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コネシマ視点




フラリと倒れたショッピにかけより、彼の体を探る。そこには案の定、あいつからの手紙があった。

『俺寂しいんだ。ショッピくん。』

それだけ書かれた文章を見て思わず背筋が凍った。なんてことないただの文章に見えるだろう。今まで握り締められていたようにシワが出来た紙を穴が開くほど見つめる。これは俺に対する宣言だ。俺はショッピを抱え、急いで保健室へと足を運んだ。絶対にショッピを保健室からだしてはいけない。




俺は焦りでおかしくなりそうだった。ゾムはいつから『アレ』を求めていた?分からない、分からないがなんとしてでも止めなければ。バンッと大きな音をたてた屋上のドア。俺はフェンスに寄りかかるゾムの姿をしっかりと睨んだ。

zm「コネシマ…まさか今日も会えるとは思わなかったわ」

ふふふっ、なんて女の子のような笑い方をする彼にズカズカと歩み寄って彼の手首を片手でひねりあげ、所謂壁ドンのような姿勢をとった。しかし、そんな甘ったるいものではない。俺は止めろ、と目でアイコンタクトをとるも、彼は余裕そうに狐の口のように口角を上げた。

kn「俺からとるのか…?」

zm「…………なにを?」

kn「…大事なものだ。」

zm「あぁ…せやな。確かにシッマ、ショッピくん大好きやもんな。」

上目遣い…にはほど遠いが、下から煽るように目を細めた彼にゴクッと喉が鳴った。

kn「ショッピだけやない。お前もや、ゾムっ…。子供の頃は「死にたくない死にたくないっ」ばっかり言ってたのに…あの頃のお前は偽物か?」

キョトンと驚いたように見開かれるゾムの綺麗な目に一気に心拍があがる。ドキドキドキとうるさい心臓を押し殺し、問い詰めるように手の力を強めた。

zm「嘘やないよ。今も本当はお前と一緒にいたい。死にたくない。でもな、それが叶うならの話や。」

随分とゆったりとした声に俺の中からはスッと何かが消えた。体の芯から一気に凍っていくような気分に思わず身震いが起こる。これだけ必死になっても彼は表情1つ崩さなかった。

kn「なぁ…最後まで生きようや…数秒たりとも無駄に出来ん体やろ…?ここで死んだら勿体ないやん…」

zm「……嫌や」

少し拗ねたような口調で告げるゾム

kn「なんでなん?なんでこんなことするん?」

zm「お前なら知ってるやろ。俺が人一倍寂しがり屋だってこと。子供の頃に描いていた夢はどう足掻いても掴めない事。俺がもうそんな夢から覚めたこと。」

現実味を帯びた淡々とした口調で喋る彼と昔の彼が比べられた。



いつからだろう。俺と対面で話せるようになったのは。

出会った当初、彼はずっと親の影から離れなかった。まだ彼は目が見えなかった時期。瞳は見えずとも容姿端麗であり、優しい性格である彼に惹かれ、何度も友達になりたいと話しかけたのだ。

最初は俺が話しかけただけであわあわと慌て、テンパり、すぐに顔を真っ赤にしていた彼は、中々しぶとく、全然話してはくれなかったが俺がしつこく話しかけるうちに少しずつ心を開いてくれるようになったんだ。しかし、彼が話してくれる事によって彼の事情を知った俺は絶望した。話途中、ゾム自身も耐えられなくなったようで声を殺して泣くゾムを見てはどうしても救えない気持ちになった。

その日から俺はゾムを守る事を心に誓った。ゾムの事をいじめようとする奴がいたら自らを盾にしても守ったし、彼が失くし物をしたときは昼夜必死になって探し回った。彼が「死にたくない」って泣いた日は泣き疲れて眠るまで彼に寄り添って励ました。そんな日々が続くと、ゾムはいつから俺の事を『親友以上の存在であり、家族のような大切な人』と言ってくれるようになった。その時は思わずゾムを抱き締めてしまうくらい嬉しかったんだ。

