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素直にあいたいよ

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素直にあいたいよ

20 - episode 20

♥

195

2024年12月10日

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side sv


るなさんが俺の服を強く握りしめたことで我に返る。


---ヤバい、これ以上は

自衛のためだ、自分の胸へと仕舞い込んだ。



「あ、ぶねぇ…」



思わず本音が漏れる。



「何が危ないんですか…?」



胸の辺りからくぐもった声が聞こえた。

…何が危ないんですかって。るなさんの一挙一動に俺の理性はなし崩しにされてたんだけどなぁ。


崩されて頑張ってまた積み上げて。だいぶ頑張ったのよ。それを何一つ知らずとは。


ははは、と力なく笑ってしまった。



「こっちの話。にしても、るなさんほんとクラッシャーだなぁ」



人の気も知らないで、なんて言うつもりはないけれど。

よくわかっていないるなさんが俺に一生懸命しがみついてくる姿は可愛らしい。


これ以上組み敷いてるのはよくない。(物理的にも精神的にも俺が)


ころん、とふたりとも横になる形で向きを変え


るなさんは俺の胸から離れ、顔の高さを合わせて目を見つめてきた。



濡れた瞳に、また心動かされるところだったけど…



眠たいのかそれとも先ほどの余韻か、下がり気味の目尻がより下がっている。



「髪、邪魔だろ」



見つめ合っていたらまた再開してしまうかもしれない、誤魔化す意味も込めて前にかかる横髪を指ですくって耳にかけてあげた。



「ありがとございます…」



お互い横になって、先ほどまでの熱をベッドへと沈めてゆく。まぁゆるく抱き合ったままなのでまた熱くはなるんだが。


俺のことをぼんやりと見ていたるなさんが口を開いた。お話ししましょ、だそうだ。



「…シヴァさんはお話好きじゃないんですか?」

「好きだよ、でも。聞いてるほうが好きかなぁ」



俺が想いを伝えるために行った大阪の日、会話がぎこちなかったことを思い出した。


同じグループで三年活動していたのに、全くもって接点がなくて、たくさん喋るるなさんに申し訳ないと感じていんだ。



その日よりかは会話はかなり滑らかになった気がする。俺が喋ると言うよりも、るなさんの話を聞くことが好きだった。



「お話ししてると眠くなるのは何ででしょうか…」

「今日は忙しくて疲れたからじゃないの」

「それもありますけど…ここ最近うまく眠れなくて」



最近と言われ、ん?と首を捻った。

電話していた時はいつも明るかったし、そんな様子はなかったからだ。



「だから最近、寝るまで配信聴いたりして」

「で、なおきりさんの配信聴いたりしてたの?」



こくりとるなさんが頷く。

さっき感じた鈍痛を、また胸の奥に感じた。


誰かの声を聞いて落ち着くなら、俺の声を聞けばいいのに。



「…俺に電話してくれたらよかったのに」

「でも、シヴァさんお話中に寝ちゃったら」

「うーん、嫉妬したから」

「え?」

「なおきりさんに」



そんなこと恥ずかしくって言えねえよ、なんて思っていたのに。すらすらと言葉にしてしまって自分自身が驚いている。



「俺の声聞いて寝てほしいなって」

「や、なの?」

「うーん、…メンバーにヤキモチ妬くなんてどうかと思うけど、仕方ないよな。妬いたから」



情けない声で笑うしかなかった。

吐露するほど独占欲に苛まれてるってことなんだろう。



「じゃあるなも嫉妬しました」

「じゃあ…ってどーゆーこと?」



文の脈絡がおかしい。



「シヴァさんがのあさんのお話ばっかりするから。…だし巻きたまごおいしーって、配信でたくさん言ってたから…」



るなさんは頭に置いてあった枕を抱きしめ顔を隠した。


だから、その日からたまご焼きの練習始めたんだもん。って。



「え、えっ…?だってのあさんだよ?」

「でも気になっちゃったんだもん、仲良しだし…るなより近くにいるし…」



やなんだもん。

小さいけれど俺にははっきり聞こえた。


…お互いさまだと言う事実に表現できない感情が湧き起こる。嬉し恥ずかし。いやどっち。



「じゃあもう言わないから。な?ごめん、るなさん」

「…いいんです、変な嫉妬してごめんなさい。のあさんのことは気にしないで。」



本当は嫉妬なんてしたくないの。のあさんのことが大好きだし、たくさんお世話になってるからこんな感情持ちたくないんです。


口ではそう言ってるが眉は下がりっぱなしでもごもごしている。


頭でわかってはいるが、と言うやつなのだろう。こういうのは深掘りするのはよくない。サクッと話題を終わらせるほうがいい。


お互いの反省点も見えたから、”次は気をつけようね”、それで終わりだ。



「そっか、わかった」



