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ユナ @お嬢様化
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るーぱ
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まーや
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「いやぁ、朝野くん! 昨日のデータ入力、完璧だったよ。新入社員とは思えない手際の良さじゃないか!」
丸菱商事のオフィス。太陽のデスクの横で、上司の宇佐美部長がホクホク顔で太陽の肩を叩いていた。
「あ、ありがとうございます……!」
太陽はネクタイを直しながら、愛想笑いを浮かべた。それもそのはず、超人的な動体視力と指先のタイピング速度を持つ太陽にとって、会社の一般事務などスパイ訓練の初歩(1秒間に数百文字の暗号解読)に比べれば、目をつぶってでもできる作業だった。
部長が去った後、隣のデスクの乃木憂助が、パソコン画面を見たまま口を動かした。腹話術に近い、周囲に声が漏れない別班の技術だ。
「……太陽くん、入ってきました。今日から中途採用で配属された営業二課の男、それからさっきからフロアを周っている新しい清掃員の女。二人の歩き方……重心の置き方が完全に『プロ』です」
太陽もさりげなく書類をめくるフリをしながら、視線だけを動かした。
「間違いありませんね。胸のバッジこそ隠してますが、あの独特のソメイニンの匂いが微かにします。……タンポポの暗殺者です」
脳内の『F』がクスクスと凶暴に笑う。
(おいおい憂助、絶好のチャンスじゃねえか。今すぐここで机ごとあの女をブン投げちまおうぜ)
(ダメだよF、ここは会社だ。他の社員たちに僕たちの正体がバレたら、潜伏生活が終わってしまう)
「……定時まであと1時間。他の社員に気づかれないよう、オフィス内で処理(テイクダウン)しましょう」乃木が静かに作戦を決めた。
最初のチャンスは、定時直前の給湯室で訪れた。
太陽がコーヒーのマグカップを持って給湯室に入ると、そこには先ほどの「新しい清掃員の女」が佇んでいた。
ドアが閉まった瞬間、女の目が不気味な緑色にギラリと光った。
衣服の袖から、鋭い植物のトゲが仕込まれたワイヤーが飛び出し、太陽の首筋へ目にも留まらぬ速さで襲いかかる。
キィィィン!!
太陽は手に持ったコーヒーカップの底(硬質プラスチック)で、正確にそのワイヤーの軌道を弾いた。コーヒーは一滴もこぼれていない。
「会社の備品を壊すと、始末書を書かされるんですよ」
太陽は夜桜の歩法で一瞬にして女の懐に入り込むと、首筋の頸動脈へ優しく指先を当てた。
「夜桜式制圧術――『睡蓮(すいれん)』」
バチッ、と微弱な衝撃波が女の神経を麻痺させる。女は声をあげる暇もなく、白目を剥いてその場に崩れ落ちた。太陽は女の身体を優しく支え、掃除用具入れのロッカーの中へ綺麗に収納し、鍵をかけた。
「よし、一人目……」
一方、フロアの奥にある第3会議室。
「中途採用の男」は、乃木によって「新プロジェクトの機密打ち合わせ」という名目で呼び出されていた。
「乃木さん。二人きりになったところで、大人しくデータを渡してもらおうか」
男はジャケットの内ポケットからサプレッサー付きの拳銃を抜き、乃木に突きつけた。
だが、乃木は動じない。眼鏡の奥の目が、別班の冷徹なものへと切り替わる。
「君たちが使うその銃の重さ、仕様……重心が左に0.5ミリ傾いているね。タンポポが裏社会に流通させているカスタムモデルだ」
「何だと……!?」
男が引き金を引こうとした瞬間、乃木はデスクの上に置かれていた「重たいスチール製のホチキス」を無造作に放り投げた。
そのホチキスは、男の銃の銃口へ完璧にジャストミートし、銃身をひしゃげさせた。
「なっ――」
男が驚愕する間もなく、乃木は瞬時にデスクを飛び越え、男の顎へ鋭い掌打を叩き込んだ。衝撃で脳を揺らされた男は、そのまま床に沈んだ。
ガチャリ、と会議室のドアが開き、太陽が顔を出した。
「乃木先輩、こっちも終わりました」
「お疲れ様、太陽くん。……これでオフィス内の鼠は掃除できたね」
二人の暗殺者を確保し、裏口から待機していた野崎守の公安の車両へと引き渡した。
「相変わらず手際がいいな、お前ら」野崎が感心したように煙草の煙を吐き出す。「だが、この暗殺者どものスマホから、妙なメッセージが見つかったぞ」
野崎が提示した画面には、タンポポの真の首領からの指示書が表示されていた。
『丸菱のネズミを処理せよ。なお、日本の“黒幕”の席は空席となった。次なる候補は……我々の息がかかった【新興宗教団体・百合の会】の教祖とする』
「百合の会……」太陽が呟く。
「ああ。鷹野が消え、タンポポは次のコマ(操り人形)を宗教界から選ぶつもりらしい。この団体の総本山は、長野の山奥にある」
乃木は眼鏡をかけ直し、いつもの冴えないサラリーマンの笑顔に戻った。
「ちょうど来週、長野のエネルギー開発に関する出張案件があります。宇佐美部長に申請を出しておきますね」
「よし、次は長野への極秘出張だ」太陽も不敵に微笑んだ。
日常の皮を被ったスパイたちの戦いは、さらに奇妙で根深い闇の中へと進んでいく。
コメント
1件
めちゃくちゃ面白かったです!オフィスが戦場になるっていう設定、胸熱ですね。給湯室での戦闘シーン、コーヒー一滴もこぼさずにワイヤーを弾く太陽くん…カッコよすぎます。そしてスチールホチキスで銃を無力化する乃木先輩の戦術センスも最高。日常と非日常のギャップがたまりません。次は長野の宗教団体ですか…また新たな伏線も気になります!続きが待ち遠しいです!