テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
【鈴木side】
「ただいまー」
そう言って、砂鉄に自分の帰りを知らせる。
すると、先程の電話のことだろう、大袈裟に心配する砂鉄が玄関前の僕をすぐさま迎えに来た。
「チョモ!?ごめん電話したのまずかった?フラッシュした?というかなんで何も言わずさっさと出ていくわけ?!まじ心配したわ。なんでもいいからとりあえず絶対連絡して??」
「ンンンちょ、ちょ、早口すぎて何言ってんのかわかんないから。落ち着けって…」
唐突な彼の質問に慌てながらもそう答える。
彼が僕に対するこの態度はまさにオカン。いや、オカン以上かもしれない。どう考えても過保護の度を超えている。
帰ってきて早々、勢いよく駆けつけられ、さらに、何を言っているのか分からないほどの早口で答える暇もなく、次々と質問を被せられるこっちの身にもなってくれ、と言いたいところだが、そもそも砂鉄を心配させるようなことをしたのは自分なので、そこは黙っておく。
「…あのさ、砂鉄。1個ずつ言ってくれる?まじで何言ってんのかが1mmも分からなかったから。一個一個全部聞くし返すから」
そうやって彼を正常な状態に戻す。
どっちが支えられてんだか…。
それに関しては圧倒的に僕が支えられてんだろうけど、今この状況だと、僕が砂鉄を支えてるにすぎない。
砂鉄は、僕の言葉を聞いて、ゆっくり鮮明に話してくれた。
「えっと、とりあえず、まず真っ先に一人で、しかも無断で出かけんのは無し。束縛とかじゃなくて、シンプル心配な」
「うん」
今の言い訳みたいなのいるか?とも思ったが、そこはあえて無視。
彼は続けて言う。
「で、質問なんだけど、俺が電話した時、チョモはフラッシュバックした?俺のせいだったりする?」
自分が責められるとでも思ってるのか、砂鉄は目をあまり合わさず聞いてきた。
別にこっちの問題だから怒らないのになと思い、その質問に対する返事をする。
「いや、確かに、砂鉄がかけてきたからフラッシュバック起こしちゃったけど、砂鉄の“せい”とまでは言わない」
…というか、言えない。
さすがに、 支えてもらっている友人に、 お前のせいでこっちは辛かったんだと言う程落ちこぼれてなんかいない。
砂鉄は、僕の返事を聞くと、そっと胸を撫で下ろした。その際にはしっかり目も会う。
僕をなんだと思ってるんだこいつは。
砂鉄といると、何故か、乾ききっていた口内に少しの潤いが感じられる。
でも、何処か味が足りない。
そんな感じ。
…僕は、何を求めているんだろうか。
幸せ?愛?感情?それとも居場所?
どれだけ自分に問いかけても分からない。
問いかければ問いかける程、穴の空いた物体がどんどん大きくなっていることが分かっていくだけ。
僕は、砂鉄の連続の質問に答えながら、今生きている意味を考え続ける。
が、考えたところで同じ答えが自分に返ってくる。
意味はないんだと。
それでも誰かに…誰かに、認められて求められて、愛されたら、誰かに生きる意味を教えられたとしたら、どんなに幸せなんだろう。
「…チョモ?」
「えっ?あぁ…なんにもない。大丈夫」
僕が、彼の質問に真面目に答えていなかったのかどうかは自分でもはっきりしないが、彼の話をしっかり聞いているという素振りを忘れてたんだろう。
僕が真面目に聞いてないとわかった砂鉄は大丈夫かと聞く代わりに名前を呼んだ。
前までなら、彼は「おい、聞けよ」と軽く言ってきていたんだろうけど。
変わったな。
僕も、砂鉄も。
この世の中さえも。
「…砂鉄」
「ん?」
彼は、何を悟ったのか、真剣に僕の目を見た。
「…フラッシュバックしちゃうのはちょっとアレだけど、電話かけたい時はちゃんとかけていいよ」
その言葉を聞くと、目をまん丸に開き、彼は僕の目を穴が空くくらいじっと見た。
そんなに見られると、こっちがおかしなことを言ったみたいな反応になるが、それほどおかしなことは言ってないはずだ。
彼はそのまま、馬鹿なの?と、まるでありえないと言うように僕を罵る。
その罵りは、僕にとっては昔の彼に戻ったようで安心できた。
「砂鉄程馬鹿じゃないから」
「酷いな」
「あはは。だってホントのことだろ!」
「うるせー」
…そう、ほんの少し。
この瞬間だけ、昔のなんにもなくて、何も知らないままの、幸せな日々が、僕と砂鉄だけに現れた気がした。
それだけで今は幸せだ。
それなのに満たされないこの乾きは、何かが足りないと僕自身に訴えかける。
知らない。そんなの。
僕には分からない。
心の奥底で眠っているものを余計ねじ込むような事をするのはこれで何回目だろう。
僕は、そのまま自分の部屋に入ると、大きなため息が出る。
それほど疲れていたのか、と、自分にかかっていた蓄積に休みを与えるように、ベッドへと頭からダイブした。
コメント
2件
更新大感謝です..✨✨続きも楽しみにしてます〜!♪