コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「優子、アンタさぁ…」
「最近、香織先輩に執着しすぎなんじゃない?異常だって。」
パラパラとした大きなポニーテールが揺れている。中川夏紀が話しかけてきた。
「はぁ?異常?何言ってんのアンタ。」
いくら仲の良い友達でも、香織先輩関係について口出しされるのはイヤ。 何にも知らないくせに。
「流石に付き纏いすぎっていうか…世話焼きすぎっていうか…なんていうかなぁ…」
なんなの。いいでしょ好きなんだから。
ふつふつと怒りが込み上げてくる。
「何が言いたいの…あ、もしかして嫉妬してんの?」
「ちょっと?わたし真剣なんだけど。」
少しからかってみた。でも思った以上に真剣な眼差しで言い返されちゃった。
夏紀こそおかしいよ、いつもはもっと軽い感じなのに。
「…ソリが高坂って決まってから、ほんとにおかしいよ。」
「…!!おかしいってなによ!香織先輩の味方しちゃいけないワケ!?」
「んなこと言ってないでしょ。ただ、やりすぎはよくないよ。」
全く、わたしが何をやりすぎてるっていうんだか。ただただ香織先輩のこと応援してるだけなんですけど。
「…だっておかしいでしょ。高坂がソロなんて。」
「しょうがないよ。今の北宇治は完全実力主義なんだから。」
「それでも一年が…あんな奴がソロなんておかしい…!!」
「香織先輩は今までずっと頑張ってきて、部の中で一番の奏者だったんだよ?
それなのにいつもいつもいつもいつも、なんの練習もしてない適当な三年生がソロを吹いてた。香織先輩の頑張りなんて無視して。
それが今急に実力主義になって、香織先輩より上手い謎の一年がソロを吹く?
今まで頑張ってきた香織先輩が三年生になった瞬間に?
香織先輩だって充分な実力がある。高坂に負けないくらい素敵な音を出してる!
なのに…なのに選ばれなかった。
そんなのおかしいに決まってるでしょ!香織先輩に不平等でしょ!可哀想でしょ!!」
「…それは…そうかもしれないけど…」
「そうかもしれないなら口出さないでくれる?」
「ちょっと優子!待ちなよ!」
待ってやるもんですか。なんにもわかってないくせに。
夏紀こそ、私に世話焼きすぎなんじゃない?
足取りが重い。夏紀の言葉は何故か、わたしの心に深く刺さっていた。
スタスタスタスタスタ
この足音…もしかして!!
「香織先輩〜!」
「…あっ優子ちゃん…」
「先輩!練習終わりですか?」
「みんなもう帰ったと思ったんだけどなぁ…もしかして優子ちゃんもずっと練習してたの?」
「いえ私は…香織先輩を待ってただけで。」
「…そっか。無理しすぎないようにね。」
「はい!無理なんてしてません!」
なんだか一瞬、香織先輩の顔が曇ったような気がした。
そんなことより、私の心配してくれる香織先輩マジエンジェル♡
「あー…優子ちゃん。ゴメン。忘れ物しちゃったみたい。」
「あっじゃあ私、玄関で待ってます!」
「大丈夫だよ。遅くなりそうだし、先に帰ってて?」
「でも!」
「ほんとに大丈夫なの。ほら、私はお母さんに遅くなること伝えてたけど、優子ちゃんはきっと伝えてないでしょ?」
「…はい。じゃあ帰ります。」
「うん、そうして。」
「お疲れ様でした!香織先輩!」
「おつかれ。」
香織先輩と一緒に帰れないのは残念だった。
せっかく待ち伏せしてたのに。
小さく笑顔で手を振ってくれる先輩に、私も見えなくなるまで手を振りかえした。
ロッカーを見ると、もう私の学年は私以外いないみたい。
「うっ…ムシムシしてる…」
しばらく歩くと、人影が見えた。
あれ…小笠原先輩…?
「部長?」
「あれっ優子ちゃん!?もしかして香織と一緒に練習してたの?」
「いえ…そういうわけじゃないんですけど。
部長こそどうしてここに?」
「あ〜わたしは香織を待ってるところ。 」
「香織先輩、忘れ物取りに行くって言ってました。遅くなるから先に帰ってって言われて…」
「そうだったんだ…」
「ではわたしは失礼しますね。お疲れ様です。」
「うん、おつかれ!」
部長、香織先輩と仲良いのかなぁ…
一応部長だし、色々と三年生同士で話すことあるのかも。
そこは邪魔しちゃいけないと思って、わたしは潔く帰ることにした。
…香織先輩…
あんなに遅くまで練習して…
私がなんとかしてあげなくっちゃ…