テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#不気味
もな
161
羽海汐遠
13,066
コメント
1件
うわ、これ……めちゃくちゃ刺さるわ。 「夢を追う限り、僕は僕でいられるので」って台詞、ガツンと来た。最初はバカ扱いしてた語り手が、実は嫉妬してたんだって気づく流れ、解像度高い。炎の比喩も熱いし、自分もその火を繋ぐ側になったっていうオチ、ぐっときた。続き読みたい🔥
バカな奴がいた。
大馬鹿な奴だった。ソイツは人より夢見がちで、よく何かしらを想像をしてはそれを形に残そうと、ぶら下がった骨を必死に追いかける犬っころみたいに阿呆な奴だった。
オレァ昔、そのバカとちょっくら話す機会があった。つっても、ほとんどはそのバカが一方的に話しかけてきただけだったが。
「お前さん、どうしてそんなに理想を追う。どうしてそんなに夢を見る。どうしてそんなに必死にもがいて……」
そこでオレァ言葉を止めた。いいや、止めるしかなかったのさ。
そのバカはオレの話を、オレの目を見つめながら聞いてなァ、火花が散るように目の光が揺れていた。やがてソイツは頬をクイッと上げて歯を見せて笑うのさ。
「夢を追う限り、僕は僕でいられるので!」
オレにはソイツの言葉が全く刺さらなくてな。何言ってんだか、なんて思っていたのさ。何をしてもしなくても、自分は自分だということに代わりはなく、それは優しく酷いものだったから。
このバカも、現実を見ればすぐにやられてしまうだろうさ。なんて、今思えばそれは醜い嫉妬だった。僻みだった。嫌悪だった。
ムカついたのさ、自分より好きに魂を賭けれる奴を見ちまったせいで。ソイツを下に見ようとしなけりゃ、己を保てないと思ったのさ。
でもそのバカは誰に何を言われようと自分の理想を追い求めた。失敗する光景を、幾度となくこの目で見たさ。でも、何度だって阿呆みたいに立ち上がってはコケながら進んでいくのさ。
光があることを信じて疑わない、そんな奴だった。
…………まァ、オレもソイツに感化されたバカの一人ってワケなんだけどな。オレだけじゃあねェ。他の奴らだってそうさ。あのバカの、アイツの、揺れる不安定な、それでも尚進む、けど危うい、蝋燭の火みたいな、…………いいや、違うな。あれは蝋燭なんかじゃない。もっともっと大きな、マッチ……松明……いや、多くの木の寄せ集めで作られた燃え上がる炎だ。そう例えてやろう。
バカは見放される。当然だ。
夢見がちな大馬鹿者は、所詮滑稽な見世物でしかねェこの世の中で、アイツはいい笑い者だった。
嗚呼、悔しいな、悔しいぜ、畜生!
オレもアイツもほかの奴らも、全員好きにまっすぐになりやがって!笑えてくるぜ、畜生!
オレの火が消えれば、アイツの火が消えれば、次は他の誰かがそれを繋いでくれる。残り僅かな火に、静かに息を繋げて燃やしてくれる。消えちまったら、またつけてくれる。
そうやって、この世は巡り巡ってきた。そうだろう?