燃える城。
真っ赤に染まる城壁。
八左ヱ門はゆっくりと歩きながら、転がる城主の首を足で踏み潰した。
あっけなかった。
八左ヱ門が奇襲をかけたこの城は、一刻たったかたってないかの間に落ちた。
こんなに弱い城に、あいつらは殺された。
俺のせいで。
「俺が、あのとき捕まらなければ、死ななかったんだな。」
包帯が剥がれ、痛々しい火傷の跡を感覚のない左手で触る。
自分で仲間の死は自分のせいだと証明してしまった。
俺のせいで。
あいつらは、
「八左ヱ門!」
この場で聞こえるはずのない声が聞こえる。
幻聴だろう。
三郎の声が聞こえるはずないのに、
「八!」
「はっちゃん!」
「左の字!」
雷蔵、兵助、勘右衛門の声までも聞こえてくる。
ふと、顔を上げると、
「……何で、」
学園にいるはずの四人が立っていた。
ー雑渡の話が終わったあとー
「はっちゃんは毒霧城に行ったんだよね?」
「そうみたい。早くいかないと!」
「行ってどうするんだい?」
駆け出そうとしている私達に雑渡が声を上げた。
「どうするって、」
「辛かったなと同乗して彼を慰めるのかい?それとも、何でこんなことしたのだと怒るかい?」
勘右衛門の声にかぶせていった雑渡はゆっくり立ち上がった。
「恐らく城は君たちがつく頃にはおちているだろう。彼のことだから、あれくらいの城一刻もあれば余裕だろう。もしかしたら君達は間に合わないかもしれない。目的を達成した彼は元いた世界へと帰ってしまうかもしれない。僕のように。」
そう言った雑渡は右手を私達の前に見せた。
「っ!」
驚き言葉を失う。
雑渡の右手が薄くなっているのだ。
「僕の目的は彼の手助けをすること。目的を達成することができたから未来へと帰るんだよ。」
そう話してる間にも、雑渡の体は消えていく。
右手から順に、右腕、右足、腰。
だんだんと消えるスピードも上がってきているように見える。
「それでも行くのかい?」
「…行きます!」
雷蔵が拳を握りながら言う。
「僕達は、はっちゃんの友であり仲間だから。 はっちゃんを一人にはさせません!」
兵助の言葉に、雑渡は優しくほほえんだ。
「…そんな君たちだから、彼は耐えられなかったのかもしれない。彼があんなふうになってしまった原因は君達だ。でも、彼を助けれるのも君達のようだ。彼を、頼んだよ。」
その言葉とともに、雑渡は消えていった。
「……行こう。」
勘右衛門の声が静かに響く。
「あぁ、急ごう。」
私達は毒霧城へ向って地を蹴った。
コメント
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左の字で笑ってしまいましたw