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第13話「悪夢」
深夜。
拠点は静まり返り、遠くで機械音だけが微かに響いている。
自室のベッドに横になり、目を閉じる。
莉「……」
眠れる気はしなかった。
だが、意識はゆっくりと沈んでいく。
――白い。
どこまでも白い部屋。
天井も、壁も、床も。
鼻を突く消毒液の匂い。
耳鳴りのような機械音。
莉「……」
身体が、動かない。
手首と足首を固定され、冷たい台の上に横たわっている。
視界の端で、白衣の人影が動いた。
「……失敗作ですね」
無機質な声。
「戦闘能力は高いが、精神が不安定すぎる」
「感情制御ができていない。処分対象だ」
淡々と告げられる言葉。
――処分。
その二文字が、胸に突き刺さる。
莉「……ツ」
息が詰まる。
近づいてくる足音。
金属が擦れる音。
注射器。
反射的に身体が強張る。
莉「……や、め……」
声が、上手く出ない。
針が、皮膚に触れた瞬間。
頭の奥が、ぐちゃりと歪む。
視界が揺れ、耳鳴りが強くなる。
「……耐久性は高いですね」
「やはり、戦闘用には最適だ」
「だが、制御できなければ意味がない」
言葉の意味が、理解できなかった。
ただ、怖かった。
苦しくて、痛くて、逃げたかった。
――誰か。
――助けて。
必死に叫ぼうとしても、声にならない。
涙だけが、静かに流れ落ちる。
視界が滲む中、白衣の男が、冷たく告げた。
「――次の実験で、ダメなら廃棄だ」
「殺せ」
「処分だ」
「お前は必要ない」
「時間だ」
「嫌だ… 」
「…まだ生きた、い、?…」
その言葉と同時に。
視界が、暗転する。
莉「……っ!!」
勢いよく、上体を起こした。
荒い呼吸。
全身が、冷たい汗に濡れている。
莉「……はぁ……っ」
心臓が、異常な速さで脈打っていた。
額に手を当て、深く息を吸う。
――夢。
そう、ただの悪夢。
何度も、何度も、見てきた。
ベッドの端に腰を下ろし、床を見つめる。
手が、微かに震えている。
莉「……もう、終わったこと」
誰に言うでもなく、静かに呟く。
私は、あそこから逃げた。
生き延びた。
今は、梵天にいる。
それが、現実。
それでも。
胸の奥に、鈍い痛みが残る。
――忘れられるはずがない。
だが、誰にも話すつもりはなかった。
知られれば、弱みになる。
利用される。
それだけは、避けなければならない。
莉「……」
ゆっくりと立ち上がり、カーテンを開ける。
夜明け前の空。
薄暗い青が、少しずつ広がっていく。
莉「……今日も、仕事」
いつも通りの声色。
いつも通りの表情。
過去を、完全に切り離した仮面を被り直す。
――私は、梵天の幹部。
それ以外の何者でもない。
New▹▸21時頃
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