テラーノベル
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桜が咲いていた。
まだ少し冷たさの残る春の風に、薄桃色の花びらが舞っている。
新しい制服。
新しい鞄。
新しい靴。
そして――新しい学校。
その校門の前で、一人の少女が立ち止まっていた。
澪華という少女。
今日から高校一年生。
澪華「…………」
校門の向こうを見る。
たくさんの生徒。
楽しそうに話しながら歩く人。
友達と一緒に写真を撮る人。
家族に手を振る人。
その中で、澪華は一人だった。
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澪華の頭には、二つの黒い狐耳がある。
そして制服のスカートの後ろからは、大きな狐の尻尾が覗いていた。
澪華「……よし」
小さく息を吐く。
澪華「今日から高校生……」
自分に言い聞かせるように呟く。
「大丈夫」
「普通にしてればいい」
「変に気にしなければ……」
そこまで言って。
後ろから声が聞こえた。
「ねえ」
澪華「……?」
振り返る。
同じくらいの年齢の女の子が、澪華を見ていた。
「その耳……」
澪華「……」
女の子は目を輝かせる。
「本物?」
澪華「あ……はい」
「触っていい?」
澪華「……え?」
「すごい! 初めて見た!」
澪華「あの……」
女の子の友達も寄ってくる。
「尻尾もある!」
「本当に狐みたい!」
「かわいい!」
「写真撮っていい?」
澪華「……えっと……」
笑わなきゃ。
嫌な顔をしたらダメ。
そう思って、澪華は小さく笑った。
「……写真は、ちょっと……」
「えー、なんで?」
「じゃあ尻尾だけでも!」
澪華「……ごめんなさい」
少しずつ。
人が集まってくる。
周囲からも視線が向く。
「狐耳の子だ」
「すご」
「珍しいな」
澪華「…………」
胸の奥が、少しだけ苦しくなった。
――まただ。
小さい頃から。
ずっと。
自分の耳と尻尾は、珍しがられてきた。
もちろん。
優しい人もいた。
純粋に「可愛い」と言ってくれる人もいた。
でも。
それでも。
人の視線が集まるのは、好きじゃなかった。
澪華「……あの、私……教室に行かないと」
「えー、ちょっとだけ!」
澪華「……」
どうしよう。
断っていいのかな。
嫌だって言ってもいいのかな。
そう考えてるうちに自分の目の前にはとある男の子が近づいていた。
コメント
1件
読み終えました。 桜の季節の新しい始まりなのに、澪華さんの"漂う孤独感"がとても丁寧に描かれていて、胸がきゅっと締めつけられました。特に、「笑わなきゃ」「嫌な顔をしたらダメ」と自分に言い聞かせる場面……あの距離感や息苦しさがひしひしと伝わってきました。突然現れた男の子が、これからどんな風に澪華さんの世界を変えていくのか、すごく気になります。続きをそっと待っていますね。
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琉梨💌💕@ペア画中