体育祭パロ!!!
王道な借り物競走をお送りします😸
ほぼリハビリ
knsm
『 本が好きな人 』
sm side
残暑の中照りつける太陽。 日陰にいるにも関わらず、汗が滲む。
今日は体育祭。盛り上がった空気に包まれ、俺は彼を見ていた。
直毛の黒髪。前髪から覗く、深いセルリアンブルーの目。左目下の泣き黒子。_俗に言う…彼氏の、knだ。
赤く染められたハチマチを巻いて、屈伸をしている。
「 続いての競技は借り物競走です。準備運動の終わった出場者の皆さんは、トラックに並んでください。 」
knは、これから借り物競走に出るらしい。
knと俺は軍が違うから、応援しようにも出来ない。ついこの前、knは、そのことが残念だと肩を落としていた。
出場者が揃えば、まもなくスタートを知らせるピストル音が響いた。
sm「 すご… 」
knは持ち前の足の速さを活かし、隣の走者をどんどん抜かしていく。
ここからが借り物競走の醍醐味。用意されたお題を持ってくることが出場者の使命だ。
…まあ、難易度は皆均一に設定されていて、さほど難しいお題は用意されていないらしい。係の人から聞いたことがある。
そのはずなのに。
kn「 …えぇ!? 」
knは困惑の表情を見せていた。
俺は次の競技がなんだったか、プログラムを見ていた。すると、周りの女子たちの歓声が沸く。
自然に意識が歓声の矛先へと行く。
…あれ。
sm「 え、knじゃん 」
恋する女子たちは、knを捉えていたみたいだ。
こっちの陣地まで来て何を探しているのだろう…
kn「 smーっ!!きて!! 」
sm「 は… 」
そう、俺の名前が叫ばれる。
女子の甲高い声も、実況をしている人の声も、応援の声も。全てが耳に入らない。拾うのは、knの声だけ。
俺は固まった。
kn「 よし、いくよ! 」
sm「 …ぇあ、お、俺!?なんでっ 」
そう告げられるのと同時に、手を引かれる。
…女子たちの視線が痛いことも、この頬の暑さも、この際knのせいにしてやる。
恥ずかしさと驚きと、困惑と心配の入り混じった感情が、首元に汗を伝らせる。
きっと、これも残暑の暑さのせいだ。
手を引かれながら、走る。
kn「 ちょっ、sm遅いって! もー、!!( 笑 」
sm「 うる、さっ…! 」
kn「 いったぁ!?やったなこの野郎っ〜!? 」
こっちは着いて行くのに必死なんだよ。
でも、こんな風に笑われるのに苛立ちは覚えない。
… 苛立ちはしないけど、knに一方的に馬鹿にされるだけでは、こちらとして面白くない。knの肩を軽く叩く。
これは、敵軍としての、小さな攻撃。
「 紅軍knさん4位です!最後まで走り切りました! 」
knの出場する借り物競走、結果は最下位。
まあ、7割くらいは俺のせいだろう。
kn「 あは、最下位じゃんっ!smのせい! 」
sm「 はあ、はー…っうるさぃ… 」
knは笑いながら、俺の肩を軽く突いた。
sm「 ってか、そうだ…なんで俺なんだよ! 」
knはもうすでに息が整っていた。
こいつの体力は計り知れない、そんな思考をよそに、knを見つめる。
kn「 え?お題言わなかったっけ? 」
sm「 聞いてねーよ、 」
mb「 あ、お題確認しますねー、 」
そんなやりとりをしているうちに、係の人がきた。お題が正しく用意されたか、確認を取るのか。大変だな。
…まさか、変なお題じゃないよな?
『イケメンな人』とか、『頭が良い人』とか、極端なものなら、たまったものじゃないぞ。
_もし、お題が『恋人』だったら…?
いきなり変な考えが浮かんで、ごくりと息を呑んだ。
mb「 knさん、お題は『本が好きな人』で間違いないですか? 」
kn「 はい、あってます… 」
sm「 は、え… 」
kn「 ん?違った?好きでしょ、本 」
sm「 ぇあ…う、うん 」
よかった、おかしなお題じゃなかった。
でも…
sm「( でも…! )」
なんか、俺が勝手に期待していたみたいじゃないか…?
でも、それは、そうだよな…恋人なんていない人は連れて来れないし、そういうのは用意する人側が配慮してくれるんだろう。
俺は何を勝手に、knが『恋人』として俺を連れ出したのかと考えているんだ。
勝手に考えて、勝手に傷つくなんて、馬鹿みたいだろう。
mb「 では、あとはお二人とも陣地に戻ってもらって大丈夫です。 」
その一言で、やっと我に帰る。
よし、喉も乾いたことだし 戻ろうと思ったそのとき。
肩を、軽く突かれる。
kn「 sm。俺はお題が『本が好きな人』だったからsmを選んだわけじゃないからね。 」
sm「 …え、は…?どういう、? 」
kn「 _… ちょっとでも長くsmと居たかったの!全然競技のときに顔見ないから…ちょっと寂しくなって 」
sm「 っ…!? 」
…そう言って、knは軽く微笑み、走っていってしまった。
今のknの言葉が、ひどく頭から離れない。
いまの一言の意味も意図も、何もわからなかった。
ただ一つ、わかるのは。
己の頬の温度の上昇だけ。
陣地に戻り、木陰にしゃがみ込む。
反対側に見えるknは、笑みを浮かべて友人とハイタッチを交わしている。
knの周りには、友人だけでなく女子もいた。
knは、その人たちと笑い合っている。
…あ、女子とハイタッチした。
knは、嫌な顔ひとつしていない。
sm「( なんか、複雑だな… )」
悶々と思考を広げていると、ふとknと目が合った。
kn「 ! 」
kn「 … 」
sm「 は 」
おい、こいつ今 にやって顔した。
不敵な笑み、それは俺に向けられたもののようだ。
「 これにて全競技、及び予定されていたプログラムが終了いたしました。生徒の皆さんは速やかにお帰りください。体育祭の実行委員の方は、後片付けを_ 」
長かった体育祭ももう終わり。俺が活躍する場面なんて一つとして無かったが、行事を通し盛り上がれたという思い出が一つ残った。
問題はあいつだ。knだ。
…隣に影が見える。見なくてもわかった、knだった。
kn「 終わっちゃったね、体育祭 」
sm「 …だな 」
kn「 紅組が優勝すると思わなかったな、特に借り物競走なんかボロ負けで… 」
sm「 それはぁ…流石に俺も悪かった 」
kn「 ふはっ、…あの後、女子からなんか問い詰められてさ。『私も本好きなのになんでsmくんなの!?』みたいな。めんどかった〜、 」
sm「 勝手に言ってもらって結構だ、俺は… 」
kn「 …うん? 」
sm「 俺はknに選んでもらって嬉しかったし、ちょっと話せてよかった 」
kn「 え 」
sm「 …来年は、今度はもっといいお題で俺を選んでくれ…それも、女子に殴られるくらいの 」
kn「 …わかった、借り物競走担当の子に、頼んでみるね 」
長かった体育祭ももう終わり。
少し、『本が好きな人』 でよかったような気がした。
この2人書くのやっぱりたのしいね…
最近寒すぎる!!!
コメント
4件
来年も付き合ってる前提なの好き
わーーーんknsmだいすき…💞😭 たこちゃの語彙力が凄すぎてとても読み入ってしまった…🥰 女子たち!!knさんはsmさんのものだからな…🙃