初めて彼の目が見えるようになったときはその瞳の美しさに何度も目を疑った。しかしそれと同時にカウントダウンが始まった事に酷く恐怖した。その時からはいつも以上に傍にいることが増えていった。一秒すらも無駄に出来ない気がしたから。

zm「んふふっ、コネシマは意外とイケメンだったんやなぁ♪」

kn「…w不細工だと思ってたんか?」

zm「いーやー?声からもなんとなくイケメンやろなーとは思ってたで!」

そう言って俺の頰をツンッと突くゾム

zm「でも、目が見えてからもっとコネシマがかっこよく見えるわ」

kn「…恥ずいわ……」

むむむ…と複雑な顔で頬を赤くする俺をゾムはケラケラと笑いながら見つめた。

zm「やっぱお前おもろいわw友達になって大正解やな俺w」

kn「せやぞー、俺も友達になれて嬉しいわー」

わしゃわしゃといつものように彼の頭を撫でた。彼も心地よさそうに目を細める。



あぁ、こんな時間がいつまでも続かないかな。なんて考えてしまう自分が憎い。




zm「…俺な、ショッピくんを見たとき単純に『綺麗』って思ったんよ。なんていうんかな、コネシマみたいにイケメン…的な意味ちゃうくて、ショッピくんが俺に向ける目は、なんとなく特別な気がしたん。本当になんとなくやけど。」

そう言って町を見下ろしたゾムはそっとこちらに向き直る

zm「あいつは俺の目に尋常じゃない興味を持ってくれてるんや。ほんまにそれだけ。『目』だけに興味があったんや。」

kn「…」

zm「ショッピくんの目はとっても美しい。俺、そんなショッピくんが少し羨ましかったんやろーな。あ、別に彼に嫉妬したから殺そうって訳じゃないで。寂しがり屋の俺は、病室で独り死んでいくっていうのが許せなかった。かと言って、お前に言ったらこんな風に全力で止めるやろ」

kn「ッ…当たり前だ。」

zm「なぁ、何がしたい?最後の1秒、お前は藻掻き苦しむ俺の喉にトドメでも刺すのか?」

kn「ち、ちがっ…俺は…ただ…」

zm「なぁ、俺速く楽になりたい。苦しむのはゴメンなんや。ねぇ、ねぇ、ねぇ?今まで散々泣いた。嘆いた。かと言って未来が変わるわけでもなかった。どうしよう。どうしよう。なぁどうすればこの呪いは終わるん?なぁ?…助けてや」

段々と俺を責めていくように声量を上げていく。いつの間にか振りほどかれた手は俺の肩を掴み引き寄せていた。

混乱。彼は先程までの冷静を装った仮面を外し、焦りを、憎しみを、恐怖を、全て俺にぶつけていた。その目は恐ろしいほど美しい。

kn「ぅ………ぁ…」

zm「……………ありがと。こんな俺を最後まで愛してくれて。…………そしてゴメン。俺コネシマの期待に応えられない。」

kn「やめろゾム!!!!お前からそんなこと聞きたくない!!!!…贅沢な事は何一つ言わない!!!!だから…だからッ、」

その時、校舎の奥の方から大きな物音がした。聞けば何やらショッピの名前が呼ばれている。マズい。バカでも分かる。ショッピをここに来させちゃ駄目だ。止めなくては。

チラリとゾムを見た。随分落ち着き払っており、先程の大声は何所から出したのだろうと思うくらい上品な雰囲気を漂わせていた。

ここでゾムを待たせるのも危険だ。だが、ゾムを連れ戻そうと必死になってる際、ショッピが来たらどうなる?きっと、俺の事なんか眼中にいれずにゾムへ駆け出すであろう事は容易に想像できた

止めに行こう。

その一心で俺は屋上出入りのドアに手をかけた


syp「……」

悲鳴をあげる女子、ざわめく男子、必死に俺を取り押さえる教師たち。その全ての存在が邪魔だった。「落ち着け」なんて声が教師たちから飛び交うも、そんなの耳に入れちゃいない。

普段、真面目に静かに生きてきた俺が大声をあげて教師に抵抗しているのだ。正気じゃない。そんな目をしてこちらを見る野次馬がとにかく邪魔だった。

「何があったんだ。話してみなさい」

そう言って宥めようとする教師を睨み付け、押さえつけられた腕を振りほどこうと必死に暴れた。

野次馬の中にはチーノもいた。声1つあげずに、暴れ、牙を剥く俺を、静かに凝視していた。信じられない物を見るような目。無性に腹が立つ。その時、野次馬の中から一際背の高い男が出てきた。見知った顔した金髪。そいつは俺の目前まで来たと思えば、とても悲しそうな顔をした。口を開こうとしたのだろうか、しかし、俺はその前に一瞬緩んだ拘束を振りほどき、一目散に屋上へ駆け出した。後ろから聞こえるざわめきを無視し、光へ向かい、手を伸ばした。きっとこの先に素敵な物があるはずだから

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