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9話❀.*・゚
病室の静けさが、なんだか胸に圧し掛かる。
白西はじっと窓の外を見ている。夕暮れの柔らかな光が、彼女の顔を照らしているけど、その表情はどこか遠くを見つめているようだった。
「何を考えてるんだ?」
口を開いたのは俺だった。でも、いつもとは違って、声が震えてるのがわかる。怖い、だってこれから言おうとしていることが、俺の全てを晒すような気がしてたから。
白西が少しだけ顔を俺に向けた。でもその目には、いつもの無邪気さや元気さが無かった。ただ、どこか寂しそうで、少しだけ苦しんでいるように見えた。
「考え事?」
白西は少し考えるように黙っていた。自分の気持ちを探っているみたいに。何か言いたいのに、どうしても言えないのか、無理して笑ってみせる。それが俺にはとても痛かった。
「うん…でも、今は…」
その言葉に、俺はもう耐えられなかった。
「白西、俺はお前が好きだ」
咄嗟に口にした。
たったの2文字
胸が激しく脈打って、息が詰まりそうだった。
でも、言わずにはいられなかった。
白西の目が見開かれて、口を開けたけど、何も言わない。その瞬間、俺はあの一言で全てを壊してしまった気がした。自分が抱えてきた感情を吐き出したことで、もう戻れない場所に来てしまったような、そんな気がした。
「颯馬…」
彼女が俺の名前を呼ぶ。その声が、なぜか耳に痛かった。まるで、どう返事をすればいいのかわからない、でも何かを伝えたいという思いが込められているようだった。
でも、俺はもう止まらなかった。
「お前に伝えたかった。どんなに辛くても、俺はお前のことが好きだ。お前がどんな状況でも、お前を守りたいと思ってる。でも、今…お前がどう思ってるのか、それが怖くて」
俺の心の中で、言葉がどんどん溢れていく。言いたいことはまだたくさんあったけど、白西が何か言おうとしているのが見えて、つい黙り込んだ。
白西は口を開けて、また少しだけため息をついた。目を閉じると、彼女の目尻に涙がたまっているのが見えた。その涙が、俺の心に重くのしかかる。
「ごめん、颯馬…私…」
その言葉が、彼女の口から出るまで、すごく長く感じた。俺は、彼女が何かを言おうとしているのを感じて、心の中で息を呑んだ。だけど、どうしても恐れていた答えが待っているんじゃないかと、心の中で予感がした。
「私は、もう…こんな風に、誰かに愛されて…幸せになれるのか、わからない」
その言葉を聞いた瞬間、胸が締め付けられた。白西が自分の気持ちに答えを出せないのは、やっぱり俺のせいなんだ。俺が告白してしまったことで、彼女が余計に辛くなっていることを感じた。
「でも、俺はお前が幸せになれるように、精一杯支えたいと思ってる。ただ、それだけだよ」
俺の言葉が、白西の心に届くのか、それともまた遠くに消えてしまうのか。それすらもわからなかった。けど、今はただ、白西に気持ちを伝えたかった。それが、少しでも彼女にとって力になればいいと思った。
「でも、私は…もう…」
白西はもう一度顔を背けて、声を出すのをやめた。俺はただ、静かに彼女を見つめるしかできなかった。彼女がどうしても答えを出せないのは、白西自身がもう限られた時間の中で、何かを決める勇気を持てないからだろうと思った。
「俺が、そばにいるから」
その言葉を、もう一度だけ白西に向けて言った。それでも、答えは返ってこなかった。
けれど、あの日からずっと思っていたことを、ようやく言葉にできたことが少しだけ救いになった。
白西は、ゆっくりと顔を上げて、俺に微笑みかけてくれた。その微笑みの中に、何か希望を見た気がした。
「ありがとう…頑張ってみる」
その言葉が、俺には全ての答えのように感じた。
いつもの病室、変わらない景色
隣には白西がいる。
そこに白西が消えたら?
俺はどうすればいい?
もし…もし、白西より俺が早くに死んだら辛くなるのは逆だ。
そんな思いさせたくないし、したくない。
ああ、だめだ。
きっと、多分、絶対。
白西が死んだら、俺は生きれないよ
でも白西は言ってた
『前を向いて』…と。
それは簡単な事じゃない。
簡単な事じゃないんだよ。
かけがえのない人がいなくなるって。受け入れられない。
でも俺は受け入れなきゃいけないのかな…
俺は毎日が不安で仕方がない。