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「甲乙つけがたいって、欲張りだなぁ」

「陽さんが演じてる時点で、どっちも選べないですって。優男教官の一人称は、普段は聞き慣れないものだから新鮮ですし、『宮本くんのモノで、僕の中をぐちゃぐちゃにしてください』と頼まれたら、それだけで暴走しちゃいます」


宮本が笑いながら告げると、目の前にある橋本の口元が不自然に歪んだ。


「あのときハンドル握りながら、そんな卑猥なことを考えていたのか。どうりで、デレた顔になっていたわけだ」

「卑猥なことばかりじゃないですよ。俺を翻弄させようと、ブラックな一面を垣間見せるところも、きちんと妄想しました」

「ブラック、ねぇ」

「それとですね、俺様教官の振り回す感じも嫌いじゃないですよ。『よそ見してる暇があるなら、俺を感じさせてみろよ』なぁんて言われたりしたら、ビビりの俺は恐るおそる手を出すでしょ。それを見て『なってないぞ、宮本!』とか窘められたら、喜んでがっついちゃいます」


それぞれを演じる橋本を思い出しながら、当時を振り返ると、橋本は難しい表情をありありと浮かべて、宮本の手を握りしめたまま、こつんと額に押し当てた。


「言葉数の多さで、どっちがいいか判定しようかと思ったが、感想を聞いてるうちに、馬鹿らしくなっちまった」


言いながら宮本が握りしめている両手を外し、肩に乗せっぱなしにしている頭も退けるなり、細身の背中を向ける。


「陽さぁん、どっちか選ばなきゃダメっすか?」


口走った内容にドン引きしたせいで、橋本に背中を向けられたと思った。慌てて傍ににじり寄り、肩に顎を置いて橋本の顔色を窺ってみる。


「むぅ?」


宮本の目に映る橋本は、恥ずかしそうに視線を伏せながら、頬を染めるリアクションをしていた。それを目の当たりにして、何度も瞬きする。橋本が照れている理由がわからず、宮本の頭の中が謎に満ちてしまったのである。


「それ以上、顔を近づけるなって」


橋本の大きな手が、宮本の目元を覆った。


「だってくっついていたいのに、陽さんが離れるからでしょ」


目元を覆う手を外そうとした途端に、こめかみの辺りを掴んで外れないようにする。


「あと少しだけ待て」

「照れた陽さんの顔、すっごくかわいいのに。というか、どうして照れてるのかわからないんですけど」


無理やり外そうとしたら、痛いくらいに握りしめるのがわかったので、早々に諦めて疑問に思ったことを訊ねた。


「それは……雅輝がどっちも捨てがたいって言うから」


戸惑った口調が、橋本が思いっきり照れているのを表すように聞こえてきた。目が使えない分だけ耳に残るその声が宮本にとって、とても心地よく聞こえてしまった。


「どんな陽さんも、俺は大好きです」

「そうかよ……」

「はいっ!」


元気よく答えた瞬間、柔らかいものに唇が塞がれた。見えなくてもわかる橋本の唇の感触に、嬉しくて堪らなくなる。


「雅輝には敵わない。いい歳した俺を翻弄するなよ」


唐突に視界が開けた。退けられた手が遠のいていく先にある橋本の顔は、さっきよりも赤く染まっていた。


「俺は翻弄してるつもり、全然ないですよ」

「そういう無自覚なところ、マジでムカつくな。とりあえず復讐してやる」

「復習?」


『ふくしゅう』の意味も、されることもわからず、キョトンとした宮本を橋本はしたり顔で見つめた。


「雅輝、ここに腰かけろ」


言いながら、自分の太ももをバシバシ叩いた。


「……腰かけるって、俺が陽さんに?」


(それっていつもと逆だよな。何だか変な感じかも――)


「躊躇せずに腰かけろ」

「陽さんみたいに軽くないですよ」

「おまえの重さくらい、なんでもねぇって。早くしろ」


強引に腕を引っ張られ、指定されたところに座らされる。


「もっと深く腰かけろ」


宮本が動く前に、橋本の両腕が上半身を抱きしめ、躰に引き寄せるようにずりずりズラしていった。

不器用なふたり この想いをトップスピードにのせて

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