テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
20
あまね🍡💠
75
脅迫メールの期限まで、残り十二時間――。
東洋未来ホールディングス本社。
社長は能力犯罪総合対策本部、政府関係者と向かい合っていた。
重苦しい空気が会議室を包む。
社長が静かに口を開く。
「……私は記者会見を開きます。」
政府関係者が顔を上げた。
「要求を受け入れるのですか?」
社長は首を横へ振る。
「いいえ。」
「私はエデンには屈しません。」
「ですが、社員やその家族を危険にさらすこともできません。」
写真立てに映る社員たちを見つめる。
「私一人の命ではない。」
「社員にも、守るべき家族があります。」
御堂は静かに頷いた。
「社長。」
「あなたの決断は、我々が必ず守ります。」
社長は深く頭を下げた。
「お願いします。」
───
能力犯罪総合対策本部。
作戦会議室。
大型モニターには記者会見場周辺の地図が映し出されていた。
篠宮が口を開く。
「会見会場までのルートは三つ。」
「通常なら全て封鎖します。」
御堂は腕を組んだまま答えた。
「奴らなら、それも読んでくる。」
篠宮は頷く。
「では護衛車両を増やしますか。」
御堂は静かに首を横へ振った。
「それも読まれている。」
会議室が静まり返る。
御堂は地図を指差した。
「囮を使う。」
「本物とは別に、同じ車両を三台走らせる。」
「エデンが動けば、その瞬間を叩く。」
隊員たちの表情が引き締まる。
「了解!」
───
廃工場。
ヴォイアントは静かに通信を開いた。
『政府は動き出した。』
『第二段階を開始する。』
「了解。」
グラビティが短く返事をする。
その隣ではブレイブが通信機材を操作していた。
「通信、全て正常です。」
ノイズが微笑む。
「上出来。」
ブレイブは少し照れくさそうに笑う。
その瞬間――。
スティールが箱を持ち上げる。
「あれ?」
「いつもより軽い……。」
グラビティも小さく目を細めた。
「身体が軽い。」
ブレイブ本人は気付いていない。
鼓舞の能力が、無意識のうちに周囲へ影響を与えていた。
ヴォイアントは静かにその様子を見つめる。
『成長しているな……ブレイブ。』
───
廃工場の奥。
二つの人影が静かに立っていた。
一人は工具を片手に、無数の武器を見つめている。
もう一人は、黒く鈍く光る金属へ静かに手を添えていた。
ヴォイアントが声をかける。
『フォージ。』
「準備は終わっています。」
『アルケミスト。』
「特殊金属の精製も完了しました。」
二人の姿は逆光に包まれ、その表情は見えない。
───
学校。
昼休み。
教室では先生が真剣な表情で話していた。
「現在、能力犯罪組織エデンによる事件が続いています。」
「放課後の寄り道は禁止。」
「不要不急の外出も控えてください。」
教室がざわつく。
「そこまで危ないのか……。」
「怖いな。」
小春は窓の外を見つめた。
「事件が、こんなに近くなるなんて……。」
湊も静かに外を見る。
「遠い世界の話じゃなくなった。」
「能力社会は、みんな繋がっているんだ。」
───
古い喫茶店。
博士は元ZERO関係者から一枚の古い写真を受け取っていた。
そこには若き日の蓬莱良樹が映っている。
笑顔で荷物を運ぶ姿。
老人が静かに話す。
「蓬莱さんは貿易商だった頃から、人を助けることが好きだった。」
「能力者も無能力者も関係なかった。」
「誰にでも手を差し伸べる男だったよ。」
博士は写真を見つめる。
「人を救いたかった男が……。」
「どうして、ここまで変わってしまった。」
老人は静かに首を横へ振った。
「変わったんじゃない。」
「世界が変わったんだ。」
博士はその言葉を胸に刻んだ。
───
夕方。
テレビ各局で速報が流れる。
『東洋未来ホールディングス社長、本日午後七時より緊急記者会見を行うと発表しました。』
全国がそのニュースに注目する。
廃工場。
ヴォイアントは静かに目を閉じた。
『始まる。』
『第二段階を開始する。』
その言葉と共に、エデンのメンバーたちが静かに動き出した。
第45話へ続く
コメント
1件
第44話、一気に緊張感が高まりましたね。社長が「屈しない」と言いながらも社員と家族を守る決断をした場面、本当に重くて胸が締め付けられました。御堂さんの「必ず守ります」という言葉も力強くて。一方でエデン側のブレイブの無意識の能力成長にヴォイアントが気づくシーンが好きです。博士が蓬莱さんの過去を知る「世界が変わったんだ」という台詞も染みました。続きが気になります!