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店主「さぁさぁ中に入りな。疲れただろ」
言われるがまま店の中に入る。
店主「今朝飯作るからゆっくりしとき」
涼香「はい」
店主が朝食を作っている間スマホの電源を入れると大量の通知が来ていた。ほとんどが両親からの鬼電やメールだった。
(通知切ってたから全然気付かなかった)
父から送られたメールには母が血眼で私の居場所を探し回っているとのこと。
(おじいちゃん達は大丈夫だろうか。酷い事されたりしてないかな…)
私の居場所を知っているのは祖父母だけ。
いつか口を割ってしまうんじゃないかと不安で仕方がない。
しかし、それから数日が経っても母がここに訪れることは無かった。
そして、祭りの日の昼下がり。
店主「そういやー、今日は神社で夏祭りがあるんだったね〜」
店主はうちわを扇ぎながら話す。
店主「おや?なんだか暗いね〜」
涼香「友達と浴衣を来て行く予定だったんですけど出て行った家に置き忘れちゃって…」
店主「そうかー……っ!!ちょっと待ってな」
店主は奥から大きな箱を持ってきて目の前で開けて見せた。
中に入っていた浴衣は白生地に赤と紺の椿が散りばめられている昭和レトロなデザインだった。
涼香「綺麗…いいんですか?!」
店主「いいんだよ〜もう着ることも無いし、それに孫が大きくなった時に着せようと思ってたんだけど来ないから。さ!着付けと髪してあげるからおいで」
店主の着付けは素人の私から見ても完璧で髪型も上品に仕上げおまけに簪を刺してくれた。
涼香「ありがとうございます!」
そう言うと店主は嬉しそうに笑いながら言った。
店主「孫に着せてるみたいでなんだか嬉しいね〜」
空がオレンジに染まり、カラスが遠くで鳴く声がしてそろそろ出ようと下駄を履いていると店主が呼び止め花の飾りが付いた簪を刺してくれた。
店主「浴衣にはやっぱりコレやろ〜」
涼香「可愛い!」
店主「楽しんできな〜」
涼香「行ってきます!」
歩く度にカランコロンッと下駄の音が鳴る。
祭場に近付くに連れ祭囃子が聞こえワクワクが止まらない。
集合場所にはもう既に皆集まっていた。
拓海「遅いぞー!」
涼香「ごめんごめんってまだ遅刻してないんだけど」
菜月「拓海楽しみ過ぎて早く着いちゃったんだって」
拓海「おう、20分前には居た」
(早…)
涼香「皆も早く着いたんだ」
菜月「浴衣着るの楽しみすぎて眠れなかった〜」
涼香「2人ともめっっちゃ可愛い~~~!!」
菜月「でしょ〜」
菜月はネイビーの生地に白の花柄で普段の明るいイメージとは正反対の落ち着いた色でギャップを感じさせる。
双葉は黄色の生地に縁を金で型どった松模様が所々に描かれており、普段の倍に上品さを感じさせる。
拓海「なぁ〜早く行こうぜ〜俺腹減り過ぎてもう限界」
鳥居から先は別世界のように見え、美味しそうな匂いが風に乗って空気を漂う。
涼香「いい匂い〜!お腹空いたなぁ」
焼きそば、たこ焼き、唐揚げにはし巻きデザートにわたあめ、チョコバナナ、りんご飴食べたい物が沢山ありすぎて悩む。
運営「20時から花火を打ち上げます。是非ご鑑賞ください」
菜月「花火だって!絶対見たい!」
拓海「その前に腹ごしらえだろ!」
花火を楽しみに待ちながら屋台を満喫することにした。
涼香「私焼き鳥行こうかな…」
拓海「俺焼きそば!」
菜月「私も焼きそば食べたい」
双葉「私はわたあめにしようかな」
モリピー「俺も!!」
秀斗「じゃあここは二人ずつで行動しない?」
はぐれたりしないようにと秀斗の提案で二人ペアで屋台を周ることにした。
菜月「じゃ、集合場所は人気の少ないところがいいよね。あそこなんてどお?」
菜月が指さしていう『あそこ』は神社の裏にあり私達が幼い頃、秘密基地として使っていたところ で人気も少なく天体観測するには丁度いい場所だ。
秀斗「あそこなら花火も綺麗に見れるだろうね」
菜月「それじゃ皆好きなの買って秘密基地集合で!」
涼香「はーい」
暫く秀斗と屋台を周り好きなものを買っていた。
涼香「浴衣着てきてくれたんだ。私の言った通り似合ってるじゃん!それに他の2人も着てたね」
秀斗「まあ、あれだけ言われたからね。着て来ないわけにはいけないと思って。それに僕だけ浴衣なんて恥ずかしいから」
涼香「ふふっ…嬉しい」
秀斗「そんなに?」
(いや〜…やっぱイケメンの浴衣姿は流石に通行人の目を惹くよね。皆見てるもん。
それよりお腹空いた…でも集合場所まで我慢しないと!)
ぐぅぅ…
先程買ったわたあめが食べて欲しそうにこちらを見ている気がする。
(~~~~いや、ダメよ!我慢しなきゃ!)
秀斗「美味し?」
涼香「美味しい〜〜」
気付けば私はわたあめを口にしていた。
(欲には勝てなかった…)
わたあめを頬張りながら歩いていると秀斗がボソッと呟く。
秀斗「モリピー達上手くいってるかな」
涼香「だといいけどー …?!
尾行してみない?」
秀斗「尾行?!」