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目を覚ますと、見覚えのある天井があった。

そして理解した。

死ねなかった。

おそらく学園の誰かが助けたのだろう。こんな汚れた女に慈悲をかける人は限られてる。

身体を起こし、心臓に手を当てるときちんと動いていて、自分が生きていることを実感させられた。それと同時に怒りが湧いてきた。

死にたかった。

里が襲われてから十年間。

ずっと。やっと死ねると思ったのに。なのに、

何で生きている

真っ黒な感情が湧いてくる。

「‥‥‥八左ヱ門?」

扉が開いた音と声が聞こえたが、私は布団から出て扉をさわる。

「ちょっ!そんな身体でどこに行くつもりだ?!」

腕を掴まれ顔を向けると、心配そうな、焦ったような雷蔵の顔があった。声からしておそらく三郎だろう。

「‥‥‥‥‥‥。」

「八、左ヱ門?」

私は三郎を地面に打ちつけた。

「っ!」

馬乗りになり胸ぐらを掴む。

「‥‥んで、何で私を助けたんだ!」

私の声が響き渡る。恐らく学園中に聞こえてるだろう。

「あのままにしてくれてたら、家族に会えたのに!やっと‥‥‥会えると思ったのに!」

睨みつけると、三郎はぽかんとした顔をした。が、すぐに私を睨み返し私の胸ぐらを掴み返す。

「ふざけるなよ八左ヱ門。自分が何を言ってるのか分かってるのか?!」

三郎は掴んだ勢いで押し返し、私に馬乗りに乗った。

「あぁ、わかってるさ!別にいいだろう?!私が死んだって誰も悲しまない!家族なら泣いてくれただろうけど、その家族はとうの昔に死んだ!」

私がそう言い放つと、

パァン!

三郎は私の頬を叩いた。。

「私がいるだろう!私が!お前はなんにも分かっていない!ここに居るどれだけの人がお前の事を心配していたか!」

雷蔵達5年生や6年生、下級生が医務室に集まってきた。さっきの私の声で集まってきたのだろう。

けど、そんな事を気にかけてられなかった。

「お前はいつもそうだ!何も話してくれない!いつも一人で解決する!何故一人になろうとする!何故頼ろうとしない!今回のこともそうだ!死にたかった!?誰も悲しまない!?ふざけるな!家族以外にだってお前を愛してくれる人はいるだろう!」

私はそう言った三郎の腕を掴んだ。

「お前に何が分かるんだ!何も知らないくせに!何故一人になるのかって?!だれも信じられないからだ!十年前、里を襲撃されて私は一人になった!一人になった私を誰も助けてはくれなかった!皆私をゴミのようにあつかった!山賊に売られだってした!毎日生きるのに精一杯で、喉が渇いたら泥水を飲み、腹が減ったら毒草だって食べた!誰も!私に手は差し伸べてくれなかった!」

私の頬を涙がつたった。目元を手で隠す。

「‥‥‥‥もう、いいだろ?殺してよ‥‥‥。やっと終わったんだよ。家族にあわせてよ。楽にさせてよ‥‥。」

その場にいる全員が息を呑んだ。

「やっと‥‥名前を呼んでもらえるんだ、」

意識が遠くなっていく。

「八左ヱ門!」

三郎の声が、遠ざかっていく。

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