もう一度腰に手を回し少しだけ引き寄せた。

るなさんが驚いて、あ、と小さく声を上げる。



「俺も変な嫉妬したから、おあいこ。この話はおしまい。るなさんわかった?」

「…はい」



しばらく女子組の部屋に遊びに行くのは控えようと心に誓った。


るなさんの反応がだんだん鈍くなってきた。

枕を抱きかかえてそのまま目は閉じている。



「し…せ…」

「え、なにが?」

「…」



聞き返してすぐ、すー、と言う寝息が聞こえた。



「寝たの?」



抱きかかえた手を緩め、顔をのぞいてみる。

身体が規則正しく上下に動き出した。


俺とるなさんの間に枕がひとつ、今の俺たちにはちょうどいい距離感だろう。足元にあった毛布をるなさんにかけてあげた。



「っはぁ…」



眠るるなさんに安堵したら、自分にも急激な睡魔が襲ってきた。


今日は色々ありすぎた。

朝から…朝は何してたんだっけ。


思い出そうとすると霞がかかる。頭を使うことにも疲れ切って、そのまま深い眠りへと落ちてった。







「…ぅ」



自分ではない声に気づき、次第に覚醒する。

目の前が晴れると瞬きしてるるなさんと目があった。



「寝れた…?」

「…ん?ぅん。」



俺の顔を見て眉魔を寄せている。あれ、ここ、どこだっけ?きっとそんなこと考えているんだろう。



「しば、さん?」

「はよ」



まどろんでいたが、次第に意識がはっきりしてきたんだろう。大きな目が何度か瞬きして、俺に焦点があうと頬にうっすら赤みがさした。


微笑ましくて見ていると、るなさんは毛布で顔を隠してしまった。



「あんまり見ないでください…」



寝起きって恥ずかしいんデスヨ、だって一番顔ブサイクなんだもん…とかなんとか、消え入りそうな声で教えてくれた。


見ないでと言われても無理な話で、大事な人の気を許し切った姿を見れるのは嬉しい。


昨日から続いてる幸せに今どっぷり浸かってるんだから。



「朝ごはん作らなきゃ…」

「楽しみにしてる」



やっぱり作らなきゃダメなんですか、なんて駄々を言われた。

ワンチャン、作らなくていいよと言う言葉を待っていたんだろう。



「だめだよ、食べたいから」

「えぇー」



昨日と変わらず不満な声が上がるが、これだけは譲りたくない。何がなんでも一番で食べたい。


綺麗とか美味しくないとかそういうことじゃない。


作ってくれる姿とたまご焼きセットで独り占めしたいからだ。



ベッドから起き上がる。カーテンの隙間から光が差し込んでいた。朝だと確かめるために少しだけカーテンを開ける。


朝焼けが見えた。オレンジ色だ。



「るなさん飯食ったらどこいこうか?」

「んー…動物園?」

「マジか」



予想外の提案に笑ってしまった。るなさんの口から動物園なんて初めて聞く。どうやら前に動物園の動画を見て行きたくなったらしい。


るなさんと動物園なんて予期せぬことばかり起こるだろう。おもしろいのは、二人でいるといつもの景色も全く違うものに見える。 それもまた楽しいんだろうな。




「朝ですね」

「ね、眩しい?」

「ううん、大丈夫です」



いつのまにかるなさんが俺の後ろに引っ付いてた。



「ご飯食べてー、したくしてー、動物園行きましょーね…」

「そだね」



不思議だ。

昨日一日過ごして、一緒に寝て、朝起きて、ご飯食べるなんて。


夢のように感じていた事実が、だんだん現実のものだとわかってくる。


るなさんが横にいることがだんだんと当たり前になってきた。




こんな日が


今日だけじゃなくてまた、永続的になればいいな、なんて



そんなこと初めて感じた。



「るなさん」

「?」

「ありがと」

「なにがです?」

「んー、全部?」



るなさんはよくわからないけれど、と前置きしてからまたあの、俺の好きな笑い方で笑ってくれた。



「…シヴァさん、どうし…」



後ろにいる彼女の手をそっと掴むと、前に引き寄せた。驚いたような目で見つめるるなさんに、一呼吸と断りを入れて唇に触れた。






もうあんまり手は出さないつもりだ。

これで終わりにする。


今日は・・・な。






だから今だけは許して。


素直にあいたいよ

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コメント

9

ユーザー

あ、神…😇 お互いの嫉妬とか幸せな朝の始まりとかもう全てが尊い…🫶最高ですわ…👍👍👍

ユーザー

おうちでーと最高でしたーっ✨️✨️ 葛藤する🐸さん本当にみてて面白かったです🎶!✨️ ちゃんと手を出さないように気をつけている🐸さんすごすぎですね…(笑)❄ちゃんとちゅーしちゃってる時点で手をだしかけてるようなものだとは思いますけどねぇ…🎶 尊いいちゃいちゃありがとうございます✨️

ユーザー

え〜…尊い(◜¬◝ )尊死†┏┛墓┗┓† ちょっと叫んできまーす!

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