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「え〜♡お兄さん彼女いないの〜?♡意外〜♡」
いつものように愛想を振りまく。
珍しく、若い男が相手であるためか
無意識に声が高くなる。
「うん。けど、付き合うならななちゃんみたいな子がいいな。」
“なな”とは、私が仕事で使っている名前だ。
本名は七瀬那央。
苗字と名前の頭文字をとって、ななになった。
「私もお兄さんみたいなひとがいいな〜♡」
「彼氏いるでしょ、ななちゃんは」
「いないよ〜♡」
本当は、2ヶ月付き合っている彼氏がいる。
最近は誘っても「忙しい」の一言で終わる。
「そうなの?じゃあ、狙っちゃおうかな?」
「え〜♡うれしい♡」
「ふふ、ほんとう?」
「もちろん♡」
「じゃあ、今日僕の家にきてほしいな」
「え、〜?それはできないかなあ♡」
客と深い関係を持ってはいけない。
珍しく若い男性であったため浮かれていた。
「なんで?」
「な、なんでって言われても〜…」
何故と問いながら男が距離を縮める。
やばい。そう本能的に察した。
しかも男は個室を選んでいたため
周りに人はいない。
助けは求められない。
「納得できないよ、ななちゃん」
「ご、ごめんね?」
「ごめんね、なんていらないんだよ」
「ぁ、そっか、」
距離を縮められては離れて、を繰り返していたら
ついに隅の方にきてしまった。
もう、これ以上奥にはいけない。
「あ、お兄さん、ちょ、ちょっと離れてもらってもいい、?近すぎて、ちょっと怖いかな〜、って、」
「こわい?僕が?」
部屋を満たす恐ろしい雰囲気。
首を掴まれているようだった。
「ぃ、いや?うそだよ、」
「そうだよね?ね、このまま僕のおうちにきてよ。」
「今日、会ったばっかりだよ?もうちょっと、仲良くなってからがいいなあ?♡」
「僕、もうななちゃんしか考えらんない」
「あはは、それは嬉しいかも♡」
「ね、”七瀬那央”ちゃん」
「ん、え?」
「こうやって僕に追い詰められてる時点で那央ちゃんは負けなんだよ」
隅っこに追いやられ、男は私の後ろの壁に手をついている。
私の視界はお兄さんでいっぱいだった。
「ぃ、いや、てか、名前なんで、」
「もう、僕と一緒に来るしかないんだ」
そう言って男は手を2回叩いた。
叩く音が鳴った途端ドアが開いた。
店長が来たかと思ったが
知らない男が2人いた。
「白、おつかれ〜ん」
「白さん、お疲れ様です」
私と話していた男は”シロ”という名前らしい。
「おつかれ、翠、尋」
入ってきた男はミドリ、ヒロというらしい。
聞き覚えはない。
「さ、那央ちゃん、ちょっと目、隠すね」
「あ、え、なに、?」
布で目を隠され視界が真っ暗になった。
シロが遠ざかっていくのを感じた。
「じゃ、翠と尋おねがいね」
「は〜い」
それから、シロの声はしなくなった。
「那央ちゃんだっけ?ちょっと失礼するよ〜」
「ぇ、」
「暴れられたら面倒だからね」
数分もしないうちに手と足が動かなくなっていた。
外そうともびくともしない。
「翠さんのヒモが解けるわけねえだろ。俺でも無理」
「あはは、どうも」
「尋、運べる?」
「はい、もちろん」
ふわっと浮いた感じがした。
抱き上げられたのだ。
「や、なに、っ?」
「お口にもヒモ巻いた方がいいかなあ?」
「巻いときましょ。お願いします翠さん」
「ちょっとだけ、お口あーけて」
「っ、やめっ」
「はーいじょうず〜」
抵抗を口にしたがため
口が開いてしまいヒモを巻かれた。
「おっけ〜。尋いくよ」
「はい」
喋れない、動かない。
されるがままになるしかなかった。
そのまま車に乗せられ
どこかへ連れて行かれた。