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20
あまね🍡💠
75
脅迫メールの期限まで、残り二十四時間――。
東洋未来ホールディングス本社。
社長は一人、薄暗い社長室で窓の外を見つめていた。
机の上には家族の写真。
そして社員たちの集合写真。
「家族だけじゃない……。」
「社員も、その家族も守らなければならない。」
拳を握る。
「だが……。」
「もし家族を失ったら……。」
苦しそうに目を閉じる。
社長は一人、答えの出ない選択に苦しんでいた。
───
能力犯罪総合対策本部。
御堂と篠宮は、回収したナイフを分析室へ持ち込んでいた。
研究員が静かに口を開く。
「通常の金属ではありません。」
「成分そのものが変質しています。」
御堂が目を細める。
「人工合金か?」
研究員は首を横へ振った。
「いいえ。」
「このような金属は存在しません。」
篠宮が静かに言う。
「能力……ですか。」
研究員は頷いた。
「物質を特殊な金属へ変化させる能力者がいる可能性があります。」
御堂は腕を組んだ。
「さらに、この精度の武器を製造できる能力者もいるかもしれんな。」
篠宮は息を呑む。
「エデンは……。」
「私たちが想像している以上に大きな組織かもしれません。」
御堂は静かに頷いた。
「幹部だけでは終わらない。」
「まだ戦力を隠している。」
───
その頃。
イコル・ヤーレン博士は、古い喫茶店を訪れていた。
向かいには白髪の老人が座っている。
「久しぶりだな。」
博士が静かに切り出す。
「蓬莱のことを聞きに来た。」
老人はコーヒーカップを置いた。
「まだ彼を追っているのか。」
博士は頷く。
老人は遠くを見つめるように話し始めた。
「蓬莱は能力そのものを憎んでいたわけじゃない。」
「能力によって、人間らしさが失われることを恐れていた。」
「努力すること。」
「支え合うこと。」
「失敗から学ぶこと。」
「能力が全てを解決する世界になれば、人は人でなくなる。」
博士は静かに目を閉じた。
「……あいつらしい。」
───
夕方。
学校帰り。
湊が歩いていると、前から見覚えのある青年が歩いてきた。
「あ。」
青年も湊に気付く。
「この前は財布を拾ってくれて、ありがとうございました。」
「いえ。」
湊は笑顔で答えた。
「困った時はお互い様だから。」
青年は少しだけ笑った。
「そう……ですよね。」
短い会話。
それだけで二人は別々の道を歩き始める。
お互い、まだ名前すら知らない。
───
廃工場。
ブレイブは今日の出来事を思い返していた。
「ヴォイアントさん。」
「本当にこれで世界は変わるんでしょうか。」
静寂が流れる。
やがてヴォイアントが答えた。
『世界を変えるのではない。』
『人々に思い出させるんだ。』
『人間とは何かを。』
ブレイブは静かに頷く。
まだ完全には理解できない。
それでも、その言葉は心に残った。
───
その時。
グラビティが通信を入れる。
「政府に新しい動きはありません。」
『そうか。』
少し間を置き、ヴォイアントが言った。
『グラビティ。』
「はい。」
『一人、調べてほしい人物がいる。』
グラビティは首を傾げた。
「誰ですか。」
ヴォイアントは静かに答えた。
『朝霧湊。』
その名を聞いた瞬間、グラビティの表情が変わる。
「……唯一の無能力者ですか。」
『そうだ。』
グラビティは即座に言った。
「無能力者など放っておけばいいでしょう。」
「我々の計画には無関係です。」
少しの沈黙。
そしてヴォイアントは静かに答えた。
『だからこそだ。』
『能力を持たず、この世界を憎まない人間。』
『そんな人間は、今の能力社会では極めて珍しい。』
『私は、彼に興味がある。』
グラビティは納得できない表情のまま頷いた。
「……了解しました。」
通信が切れる。
ヴォイアントは静かに窓の外を見つめた。
「朝霧湊。」
「君は、この世界をどう見る。」
その問いに答えられる者は、まだ誰もいなかった。
第44話へ続く
コメント
1件
うわぁ第43話、めっちゃ重層的でエモかった…!😭✨ 社長の「家族だけじゃない」って台詞にグッときたし、蓬莱の思想がイコル博士との会話で深掘りされて、能力社会のテーマがより立体的になった感じがする…!! 湊くんと青年のすれ違いざまの会話、何気ないのにすごく沁みた〜「お互い様」って言えるの、無能力者だからこその強さなのかもね…🤔💕 そしてラストのヴォイアントの興味、次の展開が気になりすぎる…!! 鳳蓮荘さんの世界観、毎話どんどん深み増してて大好きです…次回も楽しみにしてます🌸