はじまりは…
「どうして、わざわざ歩くために呼ばれたんだろうね?」
「ホントよ!新入社員は、全員参加とか…でも、ココに来れてるから、仕事サボれてるし…」
「そうだよね、しかも、今日日当出るんでしょ?
ちょっとしたバイトよね。早く帰れるし…」
「早く帰りてぇ〜」
「ゆっくり寝てたかったし、帰ったら寝よ」
口々に愚痴が溢れる。
美優たち新入社員は、訳も分からないまま、
メーデーに歩くことを強いられた。
ただ、歩くだけ。
メーデーの意味など知らずに…
朝、指定された集合場所へ行くと、
同期の新入社員と、数名の各部署の代表者が居た。
新入社員同士は、研修から何度も会ってるし、
仲良くしていたから、各部署に配属され、久しぶりの再会に嬉しかった。
「あ、美優ちゃん!」と、仲良しのなっちゃんが手を振る。「なっちゃん久しぶり〜おはよう」
同じ会社でも、全く会わないこともある。
「あ、葵ちゃん、久しぶり〜おはよう」
「美優ちゃん、なっちゃん久しぶり〜おはよう」
「2人とも元気にしてた?」
「うん、仕事覚えるのに必死だった。」
「そうだよね〜」
そんな感じで集合し、ペチャクチャ喋りながら歩いた。
「先頭の人に付いて言ってくださ〜い」
言われるがままに、歩く。
全然、知らない社員さん達もたくさん居た。
洋平の気持ち
「なぁ、今年の新入社員、可愛い子が多いなぁ。」
「おー今日来てラッキーだったかも…」
「なあ、あの子達、可愛いなぁ〜」
「どこ?」
洋平の目線の先には、美優が居た…
一瞬で、胸を撃たれたような感じがした。
ドクン、ドクンと…鼓動が早い
自分の心臓の音って、
こんな音がするんだ、と感じた。
そして、きゅ〜っと胸が痛くなった。
「可愛い〜♡」ポロッと口から溢れ落ちた言葉
「ふふ、珍しいな、洋平がそんなに…」
周りの声なんて聞こえない。
ただただ、美優だけを見つめる。
友達と、にこやかに話しながら、笑ってる
なんて可愛い笑顔♡
「俺ちょっと、話してくる」
「オイ、洋平!」
同期の高橋と、藤沢もつられて付いて来た。
「ね〜キミたち新入社員?」
美優の目を見て、聞かれたものだから、
「あ、はい」と、美優が恐る恐る答えた。
「あ、ごめんね急に、俺達、今年3年目。
高橋と、藤沢と、杉野っていうの、よろしくね。」
と、高橋が説明する。
「あ、鈴木美優です。」
「美優ちゃんっていうんだ。可愛い〜」と高橋。
「村野夏希です。」
「夏希ちゃん」
「山中葵です。」
「|葵《あおい》ちゃん」
「3人共、可愛いね〜」調子の良い高橋が言う。
「ね〜ね〜部署は、どこに決まったの?」
洋平が美優に尋ねる
「電気事業部です。」
「え?マジ?」
「はい。」
「え?俺もだけど…初めてだよね、会うの」
「あ、まだ、西野さんに会議室で教えてもらってるので…」
「あ、そうか!それに俺が現場から帰るのは、いつも定時過ぎてるからか…」
「あ、はい。」
これが、美優との出会いだった。
『ラッキー!こんなに嬉しいことはない、明日から毎日、定時に戻ろう!』
高橋と藤沢もそれぞれに、話している。
カップル?
メーデーなんて怠い…ずっと思っていた。
だけど、この日ばかりは、
『ありがとう!メーデー‼︎』と思った洋平だった。
ただただ歩くだけ!
その間中、ずっと美優ちゃんと話せる♡
なんて幸せなんだ。
一気に、グーンと近づいたような気がした。
終着地点まで歩き、解散となった。
当然、洋平は、すかさず美優をランチに誘った。
高橋も藤沢も…
結局、6人でランチへ行くことに…
もちろん洋平は、美優にピッタリ
美優の真正面に座り、ずっと話してる。
3人でトイレに立った時。
「杉野さん、美優ちゃんにゾッコンだよね」
「そうなのかなぁ?」
「そうだよ、美優ちゃんは?」
「う〜ん、まだ分からないけど、優しい人だとは思う。」
「付き合っちゃえば?」
「えー!」
「なっちゃんと葵ちゃんは?」
「私は、高橋さん、面白いと思った。」
と、なっちゃん
「私は、藤沢さん、素敵だと思った。」
と、葵ちゃん
なんと、それぞれに違う人とペアになっていた。
「3カップル出来たりして〜」
「ふふふ」
「そしたら、すごいよね〜」
告白
席に戻った。
何やら、男性陣もそれぞれに話していたようだ。
「じゃあ、今日はお開きにしようか?」
「そうだな、朝早かったし、お疲れ様」
「お疲れ様でした」
「駅まで送って行くよ、美優ちゃん」
と、積極的な洋平。
「え?」
「どこの路線?」
高橋と藤沢も慌てて、なっちゃん、葵ちゃんに
聞いている
それぞれに送ってもらえるなら…と、少し安心した。
駅まで歩きながら…
「美優ちゃん、彼氏居るの?」
「いえ、居ないです。」
小さくガッツポーズをする洋平。
「じゃあさ、俺と付き合ってくれない?」
「え?」
知り合った初日に告白され、とても驚いた!
しかも、同じ部の上司。
「私、杉野さんのこと、何も知らないですけど…
今年24歳なんですか?」
「うん」
「私、20歳でまだまだ子どもですけど…」
「そうかなぁ?十分、可愛さと色気が備わってると思うけど…」
「え?そんなこと言われたことないです。」
「俺じゃダメ?」
「初日だし、あまりにも驚いてます。」
「あーそりゃあ〜そうだよね。ごめん、何焦ってんだ俺。」
「あ、いえ…でも、良い人なのは話してて、分かりました。」
「え?そう?」
「はい、面白いのも…それに、カッコイイなあ〜って…」
「え?マジ?マジ?」
「あ、はい」
「じゃあ、もう一度!少しずつ、分かっていってくれたらいいから…
俺と付き合ってください!」
「…はい。よろしくお願いします。」
「うっひょう〜‼︎マジ?
ありがとう〜」
『あー抱きしめたい!』
「じゃあ、これからよろしくね。」
「はい」
「連絡先交換しよう!」
「はい」
「じゃあ、着いたら連絡して。気をつけてね。」
「ありがとうございました。」
「お疲れ様〜」
「お疲れ様でした。」
それからというもの、毎日、急いで仕事を終わらせて、事務所に戻って、美優に会うのを楽しみにしてる
洋平。
「ただいま〜」
「お疲れ様でした。」
美優にそう言ってもらいたいから、
急いで事務所に戻る。
何より美優の顔が見たい。
いつも嬉しそうに笑う。
徐々に、美優も洋平の優しさ、真面目さを実感し、
やっぱり、カッコイイ♡
珍しく残業をしていた美優
洋平も一緒に残っていた。
徐々にみんな帰り…
「まだ、残業するの?」
「あ、もうこんな時間、帰らなきゃですね、明日にします。」
「美優ちゃん、飯行かない?」
「あ、はい」
洋平の社用車でご飯に行き、
帰りに家の近くまで送った。
そして、初めてキスをした。
「大好きだよ♡」
「私も…♡」
ラブの始まり♡







