テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
リクエストありがとうございました‼︎
楽しすぎて一気に書いてしまいました!
長くなりそうなので前半と後半に分けようと思います。
第1での10号スーツの定期検診後。
時刻はもう9時を回っている頃だろうか。
何となく、そう何となく保科を外まで送っていくことになった。
「ボク様の部隊で変なことされたら困るからな」
口ではそう言ったけど、心の中ではもっと一緒にいたいと思っている。
1秒でも長く、
寒さで赤く染まった頬と、風に揺れるサラサラの髪を見ていたい。
冬の冷たい風が間を吹き抜ける。
凍りついた空気が肌に突き刺さり、呼吸が白く浮かび上がる。
いつものような言い合いはなく、今夜はどこか重たい空気が漂っている。
「…月、綺麗ですね。」
突然、保科が呟いた。その言葉に歩みを止める。
予想もしないそのセリフに、思わず目を見開いた。
「は?お前、何言ってるんだ急に?」
そう言って笑い飛ばせたらどんなに楽だろうか。
でも、どうしてもその言葉を軽く受け流せなかった。
夜空に浮かぶ月が、ひどく冷たく見えた。
その輝きは、どこか無機質で、あたかも感情を持たぬ存在のように冷たく、空気に溶け込むことなくただそこに浮かんでいる。
そんな月を綺麗だなんて、なんだか不自然に感じる。
保科はボクの反応に少しだけ顔をしかめて、それでも真剣な顔をしたまま続けた。
「意味、分かってますよね?」 その目は、いつもとは違って、何かを確かめるように真摯に私を見つめていた。
「鳴海さん、好きです。」
その言葉が胸に突き刺さる。 喜びと同時に、何かがぐるぐると渦巻く。
ああ、そうだ、どこかでずっと気づいていたはずだ。自分の気持ちに。それでも蓋をして、気づこうとしないで
「…は?」 その一言が、口から出た。 まるで自分が言葉を選ぶ前に、体が反応してしまったみたいだ。
嬉しい、嬉しいはずなのに。 でも、同時に死と隣り合わせの日常がある。 もし、もしも彼を失ったら
――それが、耐えられない。
「ごめん、」
その言葉を呟いていた。
でも、心の中では何度も叫んでいた。
「嬉しい」って、言いたかった。
でも、どうしてもそれが怖くて、口にできなかった。
保科の目が、ボクを見つめる。
その目には、驚きと少しの痛みが浮かんでいて、思わず目をそらしてしまう。
本当はボクだって保科と一緒にいたいと思っている。一緒に戦ってきたからこそ、あいつがどれほど無茶をするか分かる。10号と戦った時だって亜白が来なければ危ない状況だったと聞いた。
保科の表情が、次第に曇っていくのがわかる。
その顔を見た瞬間、胸が締め付けられた。
でも、どうしてもその気持ちに踏み込む勇気が出なかった。
それが怖かった。
「もしも、もしも失ったら――」
その恐怖に、耐えきれなかった。
「…変なこと言って、すみません。」
「ここまで送っていただきありがとうございました」 保科は言葉を呑み込んだように、少し俯いてから、ひとつため息をついた。 そして、何も言わずに歩き出す。
その背中を、ただ見送るしかできなかった。 心の中で「ごめん」と繰り返すけれど、それでもその「ごめん」が重くて、どうしても言葉にできなかった。
一歩、また一歩と遠ざかっていく背中を見つめながら、ボクはその場に立ち尽くしていた。 あんなに「嬉しい」と思っていたのに、どうしてもそれを口にできなかった。 もし失うことが怖くなければ、どうしてこんなことになってしまったんだろう。
何時だろうか。
夜と朝の境目がまだ定まらず、
世界そのものが迷っているような時間。
部屋の空気は重く、胸の奥では言葉にならない何かがずっとざわめいていた。 あの「ごめん」と言った瞬間から、時が止まってしまったみたいに。
耐え切れず、アウターを掴んだ。
理由はきっと、逃げたかったからだ。
あの瞬間の自分からも、保科の瞳からも、
“本当は嬉しかったのに怖くなった”という事実からも。
歩くたび、靴底が乾いた冬の地面を叩く。
音がやけに響いて、ひとりであることを何度も突きつけてきた。
街灯の端まで来ると、光はそこで途切れ、
その先には薄闇が広がる
12月の風は遠慮というものを知らず、頬をひりつかせる。
耳は痛い、鼻も冷たい。
それでも、胸の奥でざわざわしている熱よりは、ずっとましだった。
やがて辿り着く、小さな浜辺。
冬の海は、夜をまだ手放したくないらしく、 深い藍色を抱えたまま、静かに揺れていた。
浅瀬に近づくと、風が頬だけでなく胸の奥まで吹き抜けていくようで、その冷たさに思わず息が詰まる。
――あの時の、自分の息の詰まり方とよく似ていた。
「好きだ」と言われた瞬間の鼓動。
驚きよりも先に湧いたのは喜びで、
次の瞬間にはどうしようもない恐怖だった。
もし失ったらどうしよう。 もし壊れたらどうしよう。 大切だからこそ、怖かった。
波が寄せる音が、胸の奥のざわめきを代弁するみたいに、規則正しく、止むことなく押し寄せてくる。 それに合わせるように
あの瞬間が何度も脳裏に蘇る。
自分の声。
相手の目。
飲み込まれた言葉。
顔に落ちた影。
そして、沈黙。
浜辺の空は、夜の残滓を抱えたまま少しずつ焼け始めていた。桃色とも金色ともいえない曖昧な光が生まれ、海面に落ちてきらめく。
浅瀬に足を浸すと、冷たさが一気に膝まで昇っていく。でもその痛みは、
告白を断ったあの瞬間に走った胸の痛みにも似ていて、
逃げられないものを静かに思い知らせてくる。
“寂しさは波に似ている”
ふと思った。 押し寄せては、何も言わずにまた離れていく。 まるで、寄り添いたい気持ちのくせに手放すことしかできなかった昨日の自分だ。
朝焼けの光が、砂浜の影を淡く長く伸ばしていく。
沖へ流れる静寂に、心のざわめきが吸い取られていくような気がした。
誰もいない砂浜。 名前を呼ぶ声なんて、ここにはない。 波音だけが、ずっと同じリズムで世界を続けている。
風が草を揺らし、緑の縁をそっと撫でていく。
その優しさが胸に触れた瞬間、
喉の奥がぎゅっと詰まり、視界が滲む。
――どうしてあの時、怖がってしまったんだろう。
――どうしてちゃんと手を伸ばせなかったんだろう。
波は答えない。
けれど、絶えず寄せてくる音だけが、
「まだ終わっていない」と静かに囁いているようだった。
海も空も風も、夜から朝へ変わる境目のすべてが、自分の未完成な気持ちをそのまま映していた。
そして、その曖昧な光の中に、 “会いたい”という言葉だけが、はっきりと浮かんでいた。
どうでしょうか?
上手く書けた自信はないのですが(・・;)
海のシーン書いてる時にインスピレーションになったのが大好きなバンドの曲で、とても綺麗なのでよかったら聞いてみて下さい。
[Alexandros] で「ハナウタ」っていう曲です
https://www.youtube.com/watch?v=xIBXB5M2VV4
続きどう書けばいいかわからない……
なんか考えておきます。
♡&💬 m(_ _)m
コメント
1件
ありがとうございます……自分のリクエストこんなに早く出して下さって感嘆です。 "瞬間"を思い出して、混濁する感情の中を彷徨う鳴海の心が、海や波との比喩表現で表されていて、素晴らしかったです✨ 次回も楽しみに待たせていただきます!