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静かなリビング。
薬が効いて眠っていると思っていた僕は、薄目を開けていた。
涼ちゃんと若井の話し声が遠くから聞こえてくる。
「ねぇ、若井。元貴、今は少しでも楽になってるのかな?」
涼ちゃんの声。優しくて、どこか不安げで。
「わからない。でも、眠っている間だけでも苦しみを忘れてくれてたらいいなって思う」
若井の返事。少し力の抜けた声だった。
僕はその言葉に胸が締め付けられた。
二人は僕のことをこんなにも想ってくれている。
「僕、元貴のこと、本当に大事に思ってるんだ。辛い時は、ずっとそばにいてあげたい」
涼ちゃんの笑顔が目に浮かぶ。
「俺も同じ気持ちだよ。元貴には助けられてばかりだ。だから、守りたいんだ」
若井の声が少し震えている。
僕は言葉にならない感情が溢れてきて、こらえきれずに小さく息を漏らした。
「大丈夫、僕はここにいるよ」
けれど、その声は届かない。
二人はまだ僕が起きていることを知らない。
僕はそっと目を閉じて、
「ありがとう」と心の中でつぶやいた。
三人の絆が、まだ壊れていないことを感じていた。
僕が目を閉じてからもしばらく、涼ちゃんと若井の声は続いていた。
「若井、僕たち、もっと何かできるよね?元貴が本当に助かるために。」
涼ちゃんは真剣だった。いつものニコニコが少しだけ影を潜めている。
若井はため息をつきながらも
「そうだな、でも何をしていいかわからないこともある。
元貴が自分から話さない限り、手を出しすぎるのも逆効果かもしれない」
「うん、それはわかるよ。でも放っておくのも辛いんだ」
涼ちゃんの声に切なさが混じった。
僕は小さく息をつき、胸がぎゅっと締め付けられた。
「二人とも、ありがとう。僕は、弱くてダメなやつだけど
そんな僕をこんなに想ってくれているんだ」
でもまだ声に出せなかった。
まだ自分がその優しさに応えられる気がしなかったから。
「元貴がまた薬に頼らなくていいように、僕たちが何か支えになれたらいいよね」
涼ちゃんは明るく言おうとしたけど、その声はどこか震えていた。
若井は「絶対にそうしよう。元貴は一人じゃないからな」と力強く答えた。
僕はそっとその言葉を胸に刻み、また深い眠りへと落ちていった。