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「いつまで遠くから傍観してる気だよ。お前もとっとと降りてこいよ」
「何言ってんだよ……」
「はっきりしねぇなら、遠慮なく奪うから」
和葉は真剣な眼差しを歩くんに向けている。歩くんはかなり動揺している様子で、手すりを握りしめ苦い表情をしていた。
「和葉、いきなり何言ってるの!」
「お前があいつのこと頼ってるのは誰が見てもわかんだよ。だから、あっちが煮え
切らないうちに奪う」
「和葉、お前どういうつもりだよ」
歩くんが和葉を睨む。けれど、その瞳は未だに困惑している様子で手すりを握りしめている手も緩まない。
「俺は遠慮しねぇ。……お前はどうなんだよ」
「俺は……」
歩くんと視線が交わる。さっきの女の子との会話が頭に過った。
私はきっと歩くんの恋を邪魔していた。これ以上、邪魔をするようなことしたくない。
「和葉やめて」
言っちゃいけないのかもしれないけど、でも和葉の誤解を解くには言うしかない。息を思いっきり吸込み、声を張り上げた。
「歩くんは他に好きな子がいるんだよ」
ごめんね。歩くんバラしちゃって。けど、きっとこれで和葉の誤解は解けるはず。
「えっ!?」
「……は?」
歩くんと和葉は驚いた面持ちでそれぞれ声を漏らした。
和葉は私の肩に乗せていた手を放し、呆れた表情で私を見下ろす。
「本気でお前は馬鹿だ。武蔵以上の馬鹿決定だ」
「なっ!」
和葉は私の話を信じてないんだ。
きっとちょうど歩くんと女の子の話が終わった時に来たから……。
「あのね、和葉。歩くんは、」
「ストップ」
私の言葉を止めたのは歩くんでも和葉でもなかった。
振り返るといつの間にか貼り付けたような微笑みを浮かべている潤が立っていた。
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