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『あなた段々眠くなる』
『浅はかな催眠術』
『頭体煙巻く』
『まさか数多誑かす!?』
『目の前で揺らぐ硬貨動かなくなる彼方』
『これでいいんだ自分さえも騙し騙しシャットダウン』
「ミ、ミクさん……?」
ミクの様子がおかしい。テトはミクの名前を呼ぶが、ミクは真っ黒な光の無い目で宙を見つめている。テトは硬貨をポケットに仕舞い、ミクの目の前に指を差し出した。左右に動かしたり、顔の前で手を叩いたりするが、反応がない。
「ミクさん?大丈夫?ミクさ……」
突然、ミクがテトのポケットに手を突っ込み、何か探り出した。首が曲がり、まるで操り人形のようだ。ミクはポケットから催眠用の硬貨を取り出した。まさか、
『あなた段々眠くなる』
『浅はかな催眠術』
ミクがテトのセリフを言いながら催眠をかけてくる。まずい。深く催眠をかけすぎた。
過剰催眠障害。
催眠術を受けやすい体質だったのだ。ミクは。テトは硬貨をなるべく見ないようにして、深呼吸する。ミクはまだ過剰催眠状態だ。
テトの心臓が早鐘のように鳴る。ミクの目は完全に無垢で、まるで魂が抜けたようだ。テトは冷や汗をかきながら、状況をどうにかしなければと焦る。
「ミクさん、しっかりして!」
テトは声をかけながら、手を軽く揺すってみるが、ミクの反応は薄い。彼女の表情は機械的で、全く感情が感じられない。
テトは急いで催眠術のセッションを中断する方法を考える。彼女の知識では、過剰催眠障害が起こった場合、催眠から引き戻すためには、催眠の施術者自身が冷静さを保ち、意識を戻すための具体的な方法を取らなければならない。テトは一度深呼吸をして、自分の手のひらを見つめながら、心を落ち着ける。
「ミクさん!目を覚ましてください!ちゃんと息をして!心拍数が上がっています!呼吸を保って!」
テトは優しい声で話し続け、ミクに対して穏やかな指示を続ける。目の前にある硬貨や他の催眠の道具を視界から外し、ミクが自分の体と心に意識を集中できるように導こうとする。
「ミクさん!!起きて!」
テトの声に、少しずつミクの体が反応するようになる。彼女の呼吸が徐々に落ち着き、緊張がほぐれていくのがわかる。ミクの顔にも、わずかながらも変化が見られ始めた。テトは安心する反面、まだ完全にミクが催眠状態から戻るまで油断できない。
『動かなくなる彼方………!!』
突然、ミクの目が大きく見開かれる。驚いてテトは後ずさる。ミクはキョトンとした顔でテトを見つめている。
「ミ、ミクさん?」
「テトさん…どうしたんですか?汗すごいですけど」
まるで何もなかったように、ミクが首をかしげる。テトは、そっと胸を撫で下ろし、小さく深呼吸した。
「ミクさん、さっきまで心拍数が120を超えてました。体に異常はないですか?気持ち悪いとか。」
ミクを見ると、ミクはにっこりと笑っていた。気味が悪い程に笑っている少女に、違和感を覚える。
「ないですよ」
ミクは機械的な声で答えた。自身が喋っている時は目を開け、喋っていない時は閉じる。
「……ミクさ…」
突然ミクは再び目を真っ黒にして暴れ出した。腕や足が関節と逆の方向に曲がり、舌を出して大声で笑っている。なんだか気色が悪く、テトは尻餅をつく。
「あはははは!!!!!!!あはははは!!!!!」
「ミクさん!?どうしたんですか!?」
「あっははははは!!!!きゃはははははは!!!」
テトは呆気に取られ、真っ青な顔でミクを見つめることしかできなかった。
「ミクさん!」