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「ねぇ酔ってるんだよね?」
「酔ってないよ」
………続く沈黙。
繋がれている手に込められている力の強さ。
一緒に帰りたがるってことは話したいことでもあるのかと思ったんだけど、ハルは何も言ってこない。
様子を伺ってみると、明らかにこちらを見ないように意識しているのがわかる。
…なんか怒ってる?機嫌取っとこうかな
「ねぇ、プリン買って帰ろうよ」
「…何ナナちゃんって」
「…へ?」
急に口を開いたハルと、内容の身に覚えのなさに想像以上にマヌケな声が出た。
「クラスの奴ら、ナナちゃんって呼んでた」
「そう、だった?ちゃんと聞いてなかった」
「あんな呼び方許して3軒目誘われてさ、なんでそんな警戒心ないの?」
さんざん変な態度で振り回して、自分は女の子にベタベタされときながら、なんで私がそんなことで責められるのか。イライラする。
「…そっ、んなこと言われても、向こうが勝手にしたことじゃん!なんで私が怒られなきゃなんないの?意味わかんない!!」
怒り出した私にやっとこっちを見たハルが
「…嫌だった」
絞り出すような声で言った。
「嫌だ、俺以外の男に名前で呼ばれてんのも、誘われてんのも、見られてんのすら嫌だった」
弱々しい声に反して、こちらを見つめる瞳は
真っ直ぐで逸らせない。
「…俺だけのナナでいて」
「な、え?ハルはずっとちゃんと特別だよ?」
「好き」
「え、」
「好きなんだずっと、ほんとに、ナナだけがずっと好き。子どもの頃から」
「っ…またそんなこと言ってからかって!最近変だよ、私の事急に女の子扱いしてきてさ」
想定してなかった言葉に焦って整理されてない言葉が早口で出てくる。
「俺にとってナナはずっと大切な女の子だよ。
今しかないと思ったんだ、ナナが彼氏と別れて。…ほんとに、ほんとに好き。世界でいちばん好き。ナナさえいれば他に何もいらない。どうしたら信じてくれる…?」
必死に、縋り付くように、真っ直ぐにぶつけられる長年知った相手の知らない顔と声。
それはどうしたって嘘や冗談には見えなくて。
もう家は目前。
「とりあえずわかったから、ね、家入ろ?」
繋がれていない手で、ハルの緊張で強ばった頬を撫でる。
「警戒心、こういうとこだよ」
「え、」
瞬間ありえないぐらいの力で玄関に引きづりこまれ、ドアを背に強引なキス。
「…!?ん、んーん、ん!!!!!」
必死にハルの胸元を叩くけどビクともしない。
「んっ……ふ」
あまりにも長いキスにクラクラし始めた頃、
やっと唇が開放される。
「俺の好きはこういう好きだよ、受け入れて」