テラーノベル
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1‐「思い出の一つ。」
7月28日、僕らは夏休みが始まって1週間ほどが経っていた。
今日は樹と凛兎が家に遊びに来るんだっけ。
あー…宿題、進めとかないとな。凛兎に怒られちゃうかもな
今は―8時16分。樹達が来るまでにはまだ1時間くらいあるか?
少し準備しよっかな……
えーっと、ゲームと、あいつらも多分持ってくるけど…お菓子かな。
テレビ台へ物を並べ、お菓子もまとめて箱に置いとこうか。
さ…後は。絵でも描いとこうかな…。
自分で思うことではないが…僕は絵が得意だと思う。
幼稚園の頃からお絵描きが大好きで、新しい自由帳を直ぐに絵で埋めてしまうほどに。まあ、今も変わらず描き続けているのだけれどね。
テーマ…ああ。今は丁度夏じゃんか。
夏は面白い。暑いけれどイベントが山ほどあるし、食べ物も沢山。
例えば…西瓜を食べても、割っても。夏祭りだって食べたり遊んだり、それに花火だって見れる…手持ち花火もあるけど。
虫は…蝉だって兜虫だって…鍬形もいるね。そう考えると…夏に出る虫って寿命が短いのかな。それで言うと蜉蝣何かもかな。寿命は数時間から一日ほどだった筈だ。
夏…寿命が短い…そうだ。
僕には姉が居た。…寿命が短かった、ね。
―――――――
一昨年‐8月12日
湊斗 (9)
蓮香 (14)
旅行先・横断歩道
湊斗「母さーん?信号青になったよ?」
湊斗母「うん。今行くわ。」
あの日はとても暑い日だった。夏休みだからと家族旅行に行こうとなったのだ。父さんは仕事の都合で遅れてくるため、母さんが連絡を取っていたのだ。大きな道路だった為、僕は姉ー蓮香と手を繋いでいろと言われたんだった。
湊斗「姉ちゃん?行こう!」
蓮香「ちゃんと手、上げて渡るんだよー?」
湊斗「はーい。」
僕はそんなに子供ではないと思いながらも、その時は素直に従った物だった。姉は頭が良く、運動神経もあった。交友関係だってあったし…とにかく、非の打ち所がない人だった。…だから、だからこそ惜しかった。
通行人「おい!車来てるぞ!?避けろ!!」
湊斗「…っ!?」
僕は判断が追いつかなかった。
その言葉をようやく理解出来たのは、出来事が過ぎてからだった。
飲酒運転をしていたトラックが僕らを撥ね飛ばしたと分かるまで。
姉は言葉を理解出来ていたのか、僕を軽く突き飛ばした。
蓮香「……っ!!」
湊斗「姉ちゃんっ!? 」
その瞬間、トラックが僕らに突撃した。
蓮香や親、周りの悲鳴。 そして躊躇なく身に振り注ぐ痛み。
蓮香より軽傷とは言えど、撥ね飛ばしたのはトラックだ。かなり痛む。
その痛みはとても強烈だった。感じたことの無いような。
(あー。僕、このまま死ぬのかな。)
ずっとその事が頭に巡っていたんだと思う。
まあ、それを最後に僕らの意識は途絶えた。
目が覚めたのは病院でーそこからはあまり覚えてない。
ただ、「蓮香が死んだ」ということ。「蓮香は自分を庇った」ということだけが。頭に残ってただ煙たくて。気持ちが悪かった。
湊斗母「湊斗…っ!生きてて良かった…っ!」
母さんは僕に号泣して縋り付いた。そりゃあ、自分の愛娘が命を落としたら悲しいだろう。僕だって悲しみに暮れたものだし。
事故の後、僕は数日目を覚まさなかったようで、姉の最期には立ち会えなかった。
損傷は骨折が数カ所と脳の混乱くらいだろうか。蓮香よりはマシだろうか。
ーまあこの辺りで回想は終わろうかな。
とにかく、夏というのは僕にとって掛け替えのない大切な物。
今年は小学校最後の夏休み。事故は…2年前、もうそんなになるのか。
僕は今11歳。今年12歳になる。蓮香は―生きてたなら16歳かな。
…あ、絵だったっけ。
僕にとっての夏はみんなと夏とは違う。
とても悲しいもので…掛け替えが無い、大切な物。
…そうか。皆は持たない、「悲しみ」 それを僕は感じてる。
なら、なら!皆と一味違う絵が描ける…?
悲しみを乗せる…難しい。なら、構図から決めようか。
描くのは2人が帰ってからでいいかな。まず紙に書き出そうか。
僕は傍らの棚から紙を多少乱雑に取り出し、机に置いた。
そしてペン立てから鉛筆を取り、早速紙に書き出した。
……まず、「場所」
夏なら海だろうか……そこから連想されるものは?
…あ、そういえば、蓮香と夕方に海を眺めに行ったっけ。
それならあの日のビーチの様子も…あ、海の家を入れてもいいかな。
あとは…ビーチボールが転がっててもいいかも!
光も逆光がいいかな、あの日の夕陽はとても綺麗だったのを覚えているし、主役にしたい。
…でも、やっぱりあまりいい気はしないな。
思い出の一部とはいえ…故人なわけだし。
蓮香を悪く使ってるような…?
………………でも、でも…
これで何かが変わるんだったら…試してみたい…。
っ…なら!
パラソルとかもあったらいいかな?光の当たり方ももう少し工夫したい!
少し簡易的に人も描くといいかな?でも疎らな方がいいかも?
それで……!それでっ…!!
ピーンポーン[玄関チャイム]
湊斗「…あ、来たか。」
僕は部屋を出て、廊下を小走りで移動した。
そして玄関の扉に手を掛け、鍵を開けた。そうすると直ぐに扉が外から開いた。
樹「よっ!湊斗!お邪魔するぜ!」
凛兎「俺も。お邪魔します。」
湊斗「はいよ、いらっしゃい。」
2人が入ってくると、僕は自分の部屋に案内した。
あまり掃除していなかったが…まあいいか。
扉を開けると、少し散らかっている僕の部屋が広がった。
湊斗「……あ。」
そういえばメモ置いたままだったっけ。
ま、2人は気にしないかな。
樹「なぁ、何で遊ぶ? ゲーム機は持ってきたけど。」
凛兎「…うん。俺もあるぞ。湊斗が構わないならゲームでいいんじゃ?」
湊斗「分かった。ゲームしようか。」
…ところで。何のゲームをするのかは決めてないけど。
まあアクションゲームかな。無難に…
3人プレイも出来たはず…。
湊斗「…ん、これにしない?」
僕はソフトリストの中で、皆が持っていて、皆で楽しめる物をチョイスした。そして……
樹「お、いいな!それにしようぜ!」
凛兎「賛成。やるか。」
―――――――――――――
網野 湊斗
樫原 樹
凩 凛兎
網野 蓮香
現在:7月28日 午前9時2分。
#青春
ヨラ@低浮上
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コメント
3件
うわあ……第1話から重い展開で心臓ギュッてなった。 湊斗くんが夏の絵を描こうとしてるのに、姉ちゃんを事故で失った過去がじわじわ出てきて、タイトルの「思い出」が二重の意味に刺さるよ。 「姉ちゃんに突き飛ばされた」って一文だけで状況が全部伝わってくるのが辛い……。でも、最後に友達とゲームしてる日常に戻るところで、少し息ができた。湊斗の視点で描かれる悲しみと、それでも前に進もうとする感じがとてもリアルだった。続きが気になる!