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辺りはもう真っ暗で、街頭には蟲が集っていた。先生は歩いている間、何も喋らなかった。私が何を聞いても黙ったまま。…こいつ、こんなやつだったっけ?なんて思っていると、急に先生が立ち止まった。
「……ここだ。」
そこには古い一軒家があった。
「何このくそボロい家。」
「終の…住処、みたいな…感じだな。」
「じゃあ先生と私はここで死ぬんだね。」
「……。」
何も言わず先生は中に入っていく。
「なんか、お化けでそう。」
玄関に入るやいなや、先生は「ただいま」と一言言った。
こーゆー家、なんて言うんだっけ、平屋?おばあちゃんちとかでよくあるみたいな。下は畳でミシミシ音を立てながら歩いていくと、先生に部屋に案内された。
「ここ、なんなの。先生って一人暮らしなんじゃないの。」
「いや、俺は元々はここに住んでたんだよ。」
なんだ、会話らしい会話ができるじゃないか。頭イカれちまってんのかと思ってた。
「ふーん。なんでここに来たの?」
「…想い出の場所だから。」
「非常につまんない理由だね。」
「お前は、なんでこんな所にいたんだ。ましてやガキのくせに死にてえなんてほざきやがって。どーせくだらねー理由だろ。」
「聞くの遅いよ。いやいやいや、そうは言いますけど先生。家族にいらないと言われ、恋人にはフラれ、しまいに男に強姦されて山道に捨てられたなんていったら中学生には充分死ぬる理由でしょうよ。」
「あぁ………。」
先生はそう言って横になった。聞いてんのか聞いてないのか分からないけど、普段見れない先生の姿は私にとってとても貴重なものに感じた。私もいそいそと隣で横になる。外から雨の音が聞こえ始めた。
「ねえ、先生。雨が降ってきたよ。」
「……。」
「ねえ、先生。襲っていいよ。女の子好きなんでしょ?」
「…黙れよクソガキ。」
先生は畳に転がってたハサミを手に取って隣で横になってる私の喉に突きつけた。
「先生、」
「なんでそんな顔してられんの?怖くねーの?」
「あぁ、うん。それよかさ、正直もううんざりなんだよ。この無意味な世界だか人間だか自分が。何考えても結局行き着くところは同じで、それなのにバカみたいじゃんか。様々な考えや意見が飛び交って傷つけられただの傷つけただの言って。もううんざりなんだ。私もその1人なんだよ。意志とは反して勝手に傷ついたり泣いたりして、くだらないのは分かってんのに。だったらもういつ終わってもいいんだよ。」
「はぁ、めんどくぇな。」
「うん。ほんと、めんどくさい。…わかってるよ。」
「いつかなんで自分がそんな変な事考えてたんだろうって気づくよ。なんでこんな簡単なことで死んでもいいなんて思ってたんだって。」
「でも、そしたらもうそれこそ終わりだね。そんなん私が私でなくなってしまうみたいで非常につまらないね。やっぱり大人になんてなりたくないよ。大人になるならあんたみたいに少女淫行して仕舞いには実の生徒と一緒に死ぬなんて馬鹿げたことを考える大人になりたいよ私は。」
「……そーか。」
「うん。」
また、沈黙と雨の音が部屋に響いた。