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暗い泥沼に沈んでいるような、そんな気がした。
___「大人になったら絶対に迎えに行く」
ここはどこなのだろうか。
目の前にはもう顔も思い出せない白髪の少年と幼い頃の私。
─「それまで待ってて。」
ちいさくて細い小指が絡まり合う。
白い息が宙に浮き、そのまま消える。
─『うん、約束』
“やくそく”。
たったその4文字で繋がれただけの言葉
─「 。」
あれ
彼は_なんて言ったんだっけ。
足首と手首から感じる妙な締め付けと身体に纏わりつく気だるさに眠りを破られる。
『あ、れ…?私…寝てた』
上下のまぶたがゆっくりと離れ、視界が開く。
ずいぶんと長い間眠っていたのだろうか、体全体が心地よく痺れている。
『……ここ、どこ?』
夢の余韻に浸かっていた頭がいきなり霧が晴れた様に明るくなる。
明らかに目的地ではない風景が視界を刺激し、胸に恐怖が詰まる。
視界に広がる不思議で不気味な部屋。一見見れば普通の家の一部屋だが生活感が全く感じられない。
テーブル、イス、ギター、綺麗な色をした熱帯魚がいる水槽。
系統の定まらない空間、テレビすらもない無機質な部屋。この家の主は普段何をして暮らしているのだろうか。
『誰かいないの……いてっ』
ソファから起き上がり一歩踏み出そうと足を上げた瞬間、何かが足首にくっついてバランスが取れずそのまま床へ転がり落ちてしまう。
強打した顎や膝がしびれるように痛い。
本当になんなんだ。
起き上がろうと体を動かし、やっと違和感に気づく。
『え…手………縄?……えぇ……?』
手だけじゃない、足首にも。どうりで転んでしまったわけだ。
いきなり眠らされたとか、起きたら知らないところに居た、とか驚きしかない状況に困惑していたにしても、こんな分かりやすい違和感に気付かなかった自分に呆れすら感じる。
『……どうしよう』
手の自由も足の自由も奪われたままうつ伏せに倒れたせいで、腹がベッドに張り付いたみたいに起き上がれない。
身動きが出来ないなか、なんとか縄を引きちぎろうと手首に力を込めるも食事も満足に採らず、運動もそれほどしない不健康の塊のような腕では引きちぎるどころか動かすことすらも出来なかった。