コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
これもまた、ある旅人の呟きから始まった。
「しかしまた、儂の知らぬ内に浮世は派手になったものだなあ…」
笠を深く被り、風に背負った錫杖の音が静かに響く。
ビ高い高いビルの屋上に一人、異様な気配を放つ者が居た。
彼こそ、この物語の起点…いわば元凶に近いだろう。そして、名は霊巌(れいがん)と言うらしい。
興味を持てば対象を殺るか自分が満足するまで付き纏う。そんな存在ではある。
しかし彼は壮絶過ぎる過去を持っているのだが、それはまた今度語ることにしておく。
「ふむ…人ならざる者を狩ると言う噂は本当か。儂も興味が出てきたわい…」
「なら、行くしかあるまいよ」
ニィっと彼は笑みを浮かべると、歯からは悪魔の様な牙が見えた。この男は悪魔かと思いきや違うのだ。なんと彼は鬼。しかも平安時代生まれと言う1000年も生きた鬼なのだ。
そのまま男はふわりふわりと夜風に靡かれながらビルの屋上を去っていく。
その興味が世界を揺るがすような大惨事を起こすことを知らずに。
─夜の巻・終─
─次・出逢いの巻─