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ー三郎ー
私にとって、八左ヱ門は光だった。
いつも笑顔で私達を照らしてくれる光。
だから気づかなかった。いや、気づこうとしなかった。あいつの抱えているものに。
炎に包まれた部屋で血塗れで倒れている八左ヱ門を見たとき、恐ろしかった。もう、動かないのではないかと。
だから、意識が戻って起きている八左ヱ門を見たとき、ホッとした。なのに、
「何で助けたんだ!」
「やっと死ねると思ったのに!」
「家族にあわせてよ、」
死を懇願する八左ヱ門。
「‥‥ぶろ‥。」
あんな姿、初めて見た。
「‥‥さ‥ぶろ‥‥!」
私は本当のあいつを知らない。
「‥‥さ‥ぶろ‥‥‥う!」
私は、
「三郎!」
「っ!」
いきなり肩をつかまれ方向を変えられた。
「らいぞ、」
「八の意識が戻ったって。精神も安定してるらしいし、会いに行かない?」
「‥‥‥あぁ。」
元気のない返事に、雷蔵はムッと顔を顰めると三郎の両頬に手を当てた。
「何不安そうな顔してんの?何も知らなかった自分は八には相応しくないとか思ってるんだったらぶっ飛ばすよ?」
「‥そんな事は、」
「あるでしょ?お前はすぐに顔に出るんだから。大丈夫。八の目的はもうはたされたんだから。ちゃんと聞けば教えてくれるよ。」
「‥‥‥そう、だな。」
「じゃぁ、行こっか。」
「あぁ。」
三郎と雷蔵は、八左ヱ門のいる部屋を目指し歩いた。