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/ᐠ。ꞈ。ᐟ\ノ
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.·⟡零花⟡.·((みさ))
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警告:本作品には自殺や自傷行為に関する描写が含まれています。精神的に不安を感じている方や苦手な方は閲覧をお控えください。
霧の街の遺言
ロンドンの街は、今日も薄い灰色の霧に包まれていた。
かつて「陽の沈まぬ帝国」と呼ばれた男、イギリスは、誰もいない静かな執務室で一人、アンティークのカップに紅茶を注いでいた。湯気が立ち上り、アールグレイの香りが部屋に広がる。しかし、その香りを美しいと感じる心は、もう残っていなかった。
「……静かだね」
枯れた声が、壁に飾られた古い世界地図に吸い込まれていく。
かつては世界を統べ、誰よりも高く、誇り高く立っていた。だが、栄光の時代はとっくに過ぎ去り、残されたのは重すぎる歴史の責任と、摩耗しきった心だけだった。
栄光を築くために積み重ねた数々の「過ち」。他者を傷つけ、支配し、そして奪ってきた記憶が、夜を迎えるたびに首を絞めてくる。かつての弟分や仲間たちは、今や立派に自立し、自分の道を歩んでいる。彼らの眩しい笑顔を見るたび、胸の奥が焼き切れるような罪悪感に苛まれた。
自分はもう、必要とされていない。
いや、最初から存在してはいけなかったのかもしれない。
カチャリ、と紅茶のカップをソーサーに置く手が、かすかに震えていた。
イギリスはデスクの引き出しを開け、一通の手紙と、光を鈍く反射する銀色のナイフを取り出した。手紙の宛名には、いくつかの懐かしい名前が並んでいる。
「みんな、すまないね……」
彼は静かに目を閉じ、深い溜め息をついた。息を吐き出すたび、胸の奥にある冷たい塊が肥大化していくようだった。誇り高き紳士の仮面は、もう重すぎて被り続けることができない。
彼はナイフの柄を強く握り締めると、自らの手首に鋭い刃を当てた。
迷いはなかった。冷たい金属が肌を裂き、温かい赤が溢れ出す。視界が徐々に白く霞んでいく中で、彼はどこか解放されたような、静かな安らぎを感じていた。
「これで……ようやく、眠れる……」
手からナイフがこぼれ落ち、床に乾いた音を立てた。
部屋を満たすアールグレイの香りと、ゆっくりと広がる赤。
大英帝国の長い物語は、ロンドンの静かな霧の中に溶けていくように、ひっそりと幕を下ろした。薄暗い部屋に、扉が激しく開く音が響き渡った。
「イギリス! 返事をしろ、書類の件で――」
部屋に踏み込んだアメリカは、鼻をつく鉄の匂いと、床に広がる鮮烈な赤を目にして息をのんだ。視線の先には、力なくデスクに倒れ伏すイギリスの姿。
「……嘘だろ、おい! イギリス!?」
アメリカは駆け寄り、床に膝をついてイギリスの身体を抱き起こした。普段なら「不躾に落ち込んでくるな」と小言を言うはずの男の身体は、驚くほど軽くて冷たい。手首からは、今も赤い生命が零れ落ちていた。
「おい、しっかりしろ! 目を開けろ! イギリス!!」
アメリカの叫び声に混ざり、廊下から足音が近づいてくる。異変を察知してやってきたフランスが、ドアの隙間から中の光景を目撃した。手に持っていた書類が、パラパラと床に散らばる。
「……嘘でしょ、お兄さん……? 何やってるのさ!!」
普段の軽妙な態度は一瞬で吹き飛び、フランスは青ざめた顔で駆け寄ると、持っていたハンカチをイギリスの手首に強く押し当てた。
「止血を! アメリカ、早く救急を呼びなよ! 何してるのさ!!」
「わかってる! 今……今呼ぶから、くそっ、手が震えて……!」
アメリカは取り乱しながらスマートフォンを操作し、フランスは必死にイギリスの身体を温めるように抱きしめた。
「目を開けてよ、イギリス……! 勝手に終わらせようとしないでよ! まだ……まだ君に言いたいことだって、謝りたいことだって山ほどあるんだから……!」
二人の必死な声と、絶え間なく注がれる体温。
白く霞んでいたイギリスの視界の隅で、ふっと小さな光が揺れた。かすかに動いた彼の唇から、漏れ出るような吐息が零れる。
「……な、ぜ……」
「喋るな! 頼むから静かにしてろ!」
アメリカが涙で歪んだ目で叫び、イギリスの手を強く握りしめる。
ロンドンの冷たい霧の中に閉じ込められていた男の腕を、二つの温かい手が、決して放すまいと強く掴み続けていた。
コメント
1件
読了したよ…!😭💔 重くて切なすぎる…! 「アールグレイの香り」と「赤い生命」の対比がもう…心臓ぎゅってなった。国の重責に押し潰されそうなイギリスの心情がひしひしと伝わってきて、読んでて苦しかった。 でも最後にアメリカとフランスが駆けつけて「まだ言いたいことある」って叫ぶところ、あそこが唯一の光で救いになったよ…!続きが気になる…!泣きながら待ってるからね🌸