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✨Episode 2『隣にいるのに、遠い』
寮生活、初日。
朝の光が差し込む205号室で、アメリカは目を覚ました。
「……うわ、久々にフカフカのベッドで寝た……って、あれ? 日帝ちゃん?」
隣のベッドは既に空っぽだった。
きちんと畳まれた布団。揃えられたスリッパ。机の上には何も置かれていない。
「……なんか、もう“俺の存在”が全部拒否られてる気がする……」
アメリカはぼそりとつぶやきながら、寝癖のついた髪を手ぐしで整える。
そして今日の課題――
**「日帝ちゃんと仲良くなる作戦」**を脳内で始動させた。
食堂に行くと、すでに生徒たちはそれぞれの国のテーブルでグループを作って座っていた。
「うわ、これ……地味に空気こえぇ……」
そこへ現れるのは、例のツンツン猫耳男子。
「おーい、日帝ちゃんっ!」
アメリカが笑顔で声をかけると、日帝は一瞬だけこちらを見て――
「……同室だからって、馴れ馴れしくするな」
ビシッと突き放される。
「えぇ~!?ひどくな〜い? 俺たち、昨日からもう“ルームシェア”してる仲じゃん?」
「声がでかい。迷惑だ」
ツンの壁が今日も分厚い。
午前の授業。
地理学のクラスでは、国同士がペアになって自己紹介をするという最悪な地獄イベントが待っていた。
「アメリカと日帝、ペアで」
「はい喜んで!!」
「……え?」
日帝が思わず振り返るほど、アメリカの声は元気だった。
「じゃあ、俺が先に日帝ちゃんを紹介するね!」
アメリカは勢いよく立ち上がると、にやにや笑いながら堂々と発表を始めた。
「この子は日帝ちゃん!見た目は小さくて可愛いけど、超頭いいし、すごいしっかりしてて、それに――」
「やめろ」
「俺のルームメイトで――」
「やめろと言ってる!」
日帝の声が、教室に響いた。
その一瞬、空気が凍りつく。
アメリカは目を見開いた。
怒ってる顔も、また美しかった。
でも、胸が少し痛かった。
授業が終わると、日帝はすぐに教室を出ていった。
追いかけたい。でも、また拒絶される気がして。
アメリカは、ただその背中を見送った。
隣にいるのに、遠い。
ふたりの間には、国境よりも厚い“心の壁”が、まだあった。
次回――
Episode 3『赤と黒と、彼らの視線』
日帝に近づこうとするアメリカ。
そんなふたりをじっと見つめる赤い眼帯の男と、無表情の会長――
生徒会の影が、ふたりを揺らす。