き、すち。……お前が、好き。」
雨音に掻き消されないよう、震える声で言葉を絞り出す。
「……お願い、俺と、付き合って。」
言ってしまった。もう、「親友」の場所には戻れない。
覚悟を決めて目を閉じたなつの耳に、小さく、すちの震える声が届いた。
「……ひまちゃん、やっと言ってくれた。」
気づけば、すちの腕がなつの背中に回されていた。
すちはなつの肩に顔を埋め、泣きそうな声で笑う。
「俺も……。ずっと、ずっと大好きだったよ。」
すちの声は、激しい雨音に消されそうなほど小さかったけれど、俺の耳には誰の言葉よりも強く響いた。
すちの手の、その細い指先が制服の布越しに震えているのが伝わってくる。
今にも泣き出しそうに笑うすちが、愛おしくて、堪らなくなった。
今まで「親友」という境界線に守られて、触れたい気持ちを必死に押し殺してきた自分が、馬鹿みたいに思える。
「……すち」
俺は、自分を抱きしめるすちの肩を一度離し、その頬を両手で包み込んだ。
驚いたように見開かれたすちの瞳が、至近距離で俺を映している。
「……後悔しても、もう離させねーから」
そう低く告げて、なつは目を閉じた。
睫毛が重なって、彼の唇が触れた。
短くて拙いキス。
湿った空気と、伝わってくる柔らかな熱。
雨の匂いに混じって、あの日昇降口で感じた柔軟剤の香りが鼻腔をくすぐる。
「……んっ、」
微かに声を漏らし、彼のシャツをぎゅっと掴んだ。
一度離れようとしたけれど、すちの透明な瞳と視線がぶつかった瞬間、どちらからともなく再び唇を重ねた。
今度は、さっきよりも深く。
雨音さえ聞こえなくなるほど、お互いの鼓動が重なり合って、世界には二人しかいないような錯覚に陥る。
「……ふっ、」
ようやく唇を離すと、すちは顔を真っ赤にして、視線を彷徨わせていた。
なつも、今すぐここに座り込んでしまいたいほど、心臓がバクバク高鳴っていた。
軒下を叩く雨は、まだ止みそうにない。
けれど、もう雨宿りは必要なかった。
「……ひまちゃん、顔、熱い。」
「……お前のせいだわ。」
昇降口から踏み出した二人の影は、もう二度と離れることはなかった。
コメント
2件
やっっっっっと来たーーー!!😭💕✨ 雨の中の昇降口、すちの「やっと言ってくれた」で涙腺崩壊したよ…! なつの自己嫌悪と打算に自己ツッコミ入れるとこから、最後の「離させねーから」まで、全部が尊すぎて叫んだわ😇💥 キスシーン、湿った空気と柔軟剤の香りの描写がエモすぎて何度も読み返した…! この二人がようやく辿り着けて、本当によかったね…!!次の話も楽しみにしてます🔥