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✨Episode 3『赤と黒と、彼らの視線』
昼休み。
アメリカは校内の中庭で、パンをかじりながらぼんやりと空を見上げていた。
「……はぁ……怒らせちゃったかなぁ……」
脳内リピート再生される日帝の“やめろ”の一言。
耳に残って、胸に刺さる。
「俺、やりすぎたか……」
と、そのとき。
「――悩みごとか?珍しいな、お前が」
低く落ち着いた声が背後から降ってきた。
振り返ると、そこには黒い眼帯をした長身の男――ソ連が立っていた。
「ソ連!びっくりした、なんでこんなとこに?」
「昼飯を食いに来ただけだ」
彼の右目には、金の鎌と槌が描かれた眼帯。
その下の左目は冷たく、でもどこか優しさを含んでいた。
「……で、悩みってやつは?」
「まぁ、ちょっと……ルームメイトがさ、めっちゃ塩対応で。俺、何も悪いことしてないのにー!」
アメリカが誇張して肩を落とすと、ソ連は小さく笑う。
「……ふん。お前が“何もしてない”は信用できんがな」
「ひどいー!」
だがそのやり取りを、校舎の上階から見下ろしている影がひとつ。
その眼は、血のように赤い。
「アメリカ……そして、日帝」
学園の生徒会室。
会長席に座るその男――ナチスは、窓の外に視線を向けたまま、小さくつぶやく。
「……崩れては困る」
後ろで書類整理をしていた、生徒会書記のイタリア王国が声をかける。
「ナチス、あのふたり……なんかあったのかい?」
「何も。まだ、な」
「ふーん……ナチスが注目するなんて、珍しいなぁ」
「必要があれば、排除するだけだ」
「こわっ」
イタリア王国は軽く笑ったが、ナチスの赤い瞳は冗談ではなかった。
その頃。屋上。
日帝はひとりで風に吹かれていた。
フードを深く被り、猫耳を隠したまま。
「……なんなんだ、あいつは」
アメリカの顔が、脳裏から離れない。
騒がしくて、馴れ馴れしくて――でも、まっすぐで。
「俺が……人と距離を取る理由も、知らないくせに……」
日帝の指が、無意識に自分の猫耳に触れる。
それは、自分の秘密。
ずっと誰にも見せたくなかった。
でも――
「あいつは、見たんだ」
アメリカだけが、偶然あの猫耳を見た。
けれど、なにも言わなかった。
「……なんなんだよ、もう」
風がふたりの距離を吹き抜けていく。
次回――
Episode 4『秘密を暴く音』
アメリカがまた一歩、日帝に近づこうとする。
でもその背後には、生徒会の影が迫っていて――
ふたりの秘密が、音を立てて崩れていく。