村に戻ると、ギジリは自分の家へと向かった。
ギジリ「……母さん、ただいま。体調は大丈夫ですか。」
ギジリ母「…あまり優れやしないけどねぇ。ギジリを見たら落ち着いたよ。……ギジリ、その目…蛇神様に選ばれたんだね。」
ギジリ「母さんは蛇神様を知っていたんですか?」
ギジリ母「えぇ、それはそれは。彼も、元は蛇神様に選ばれた者だったからね…ギジリが産まれる前に亡くなってしまったけども…」
ギジリ「………」
確かにギジリは自分の父親の姿を見たことがなかった。
でも、母の話からするに、
父さんも元は蛇神様に選ばれた者だということを悟った。
ギジリ母「私もそう長くはない。彼にそろそろお迎えに来てもらうだろう……ギジリよ、お前さんだけは、彼のようにはならないでおくれ。ギジリは私達の大切な子だからね。」
そう言ってそっと目を閉じ眠ってしまった。
ギジリは母の横に薬と水を置き、
外へ出た。
着いた場所は山神村と蛇神村を繋ぐ橋の近く。
ギジリは山神人の少女に一目惚れし、
毎日のようにそこから少女を探していた。
?「ギジリ。私よ。」
ギジリ「!ミカ!?」
その少女の名前はミカ。
ミカも他の山神人や蛇神人に見つからないように僕に会いに来ることがあった。
ミカ「ギジリ、その目、蛇神様に選ばれたのね。」
ギジリ「あぁそうなんだよ。でも選ばれたからって何をすれば良いのか分からなくてさ…」
ミカ「私は蛇神人じゃないから分からないけど、きっと分かる時が来るわよ。」
ギジリ「…だと、良いな。」
そんな会話をしながらミカの笑顔を見るのが好きだった。
こんな事が永遠に続けば良いのにって、
思っていたくらいだった。
でも永遠なんて無いと、僕は知っていた。
それは夜の眠りにつこうとした時。
蛇神「山神人の少女にはもう会えなくなるだろう。会っていることが明日見つかってしまう。そしたら少年は、どうしたい?」
あの蛇神様の声だとすぐ分かった。
もうミカに会えないと思ったら自然と涙が流れた。
明日、ミカと会うのが最後なら、
その未来を変えることは出来ないだろうか。
村を滅ぼしても良い。
ミカに会うのが明日で最後で無くなるのならば。
眠りから覚め、太陽が昇りかけていた時間。
村の者がまだほとんど起きていない時間帯。
僕は何かに導かれるようにあの橋へ向かった。
そして山神人の村を見た。
それと同時に橋を渡ってくる少女の姿が見えた。
ミカ「ギジリ!」
ギジリ「!ミカ!」
それは明らかにミカだった。
ミカ「ギジリ、私、昨日蛇神様に夢の中で会ったの。それで、もうギジリに会えないって言われて…最後にって思って来てみたの。」
ギジリ「ミカ、僕も同じだよ。蛇神様にミカにはもう会えなくなるって言われてこっちに来てみたんだ。」
ミカ「そっか……ごめんなさいギジリ。もう会えなくなるなんて考えたくなかったけど、これが運命なのね…」
ギジリ「…僕から一つ良いかな。」
ミカ「えぇいいわ。」
ギジリ「僕は自分の村を滅ぼしてでも、ミカにもう一度会うよ。必ず、僕は約束する。」
ミカ「…それはどうにもならなかった時にだけ使ってよね。また、必ず会いましょう。ギジリ。どれだけの時間が経っても、私は忘れたりなんかしないわ。」
ギジリ「僕も一緒だよ。絶対、また会おう。またね、ミカ…!」
ミカ「またね…ギジリ、!」
ミカの本当の笑顔を見たのは、これが最後だった。
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